上司が言いがち「後はやっておくよ」がNG発言な訳

部下を怒る上司
部下のやる気をそぐ上司が言いがちなNGワードを解説します(写真:プラナ/PIXTA)
仕事をするうえで「部下や同僚と距離を縮められずに悩んでいる」という人は少なくないのではないでしょうか。コーチングの専門家で、新著『部下のやる気はいらない 「一歩踏み出す」からはじめるコーチング』を上梓した岩崎徹也氏が、距離の縮め方を解説します。

何気ない言葉が部下のモチベーションをそぐことも

私たちは日夜、多くのビジネスパーソンにコーチングをしていますが、いつも驚かされるのは、「上司と部下」「チームメンバー同士」で認識に大きな乖離があるということです。

上司が部下に何気なく言った言葉が、すごく部下の心をえぐっていて、モチベーションを大きくそいでいることがあります。また、上司の何気のない行動によって、部下が勘違いをして、認識に齟齬が生まれていることもあります。

今日はそんな、部下がやる気をなくしてしまうような上司の言葉を3つ、紹介したいと思います。

①「あとはやっておくから、いいよ」

コーチングをする中でよく出てくる言葉として「ここだけやっておけばいい」「このくらいやればよい」というのがあります。「なぜ?」と聞くと「あとは上司がやるから」と言います。こうなっている原因が「あとはやっとくから、いいよ」にあります。

例えば、部下に頼んだ仕事が、上司の思うクオリティーに達していなかったとき、上司は「ああ、まあここから先は俺がやっておくわ。大丈夫だよ」と優しく話す場合があるでしょう。

これは一見、部下のことを考えているいい上司であるかのような言い方ですが、実は落とし穴があります。

部下がしっかりと責任感を持って進めていた場合、「この仕事に対して、自分はそんなに期待されていなかったんだな」とがっかりしたり、「何がいけなかったのか知りたかったのに」と成長の機会を奪われたように感じて、モチベーションがそがれてしまったりする可能性があるのです。

「部下がこの仕事にあまり乗り気じゃないから、この仕事巻きとってやってあげよう」という優しさで、「あとはやっとくから、いいよ」と言っていることもあるでしょう。しかし、そういう場合でも、やはりこの言葉は悪手です。なぜなら、これを続けていると、どんどん部下は仕事に対しての責任感がなくなっていってしまうからです。

「頼まれた仕事を、最後までやり切った」

「周りの人の力を借りたけれど、最後まで自分が責任を持ってやった」

そういう、ちょっとした成功体験を積んでもらうことが必要なのです。逆にそれがないと、いつまでたっても仕事が「やらされるもの」であるという感覚を捨てられません。最後まで「やり切る」ことをしてもらったときに、その仕事が「自分事」になるのです。

もともと「ここから先は上司自身でやるつもりだった」のであればそのことを事前に伝えておくと、「あとはやっとくから、いいよ」での誤解がなくなるでしょう。

部下にとって「残酷でやる気がそがれる」言葉

⓶「もっと、やる気を出してよ」

例えば、上司の目から見て仕事のクオリティーが低いと感じるときに、「もっと、やる気を出してよ」と言ってしまうことがあるでしょう。しかしこれは、部下からしたら残酷であり、かつやる気が大きく削がれてしまう言葉なんですよね。

上司から部下へのフィードバックの基本は、目標に対して進む中で現状を明確にし、課題や軌道修正するポイントを伝えるものになります。「もっとやる気出して」は目標に対するフィードバックではないので、ポジティブに捉えられるポイントがまったく見つかりません。それだけではなく、至らないポイントがまったく明確ではないため、具体的に何をしていいかわかりませんよね。