こう思っている人もいるのではないでしょうか。
「自分をほめるのが大切と言われても、どうしても『やっぱり、私なんて』と落ち込んでしまうんだよなあ」
たしかに、どんよりした心で過ごすのはつらいですね。でもここで大切なことをお伝えしたいと思います。
心理学の見地からいえば、気分の落ち込み自体は決して悪くはないのです。
もちろん、そんな感情はできれば味わいたくないもの。しかし、それがきっかけとなって「次はがんばろう」と奮起したり、「やり方をちょっと変えてみよう」と改善を試みたりする。
つまり、次の行動につながっていくのであれば、むしろ落ち込みは歓迎してもいい。私は、そう考えています。
言い換えれば、どんなに気落ちしていても行動し続けられるのなら、さほど問題はないのです。
では、問題なのはどんなときでしょうか。それは、気分が落ちた結果、その人が動けなくなる場合。
というのも、自分を責めたり過小評価したりすると、自信や行動意欲が奪われ、次の一歩が踏み出せなくなるケースがあるのです。すると、停滞した状況から抜け出すのが困難になります。
なぜ行動が大事なのかといえば、行動だけが、その人の世界や環境を変えるからです。自分の生きる世界を変えるのは、みずからの行動だけ。どんなに変わりたいと思っていても、本人の行動が同じであれば、そこから生まれる結果も同じです。
言葉がもつ力によってその人の行動が変わり、新しい世界が形づくられます。行動の結果が失敗に終わったとしても、構いません。そこから改善していけばいつか成功にたどり着けます。
カウンセリングの現場でも、「○○があって、落ち込みました」「ネガティブな気分が抜けなくて」といった患者さんの言葉を、私たち医師やカウンセラーはあまり重要視していません。
もちろん、ネガティブな感情に対するフォローはします。しかし、私たちが常に気にしているのは、状況の改善に向けて、その方が適切に行動できているかどうかです。
ですから、患者さんが落ち込みながらも、現状を変えようと一歩でも進もうとしていれば、健全なプロセスを進んでいると判断します。
そこで、「もう謙遜するのをやめよう。自分をほめるんだ!」と決意したあなたが、その思いを行動に移せる方法をお話ししていきます。
まず、自分をほめられるようになる考え方やコツを把握。そのあと、具体的な実践法を学び、継続するしくみづくりをしていきます。
しくみづくりというとなにやら大げさですね。でも、体からアプローチしたり、身近な生活習慣を整えたりしていくだけなので簡単です。
しくみさえつくれば、気分のアップダウンに影響されません。たとえ自分にがっかりしたり、へこんだりしたとしても自動的に行動できます。
では、ほめられる自分になるためのヒントをお話ししていきましょう。真っ先に手放してほしいものがあります。それは、今あなたがもっている心の「ものさし」です。
あなたは、自分の行動や起こる出来事を「いい・悪い」「正しい・間違っている」などの基準で判断していませんか?
そんなあなたが使っているのは、自分や周囲を「正・誤」や「善・悪」でジャッジするものさしです。