「それじゃあ、来月になったらそこの美術館にみんなで行きましょうよ。モネ展やっているらしいわよ」と話していても、「来月は大学の学園祭の時期よね。◯◯大学の場合は─」とか、「学校行事に祖父母が来てくれるのは嬉しいけど対応が大変で……」と話していても「わかるー。うちの旦那も祖父も◯◯大学だから挨拶が大変でー」と割り込んでくるような学歴自慢はよくある例だと思います。
このような例は大概、自分か身内に有名大学出身者か合格者がいて、有名大学出身でない人、もしくは子どもが有名大学を目指している人に対してマウントを取って優越感に浸りたい場合に見られます。
この学歴自慢以外にも、「成功自慢」「能力自慢」、資産・財産・高級品などの「物質的自慢」、有名人や影響力のある人との関係を自慢する「関係自慢」「親族自慢」、特別な体験や冒険などの「体験自慢」など、自慢を感じる場合は、承認欲求が表れているのでとてもわかりやすい例です。誰もが一度くらい気がついたことのある承認欲求ではないでしょうか?
この割り込みキーワードは承認欲求の表れ方が強いので、聞き続けることが本当に必要かを見極めて、親しくなりたい場合はバランスよい対応を心がけることを、おすすめします。
3つめは「特別感キーワード」です。相手に特別な信頼を持っていることを示して、相手の承認欲求を満たすことができる言葉があります。
特別感キーワードとは、「この話はね、あなただけに話すのだけれども」とか「ここだけの話ですが」などと、これから話す内容がいかに特別な内容であるかを強調するための前置きに使われる「〇〇だけ」とか「実は」「あなたは特別だから」や「誰にも言ってないんだけど」などという特別感を強調するキーワードです。
この言葉を言われると、「私は特別に大切にされている」や「私は特別な信頼を得ている」と、自分を承認されたと感じ嬉しくなりますが、その言葉には深い意味がない場合もあります。
言われた側は特別感を得たとしても、話し手はこの特別感キーワードを深い意味で使っているとは限りません。過去にこのキーワードを使って誰かに真剣に話を聞いてもらえた経験があり、味を占めてその後も安易に使っている可能性もあります。
よくあるのは、「あなただけに話すね」という特別感キーワードで話されたことで嬉しくなり秘密を守っていたのに、実は周りの全員が知っていたというエピソードや、「あなたにしか話せない」という特別感キーワードから信用されていると感じ気持ちに応えようと「自分の隠していたこと」を話してみたら、友達中に広められて悔しい思いをしたエピソードなどあるので気をつけないといけないのです。
話し手にとっては話し始めの「キッカケワード」くらいの感覚の場合もあるのです。「特別感キーワード」は相手を承認していると伝えることで、自分も承認してほしいという期待が込められたキーワードです。
話を始める前に「んー」「やっぱり話すのやめとこうかなー」などと、もったいぶるのも同じ手法です。この特別感キーワードは、悩んでいる様子を見せられることで応援したい気持ちが湧き、話してくれたその勇気に感謝すら覚えます。
好奇心を刺激され期待がふくらみ「聞かせてー」「なになにー?」「誰にもいわないから」と聞き手をワクワクさせたことに優越感を感じるため、承認欲求が満たされる振り幅が広く癖になって使う話し手が多いので注意しましょう。
また、「この話はあなたと共有するからね」というある種の共犯者のような立場になることを求められている場合があります。このようなときは、背後に隠れた意図がある可能性があるため、話の流れや内容から判断する必要があります。
ですから、相手から特別感キーワードが出てきたら、一見自分の承認欲求へのアプローチに受け取れても、実は相手の承認欲求が潜んでいることを覚えておきましょう。
この特別感キーワードは、使う側は注意しないと信頼を失います。「あなただから話すんだけど」「ここだけの話だけど」と言いながら、実はあちらこちらで話していることだとわかれば、一気に信頼をなくすでしょう。
相手の承認欲求を理解することには有効ですが、自分が使う場合には本当に特別なとき以外は注意が必要です。