フリーランスは取引先との交渉で不利な立場に置かれやすい。内閣官房の実態調査によると、推計462万人(副業248万人)いるとされるフリーランスの約4割が、取引先とのトラブルを経験していた。
そんななか2024年11月1日に施行されたのが、フリーランスを保護し、働きやすい環境を整える「フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」だ。
新法は会社員にとっても他人事ではない。人生100年時代、退職後にセカンドキャリアが用意されている保証はなく、残りの人生をフリーランスとして働き続けるという「予備軍」は決して少なくないからだ。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会平田麻莉代表理事に、フリーランス法の重要ポイントやトラブルを防ぐための自己防衛術、適正な取引価格の考え方などを聞いた。
11月12日、大手出版社「KADOKAWA」と子会社「KADOKAWA LifeDesign」が、下請法違反(買いたたき)で公正取引委員会から再発防止の勧告を受けた。
雑誌『レタスクラブ』の事業において、販売収入や広告収入が減少するなか、資材費や輸送費が上昇しているとし、利益改善を図るために、原稿の執筆や写真撮影などを委託した事業者に対して、発注単価を一方的に約6.3%ないし約39.4%引き下げていた。
下請法で下請事業者が守られるのは、発注事業者の資本金が1000万円を超える場合のみ。そのため、「発注事業者は資本金を1000万円以下に抑えておけば、下請法を守らなくても許されるという法律の抜け穴があった」(平田氏)という。
一般的にフリーランスは「予算の調整弁として報酬を減額させられる、顧客の気分次第で仕事のやり直しを繰り返しさせられるなど、ハラスメントを含めてさまざまな問題が生じても、泣き寝入りをせざるを得ない状況に置かれていた」と平田氏は指摘する。
2020年より厚生労働省から委託を受けた第二東京弁護士会が運営している「フリーランス・トラブル110番」にも、「報酬の支払い」(28.1%)や「契約条件の明示」(16.9%)などの相談が多く寄せられていた。
こうした実態を踏まえ、個人が事業者として受託した事業について、取引の適正化と就業環境を整備するためにフリーランス法はできた。
下請法との主な違いとして、まず、新法には資本金の制限がない。
また、下請法でも書面交付は義務付けられていたものの、実態として取引条件を「口約束」で済ませることが多く、トラブルの要因となっていた。そこで、フリーランス法では書面のほか、メールやチャットでも取引条件の明示が可能になり、発注事業者には書面による取引条件の明示が義務となった。
所轄官庁は、公正取引委員会と厚生労働省の2つにまたがっていることも特徴だ。前者を取引適正化パート、後者を就労環境整備パートと呼ぶ。
下請法に準じたのが取引適正化パートで、公正取引委員会の所轄だ。対して、育児・介護との両立配慮義務やハラスメント防止処置、中途解除の事前予告などの就業環境整備パートは、厚生労働省の所轄になる。