
アメリカの最高裁判所は、中国ByteDanceが所有する人気ショート動画SNS「TikTok」に安全保障上の問題があるとして定められた法律を1月19日に施行した。これによりTikTokやByteDanceが提供する一連のアプリがアメリカでサービスを停止したのだ。
ただ、この停止は1月20日に新しい大統領となるドナルド・トランプ氏が、TikTokを条件付きながら存続させる考えを示したため、十数時間後に復旧した。現時点でトランプ氏は具体的な対応を打ち出しておらず、今後の動向は流動的だ。
TikTok以外にも同様の体験を提供するショート動画アプリはいくつもある。多くの企業が過去数年間、自社製品内でTikTokのクローンを構築しており、いくつかの新興企業も、このアプリの優位性に挑戦しようとしている。
TikTokのルーツは2016年に中国でリリースされたDouyin(抖音)というショート動画アプリだ。Douyinは、2017年にダンスバトル機能を追加したところ、これが若年層に受けて人気が拡大した。さらにアメリカで人気を得ていたリップシンク(いわゆる口パク)動画アプリ「musica.ly」を買収し2018年に統合。Douyinとmusica.ly両アプリの良いところを取り込んで誕生したのがTikTokということになる。
TikTokは中国外での展開にあたり、各国の音楽著作権管理団体と提携・協力関係を構築し、著作権管理された楽曲をユーザーが自由に動画に使用できるようにしている。
TikTokに投稿できる動画は、当初は15秒までという短さだった。その後は段階的に延長され、現在は最長10分までの動画が投稿可能だ。これほどの長さになると、ブログの動画版である「Vlog」など幅広いコンテンツを投稿できる。いまや、TikTokは総合的な情報発信プラットフォームとして活用されるようになりつつある。
なお、TikTokは質の高いコンテンツを生み出し続け、多くのフォロワーによって再生回数を稼ぎ出せる投稿者には、収益化プログラムとして「Creator Rewards Program」を用意している。
TikTokが強みとするのは、10~20代の若年者層だ。この層は物心ついたときからインターネットやスマートフォンといったテクノロジーに慣れ親しみ、新しいトレンドの発信源になっている。Facebookなど旧来のSNSの中心的なユーザー層が次第に高齢化していく一方で、TikTokは若い世代から人気を集めている。
とはいえ、突出した人気を獲得するサービスが現れれば、すぐに類似のサービスが現れて競争が始まるのがインターネットというもの。現在は先行するInstagramやYouTubeなどもTikTokに似た機能をサービスに取り入れており、新興のサービスも続々と登場している。