P&Gは、1枚の紙に書き出されたアイディアや構想を基に前に進んでいく。入社した初日から、社員は明確で説得力のある社内メモを書くように言われる。
少なくとも1週間に1枚を書いて上層部に採用してもらうことを目標に、一度に2、3枚の社内メモに並行して取り組むのが一般的だ。
これらを上司と共有し、タイプで打って提出すると、書いたものよりも多くのコメントが手書きで添えられて戻ってくる。
まずは社内メモの目的を明確に記すことから始まる。これは仕事での目的を明確にする助けともなる。この社内メモは新たな広告を始めるための提案なのか、リサーチの概要なのか、価格値下げの提案なのか。まずこれらを明確にしなければならない。
1枚にまとめた社内メモのもう1つ重要な点は、考えを3つに分けて記すことだ。自分のアイディアが正当である3つの理由を書く。研究レポートからわかった3つのことなど、常に3つだ。
どうして3つなのか、その理由を聞いたことがあるが、そのときの答えは、1つや2つでは説得力が足りなくて4つ以上は多すぎる、3つが最適な数だという判断らしい。私は話すときも今なお3つの段階を踏むことにしている。
優れた1枚の社内メモは提案を書いた際でも、それに対する懸念を見越して反論が用意されている。構想を追求する際に伴うリスクと、こうしたリスクを軽減する方法をあらかじめ記しておくのだ。
社内メモを1枚完璧にまとめる最後の点は、次のステップを明確にしておくことだ。このためには構想をどのように実行すればいいか、入念に考える訓練が必要だ。
例えば、新たな広告の制作を提案する場合、こちらが依頼した場合に都合が付く制作会社を十分に下調べしておく必要がある。撮影に何日必要で、編集に何日かかり、完成した広告の発表を準備するのに、最終的にいつ内部の承認が下りるかなどなど。
こうした下調べによって、細かいところにまで注意が行き届き、どんな問題が生じて費用やタイムテーブルにどう影響を及ぼすのかが予想できる。
コーネル大学を出たての22歳の私にとって、1枚の社内メモを完成させようと努力することで2つの大きな成果が得られた。
1つはビジネス文書を書く強力なスキルが身に付いたことだ。
文書を書いて上司に見せて、何の編集もコメントも付かずに上層部に送ってもらったときは、鼻高々だった。正直言うと、私はそこまで行くのに数カ月かかった。それだけに、できたときは最高の気分だった。
2つ目のもっと大きな成果は、1枚の社内メモを完璧に書こうとすることで、明確に考えられるようになったことだ。
大きな視点を持ち、これから成し遂げようとする目標を見積もるようになる。説得力が身に付く。自分の案を支持するデータや外部の例を探すようになる。質問を想定し、あらかじめ答えを用意できるようになる。自分の提案を実行するための、詳細な行動プランを作るようになったのだった。