
生きている過程においてはしばしば、“予想もしていなかった出来事”が起こったり、“偶然の出会い”が訪れたりするものだ。
そして、それらが人生に大きな影響を与えることも少なくない。
しかし、そうした偶然をチャンスとして活かせる人がいる一方、活かせない人がいることもまた事実。
だから活かせない人は、活かせる人のことを特別視して「あの人は運がいいからね」と羨むのかもしれない。
だが『運のいい人が幸運をつかむ前にやっていること: セレンディピティの科学』の著者によれば、偶然のチャンスは決して特別な人だけに与えられたものではないようだ。
それどころか、誰の身にも同じように降りかかる性質を持っているというのである。
すなわち、それが「セレンディピティ」。偶然降りかかるそのことに「気づき」、その気づきを別のなにかと「結びつけ」、結果として思いもよらなかった新たな価値を生み出す力だ。
セレンディピティが“私たちの身に降りかかる単なる偶然”ではなく、実は“点と点を見つけ、つないでいくプロセス”だと理解すると、他の人には断絶しか見えないところに橋が見えてくると著者は表現している。
いわば、それこそが“活かせる人”と“活かせない人”との差につながっていくということなのだろう。
本書は、そんなセレンディピティが生まれるメカニズムを解明する科学的研究と、世界各地でセレンディピティを起こした多様な人々の事例をもとにして書かれている。
そして、読者の人生に幸運なサプライズが頻繁に起こり、そこからよりよい結果が得られるように、理論的な枠組みとトレーニング法が紹介されてもいる。
つまりセレンディピティ・マインドセットは、圧倒的な成功と幸福を手にした人々が、有意義に生きるための支えとしてきた人生の哲学だということである。
そしてそれは、私たち一人ひとりが身につけることのできる“実践的な能力”でもあるのだ。
では、幸運とセレンディピティは、なにがどう違うのだろうか?