7月26日にはパリ夏季五輪が開会式を迎えます。北京冬季五輪のときに「『五輪での日本選手活躍と株価』の関係が深いワケ」という記事でも取り上げましたが、世界中が注目する大きなイベントなだけに、五輪と株価とは深い関係があります。そこで今回は夏季五輪と株価のジンクスを紹介します。
まず、最初に注目したいジンクスは、「五輪の金メダル数が多く、日本選手が活躍する五輪期間の株価が高い」というものです。下表で確認しましょう。
過去の夏季五輪のうち日本選手が金メダルを10個以上獲得したときの五輪期間の株価の騰落率を見たものです。前回の東京五輪を含めて過去7回中に6回は日経平均株価が上昇しました。確率になおすと85%以上の上昇になります。平均騰落率は2%程度の上昇となりました。実際に、日本選手が活躍する五輪期間の株価が高い傾向が分かります。
特に日本選手が活躍すれば、暑い夏にエアコンが効く自宅で、大型で高画質のフルハイビジョンテレビで観戦したいニーズから、エアコンやテレビなどの家電需要の高まりが期待されます。さらに、活躍した選手が着用するウェアや道具などの人気が高まったり、スポンサーが注目されるなど、関連する企業への注目が拡がります。こうした期待が五輪期間の相場を牽引すると見られます。
1964年の東京五輪のケースは株価が下げましたが、これは自国での開催で、五輪前に株価が期待を反映してしまって、期間中は下げてしまいました。
同じく2021年の東京五輪も日本開催でしたが株価は上昇しました。コロナ下での開催で、事前に五輪開催までも不安視されていたため、実際の五輪期間での盛り上がりが素直に株価に反映されたと見られます。
日本選手のメダル数は、アメリカの大手データ会社グレースノート社から、金12個(7月24日時点での最新)との予想が発表されています。パリ五輪期間となる7月26日から8月11日までの約2週間も日本選手の活躍と共に堅調な相場が期待されます。
次に、2つ目のジンクスを取り上げます。日本選手が活躍する五輪期間ではどのような業種が上昇する傾向があるのでしょうか。東証の33業種別株価指数を使って調べてみました。業種別指数のデータは手元でとれる最長期間で集計すると、上表のうち、直近に近い過去3回のみとなります。結果は下表に示されます。
先ほど、活躍する日本選手に関連した企業が五輪期間で注目されやすいと伝えましたが、業種のくくりでみると、意外な業種の上昇が上位となっています。
鉄鋼(下表中の青字)は過去3回でいずれも上昇率が高い業種でした。鉄鋼は内需景気と深く関係する業種ですが、五輪で日本選手の活躍が景気を刺激すると期待されるからかもしれません。また、海運業(下表中の赤字)も3回中で2回が上位となっています。海運業も同じく景気敏感株として荷動きが活発となると上昇する業種です。
さて、最後に取り上げる3つ目のジンクスは、「夏季五輪の年の相場は高い」というものです。さらに付け加えると、「冬季五輪の年は株価が低迷」とも言われます。実際に下表で確認してみましょう。
冬季五輪の年は、他の年に比べて日米共に、平均騰落率、勝率ともに良い数値とは言えません。一方、最も株価騰落率が高いのは、「冬季五輪の翌年」でした。これは、足元では昨年の2023年が当てはまりますが、確かに2023年は日米共に株価は堅調でした。そして注目の夏季五輪の年も冬季五輪の年と比べると堅調です。
夏季五輪の年の株価が高いということの背後には、夏季五輪需要などによる景気浮揚効果も背後にあるでしょう。ただ、このアノマリーの背後にはアメリカ大統領選の影響も大きいと言われます。夏季五輪の年は大統領選と重なり、冬季五輪は中間選挙の年となります。
アメリカ大統領の任期は4年間です。これまでの大統領は次のように考える傾向が多いようです。任期後で再選、あるいは自分の属する政党出身者が大統領選を勝ち取るため、やらなければならない痛みを伴う政策はなるべく早い段階で行います。そして任期後半に多くの国民が喜ぶ景気刺激策を打ち出して、大統領選のあたりで景気が好調になるようにコントロールするのです。
こうしたことから、任期前半の中間選挙に向けて、景気や株価は厳しい傾向になりやすく、大統領選の年にかけて株価は堅調になると推測されます。日本株もこうした米国株の影響を受けています。足元、大統領選は不透明感が強いものですが、株式市場は好調となるジンクスが見られます。