日本は、試験国家です。幼稚園、小学校の「お受験」に始まり、中学受験、高校受験、大学受験。就職試験に国家試験。さらに、社会人になっても資格試験、昇進試験がつきまといます。試験に合格するかどうかが一生を左右する、といっても過言ではないでしょう。
「一流の学校を卒業して、一流の会社に就職する」のが社会的な成功であると思い込まされている日本においては、「試験」を突破していくための「記憶力」が不可欠とされます。
日本においては、「学校の成績が良い人」=「頭が良い人」という認識です。さらに「頭の良い人」=「記憶力が良い人」です。頭の良さや記憶力は生まれつきのもの。自分は「生まれつき頭が悪い」から、どうしようもない。そんな固定観念に支配されている人がほとんどだと思いますが、それは完全に間違っています。
「自分は記憶力が悪い」「自分は頭が悪い」と思っている人の多くは、記憶力が良い、悪いという以前に、事前の準備の仕方が間違っている可能性があります。
記憶は、4つのステップで定着していきます。
「理解」「整理」「記憶」「反復」の4ステップです。
「記憶力が悪い人」「成績が悪い人」に限って、「記憶」の前の「理解」と「整理」のプロセスを軽視します。しかし、「理解」と「整理」、この2つの事前準備が、実は「記憶」以上に重要なのです。
人間の脳というのは、「理解」することによって、物事が忘れづらくなります。他の人に説明できる程度に理解しておけば、長く記憶にとどめておくことができるでしょう。
また、「整理」され、何か他の物事に関連づけられると、記憶に残りやすくなります。似たような情報・知識を分類・整理する。記憶は「関連」を好みますので、「図」や「表」にまとめるだけでも、記憶が猛烈に促進されます。
学校の成績が良い子というのは、「記憶力」が良さそうに見えるのですが、実は記憶力以上に「理解力」や「整理・まとめ」の能力が高いのです。試験の成績は「記憶する」の前段階で、既に勝負を決しているともいえます。
ですから、仮に「記憶力」が悪くても、「理解力」や「整理・まとめ」の能力で十分に補完することができます。
「記憶」そのものに時間を使うよりも、事前準備としての「理解」と「整理」にしっかりと時間を使うことで、記憶力が悪い人でも無理なく記憶することができるのです。
「自分は生まれつき記憶力が悪いから、成績が悪いのはしようがない」
こんなくだらない言い訳を自分にするのはもうやめましょう。この思い込みは二重に間違っています。
まず、記憶力は生まれつきのものではなく、20歳からでも、40歳からでも伸ばすことができます。
さらに、学校の成績、つまり試験に必要な能力は、「記憶力」だけではありません。「頭が良い」とされる学生を詳しく調べると、ほぼ例外なく彼らは集中力が高く、要点をまとめ整理する能力も高く、頭の回転が速いのです。これらは「記憶力」、すなわち「長期記憶」とは直接関係のない能力です。