書店は再販制度や委託販売制度のおかげで、価格競争とも在庫リスクとも無縁の楽な商売をしている――もしかしたら流通関係の中には、そんなふうに思っている方もいるかもしれません。では、書店事業の利益率が平均して20%そこそこ、営業利益率では1%を下回ることも珍しくないと知ればどうでしょうか。
あのアマゾンが初の実店舗ビジネスとして手がけたリアル書店を早々にすべて閉鎖したことからも、決して割のいいビジネスではないことがわかります。
それでも、文化の担い手としての矜持をもって踏ん張るリアル書店のおかげで、私たちはベストセラーでも「あなたへのおすすめ」でもない多種多様な本に出会い、手に取ってパラパラとページをめくっては、さまざまな刺激を得ることができます。街から書店が消えたら、そんな幸せな偶然はめっきり減ってしまうことでしょう。
とはいえ、儲からないビジネスに未来はありません。良い本を棚に並べ、文化の担い手としての役割を果たすためには、何よりもまず利益率を上げていく必要があります。
カフェの併設やイベント開催で来店数を増やしたり、熱のこもった手書きのポップで客単価向上を狙う。あるいは返品コストを削減するためにAIで需要予測の高度化を図るなど、多くの書店が持続可能なビジネスのあり方を探しています。
こうした努力に冷や水を浴びせたのがコロナ禍です。丸善丸の内本店の篠田晃典店長は緊急事態宣言下、普段は人であふれる東京駅前の広場を闊歩するハトの姿を見て、危機感を募らせたといいます。
「店の売り上げは半減。いつ状況が改善するとも先が見えない中、このまま待っていたらつぶれると本気で思いました」
私が研究する「エフェクチュエーション」は不確実性の高い状況における意思決定の理論で、新しい市場や産業を創造するきわめて不確実性の高い問題に繰り返し対処して成功した起業家の思考様式から導き出されたものです。
エフェクチュエーションは、次の5つの行動原則から構成されます。