部下に任せた仕事に、上司が介入すべき3つの局面

「任せた以上、口を出すべきではない」とは思いつつ、どこまで見守るのがいいものか(写真:Ushico/PIXTA)
「日本人の2倍働いて3倍稼ぐ」と言われる外資系管理職だが、どうすれば、そのような働き方ができるのか。また、AI・テクノロジー社会で生き残る管理職の条件とは何か。
このたび、ロングセラー定番書の新版『新 管理職1年目の教科書 外資系マネジャーが必ず成果を上げる36のルール』を刊行した櫻田毅氏が、「2倍働き、チームの成果を最大化」する外資系管理職に共通する、意思決定、部下育成、権限委譲などの仕事のルールについて解説する。
 

管理職に共通した悩み

部下に仕事を任せる場合、「任せた以上、口を出すべきではない」と考える上司は少なくありません。部下の育成を考えたら自力でやらせるべきだ、あるいは、口を出すとモチベーションを下げてしまうので我慢すべきだなどが理由です。

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一方で、任せてみたものの、自分で判断できずに業務が停滞してしまったとか、不適切な判断でトラブルを起こしてしまったなど、うまくいかない経験をした人は「やはり口を出すべきなのか」と考えてしまいます。

この、「どこまで任せて、どこから口を出すのか」という線引き問題は、私が普段接している管理職の方々にとっても共通の悩みのようです。

日米の両企業で長らくマネジメントに携わってきた経験から、私は部下に任せた仕事であっても、上司が迷わず介入すべき局面が3つあると考えています。その3つの局面とはどのようなものでしょうか。

1つ目は、部下の判断根拠に危うさを感じたときです。

1on1ミーティングなどで、仕事の進捗だけでなく、本人がどのような基準で判断を下しているのかを聞きます。それが、業務方針と整合的であり、部下なりによく考えた合理的なものであれば尊重すべきです。

しかし、その点が曖昧で「何となく」だったり、リスクを過度に怖がっていたり、あるいは、利己的な視点が見え隠れする場合は、そのまま任せるわけにはいきません。仕事全体にその姿勢が反映され、結果に悪影響を及ぼすからです。

自分が気になっているということを率直に伝えて、部下の認識とすりあわせます。上司が率直に伝えれば伝えるほど、両者の認識は早く一致します。そのうえで、どのように改善すべきか、自分はどのようにサポートできるかなどを一緒に考えればよいでしょう。

人間関係の悪化はパフォーマンスを悪化させる

介入すべき2つ目は、人間関係の悪化を感じたときです。

ギリギリの状態で仕事をしているときほど視野が狭くなり、周りへの気づかいがおざなりになりがちです。仕事の進め方やものの言い方に反感を買っていたり、ちょっとした行き違いで関係者と不仲になっていたりします。

しかし、本人がそのことに気づかずに、仕事に非協力的な人を、相手のやる気のせいだと一方的に決めつけたりすることもあります。問題だとは思っていても、どうしていいかわからないまま放置している人もいます。

人間関係の悪化はパフォーマンスを悪化させ、しかも、一度壊れると修復に多大な努力を要します。できるだけ早い段階で自分がそう感じていることを率直に伝え、本人と話し合う必要があります。

介入すべき3つ目は、組織としての重要なリスクが増大しているときです。

何が重要なリスクかは仕事やチームによって違いますが、ひと言で言えば、チームの成果の最大化に甚大な悪影響を与えるものです。

たとえば、対顧客サービスを担っているチームであれば、顧客との信頼関係が重要なリスクです。それがぐらつき始めているにもかかわらず、本人が気づいていなかったり、気づいていても、プライドが邪魔をしてそこから目をそらしている場合があります。