答えやすい問い方と答えづらい問い方がある。答えづらいケースの多くは、質問が大雑把で漠然としていることが原因だ。相手に「何が聞きたいの?」と思わせてしまったら、それはいい質問とは言えない。
大雑把に「どう?」と聞くのは、相手に自由に考えてもらいたいときや、こちらが答えをまったく予測できないとき、会議ならば自分が主導権を握らず誰かに任せたいときには役立つ。しかし、いつも「どう?」と丸投げしていると、思わぬところで評価を落としている可能性がある。そこで大切になるのが「具体的に聞く」ことだ。
△質問「会議の進め方についてどう思う?」
○質問「会議がいつも1時間以上長引くのはなぜだと思う?」
△質問の「会議の進め方」という漠然とした内容を、〇質問のように「1時間以上長引く」として、時間という具体的な要素を盛り込むと相手は答えやすい。自分が知っている情報や自分の考えを答えればいいとわかるからだ。
つまり、具体的な質問とは質問者が回答の範囲を設定できる問いで、自分が議論を望む方向に相手を誘導できるメリットがある。会話の続きの一例を挙げよう。
答え例「いつも1時間以上長引くのは、会議で初めて資料に目を通すからじゃない?」
○質問「そうだよね。資料提出期限って、以前は前日朝だったって知って た?」
答え例「知らなかったよ。いつから変わったんだろう……」
○質問「そもそもさ、会議の進め方についてどう思う?」
やりとりのなかで相手の答えから「資料」という具体物が出され、それを受けて「提出期限」「以前の状態」と具体的な質問を重ねることで話が深掘りできる。
人は、自分に都合の悪いことは話さない。日常会話でもビジネスでも、自分の立場がまずくならないよう、いい面だけを強調したり無難な内容を無意識に選んだりしながら話している。「聞かれなければ言わずにおこう」と相手が考えたことが、まさに自分が知りたいことなら、大事な情報を聞き出せず相手の思惑にまんまとはまってしまうことになる。
しかし、相手が語らないつもりだったことを突っつくうまい聞き方を心得ていれば、その心配はなくなる。そこでポイントになるのがデメリットに焦点を当てる質問だ。
○質問「とてもいいお話ですが、デメリットも教えてもらえますか?」
商品なりサービスに魅力的なメリットがあるということは、そのメリットを生むために生じたデメリットがあるはずだ。たとえば、史上最小のコンパクトさが売りだが、その分機能が割愛されたような場合、
○質問「コンパクトさというメリットのために生じたデメリットは?」
と切り込む質問で、相手が言わずにいたかった機能に関する情報を引き出せる。また、相手が話した内容の中にまだ触れられていない側面があることに気づいたときは、「これについてはどうお考えですか?」と具体的に聞く。
○質問「そんなに簡単な手続きで完了とは、セキュリティ面が弱点では?」
交渉や決断のためには材料としての情報を得ることが必須だろう。まず「よく聞く」ことで欠けたピースを見つけ、それを問うことで、交渉の主導権を握っていける。