そもそもの話になりますが「コミュニケーションが上手」というと、どんな人をイメージしますか?
「初対面の相手に対しても自然な笑顔で接することができる」「ハキハキと積極的に話しかけられる」「言うべきことをしっかりと言える」「打てば響くような相づちを打てる」「こちらの話を聞いてくれそうな安心感がある」「あとに引きずらない注意の仕方ができる」……といったところでしょうか。
こうした「誰にとってもウケのいい人」「感じのいい人」に共通しているのは、どんな点でしょう。根っからの“陽キャ”な性格? いいえ、これらはすべて「顔の動かし方」に関係しているのです。
しっかりと歯の見えるほがらかな微笑み、意志を感じさせる目、とっさでの的確なリアクション……いずれも、顔のもつ表現力を最大限に引き出していますよね。
コミュニケーションをとるのがたくみな人は、顔を上手に使うことが、すでに身についているといえます。
全員がトレーニングで習得したわけではないでしょうから、自然にマスターできる環境で育ったのかもしれません。
両親など、周囲に明るい大人が多かったことなども影響するでしょう。
でも、もしあなたがこれまで顔の使い方を知らずにきたとしても、ここからのトレーニングで、そのレベルまで引き上げることが可能です。
さらには、自分の顔の使い方だけでなく、相手の表情にも敏感になる――相手の表情から内面を推し量ることができるようになるのです。
表情で発信する力と、相手の気持ちを読む力、両方が養われていきます。こういった人付き合いの武器となる顔の使い方を、一緒に身につけていきましょう。
コミュニケーションの第一歩として、どれだけ表情が重要かをお話ししてきました。同時に強くお伝えしたいのは、コミュニケーション上手=笑顔、ではないということ。
「笑顔は最高のコミュニケーションツール」などといった記事をよく目にしますし、社員教育の現場などでも、まずは笑顔の練習から始める企業は少なくありません。ですから、そう思ってしまうのも無理からぬことです。
私のレッスンに訪れる生徒さんのなかにも「笑顔に自信がなくて……」とおっしゃる方の、なんと多いことか。そういう方々に「無理に笑顔をつくらなくていいんですよ」と話すと、非常に驚かれます。
でも、よくよく考えてみてください。あなたの知るコミュニケーション上手な人は、いつもニコニコしているばかりですか?
いいえ、必要なときにはしっかりと自分の意見を言えたり、場をまとめたりする力をもっているのではないでしょうか。そして、あなた自身が目指したいのも、臨機応変に対応できる人なのではないでしょうか。
大切なのは、「いつも笑顔でいる」ことではなく「状況に応じていちばん的確な表情をつくれる」ことなのです。
その場その場を適当にやり過ごすのではなく、誠実に自分の思いを表情にのせること。そのために、その場にいる自分を俯瞰できること。
笑顔はあくまで、コミュニケーション手段のひとつです。けっして最終目標ではないことを忘れないでくださいね。