デジタル対戦ゲームの競技「eスポーツ」に参画する鉄道事業者が増えている。JR各社や大手私鉄の「会社名+eスポーツ」を検索すると、ざっと見ても南海電鉄、JR東日本、東京メトロ、京王電鉄、大阪メトロ、京急電鉄、JR東海、JR西日本、JR九州、東急電鉄、西武鉄道、東武鉄道の各社がeスポーツに関わっている。
「eスポーツ」はコンピューターゲームをスポーツ競技のように楽しむ文化だ。2018年に「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンにも選ばれて知名度を上げた。この年、日本でeスポーツの普及に取り組んできた3組織が統合されて「JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)」が設立された。JeSUはこの年を「日本のeスポーツ元年」としているようで、メディアもそれにならっている。
しかし、私がeスポーツを見つけた年は2000年だ。当時私はゲームやIT関連のライターだった。ネタ探しのために東京ゲームショウ2000秋を訪れたところ、会場のいちばん奥の寂しいところで「WCGC(ワールドサイバーゲームズチャレンジ、World Cyber Games Challenge)の予選大会を開催していた。優勝者は韓国・ソウルで開催されるWCGC本戦に招待された。この試合を記事化して紹介したのは私だけだったような気がする。
当時は韓国でプロゲーマー協会が設立され、プロリーグの大きな試合はテレビで放送されていた。アメリカでは友達の家にPCを持ち込んで対戦する「LANパーティ」が流行しており、大きな競技大会はホテルの宴会場などを貸し切る規模になっていた。しかし日本では見向きもされず、海外の競技会の日本予選が細々と行われるだけだった。だが、取材した選手や関係者は未来を信じて活動を続けていた。
時が経って、2021年頃から鉄道分野のプレスリリースでeスポーツという言葉が現れはじめた。ついに自分のカテゴリーの鉄道分野まで巻き込んでいた。とても感慨深い。
JeSUによると、2023年の日本のeスポーツ市場規模は162億1900万円で、2019年の61億1800万円の約2.7倍から右肩上がりの成長となっており、2025年には200億円を突破するという。
市場規模の項目は1位がスポンサー(広告関連)で41.9%、2位がイベント運営で31.0%、3位が放映権で12.7%となっている。ここには従来のスポーツにとって「用具」にあたるeスポーツ対応PC、周辺機器などの売り上げが加味されていない。したがってIT業界への経済効果はもっと大きいだろう。
eスポーツ市場規模は主に企業の支出を算出しており、参加者市場の算出には至っていない。それでも日本のeスポーツファン数は算出されており、JeSUによると試合観戦、動画視聴、地上波番組経験者から推計されている。2019年の482.9万人から2024年は860.9万人に増えており、2025年には1000万人を超えると予想される。日本の人口の約8%がeスポーツに接触する計算だ。