今の日本では多くの人が忙しい生活を送っています。目の前にやるべきことが山積みとなり、それを必死にこなしている人も多いことでしょう。
例えば会社の中では、まじめな人ほど「休めない」と考えがちです。
毎日忙しく働いている人に「ちょっとは休んだらどうですか?」などと言うと「いや、僕が休んだら仕事がストップしてしまい、ほかの部署にも迷惑がかかります」と反論を受けます。
まじめな人は、体がつらくても、精神的に追い込まれていても、無理して働きます。
彼らは休暇を取ろうとか、部下や後輩に仕事を任せて自分の負担を軽くしようとは考えません。仮に考えたとしても「やっぱり自分でやらなければ」などと思い直すのです。
厳しいノルマの中で、仕事に追われていると「休めない」という思い込みが生まれます。「たまには休まないと心身ともにつぶれてしまう」という、ごく常識的な判断ができなくなってしまうのです。
でも、実際にはどんな組織でも社員の1人や2人が休んだところで業務がストップすることはありません。その証拠に、インフルエンザや忌引などで休暇を取る人が出ても、職場の仕事は当たり前のように回っています。今出勤しているメンバーでなんとかやりくりできるのです。
「休めない」「私ががんばらないと」という思い込みも、一種の不安に押しつぶされている状態です。無理を続けたら取り返しのつかないことになりかねないのに、自分の居場所がなくなる不安から抜け出せない。結果的に、本当に心や体を壊してしまう人が後を絶たないのです。
私自身、産業医として、無理を重ねているまじめな社員の方と実際に接する機会があります。そんなとき、次のようにアドバイスをしています。
「あなたが休んだとき、その穴を埋めるのは、あなたの責任ではなく、会社の責任です」
組織は、自分1人の力だけで成り立っているわけではないと気づいてほしいのです。
自分自身の不安と向き合わずに、やみくもに不安から逃げようとする人がいます。逃げるときには2つの方法があります。1つは、何もしないという方法。そしてもう1つが、みんなと同じ行動を取るという方法です。
一度会社のような組織に入ると、不当な待遇を受けたとしても、抜け出すことに不安を感じてしまいます。同じようにつらい思いをしている仲間のみんなと一緒のほうが安心だからです。