「年俸10億円コーチ」に共通する3つの問いかけ

スポーツコーチ
アメリカでは、一流アスリートだけでなく、一流コーチも高給取り(写真:yosan/PIXTA)
10年で総額7億ドル(約1015億円)というプロスポーツ史上最高額での契約を決めた大谷翔平選手。一流のアスリートが高給取りであることは言うまでもないが、アメリカでは一流のコーチもまた年俸10億円クラス。そう聞くと驚く人は多いだろう。巨額のマネーを生み出すスポーツビジネスは、データサイエンスとの相性も高い。ビジネスにも活用できるデータサイエンス思考を身につけるための3つのポイントを、『外資系データサイエンティストの知的生産術』を上梓した山本康正氏と松谷恵氏が解説する。
 

トップ5のヘッドコーチの年俸は1000万ドル超

トップアスリートが高収入なのは当然ですが、アメリカでは一流のコーチもまた高給取りです。

『USAトゥデイ』が毎年発表しているアメリカの大学アメリカンフットボール部のヘッドコーチのサラリーランキングによると、今年のトップはアラバマ大学のヘッドコーチを務めるニック・セイバン氏。その額は1140万7000ドル、日本円にしてなんと約17億円です。さらに、トップ5のヘッドコーチは全員1000万ドル超です。

アメフトのヘッドコーチが特別なわけではなく、男子バスケットボールのヘッドコーチの年俸も負けていません。今年のトップはケンタッキー大学のヘッドコーチを務めるジョン・カリパリ氏の853万3483ドル(約12億円)です。

このように、スポーツビジネスが進んでいるアメリカでは、大学スポーツの世界であってもトップクラスのヘッドコーチの年俸は数億~10数億円クラスであり、大学の学長よりも高給取りであるケースも珍しくありません。

年収約17億円。アラバマ大学アメフト部のヘッドコーチ、ニック・セイバン氏(写真:Andy Lyons/Getty Images)

表舞台に立つアスリートのみならず、それらを支えるコーチまでもが高給取りとなりうるのは、スポーツビジネスが巨額な利益を生み出す産業だからに他なりません。そして、スポーツビジネスをそこまで成長させた大きな駆動力のひとつは、間違いなくデータサイエンスです。

ブラッド・ピット主演の映画『マネーボール』をご存じでしょうか。アメリカの弱小球団が統計学的手法をもとに、常勝チームへとのし上がっていく実話をもとにしたヒット作です。同作ではスポーツの世界で勝者となるためにはデータ分析が不可欠である現実が、わかりやすい形でエンターテインメント化されています。

一流のコーチ=データサイエンスの専門家ではない

そもそもスポーツとは定められたルールの下、特定のシチュエーション(試合)とメンバーでベストなプレイを再現できるようトレーニングするものですから、データサイエンスとの相性が抜群なのは当然のことでしょう。

近年は日本でもデータを活用したスポーツアナリティクスの導入が各競技で進んできました。センサー、データ分析ソフトの進化とウェアラブルデバイスの普及によって、選手の動きがより詳細に取得できるようになった影響も大きいでしょう。スポーツアナリティクスの市場規模は2030年には約57億ドルに成長すると予測されています。

もはやどの競技においても、世界的な強豪チームのバックではテクノロジーとデータサイエンティストの活躍があると言っても過言ではないのです。

では一流のコーチ=データサイエンスの専門家なのかというと、もちろんそうではありません。各スポーツの経験値という土台の上に、データサイエンスをうまく取り入れ、活用できる。または専門家とうまく協業することができる。それこそが10億円クラスの年俸を手にしている優秀なコーチの共通条件です。