生産性調査を通じて、常に最も難しいのは最初の瞬間だと、数多くの起業家が心得ていることを実感しました。
「ジョギングする気持ちを高めたいなら、まず10メートル走ってみる」「書く気になりたいなら、最初の数文字を打ち込む」といった具合に、何かを動かすのに「やる気」が必要なのではなく、「やる気」を起こすためにはまず動く必要があると、彼らは知っているのです。
ToDoリストには始動を早める効果だけでなく、タスク進行中の集中力を維持するのに役立つメリットもあります。
未完了のタスクは、完了したタスクよりも強く記憶に残ります。これは「ツァイガルニク効果」と呼ばれる現象で、頭の中に「To Do」があると、目の前のタスクに集中しづらくなることが判明しています。
そんな集中力低下の予防策として働くのがToDoリスト。必要なものを思いつくたびにTo Doリストへ記録することで、脳のメモリが解放され、思考の処理速度を下げずにすむからです。
ひらめいたら、どこにいても、すぐに書き留める。実際、メモを駆使する起業家は多く、彼らのツールはバラバラです。パソコンでもスマホでも付箋でも、なんでもいいので手を動かして書き留めるのがコツのようです。
To Doリストに2分以内で完了できるタスクがあれば「即実行する」というルールを挙げる起業家も多くいました。
すぐにできそうなことは考える前に行動して終わらせる、その積み重ねが大きなタスクのスピーディな完了へとつながるからです。
タスクを即座に片づけることでリスト内の数を減らすことができ、やるべきことが残っている心理的な負担を解消することもできます。
仕事に取りかかる際、人に振れるタスクがあれば「そのタスクを振ってから自分の手を動かす」のがいい順番だという声も聞かれました。
タスクは大きく「パッシブ(受身)なタスク」と「アクティブ(積極的)なタスク」に分けられます。パッシブなタスクとは、人に任せることに関連するタスクや、「大きなファイルをダウンロードする」「承認を要求する」などの「最初のステップ」を指します。アクティブなタスクは、実際に自分の手を動かして進める仕事です。
アクティブなタスクとパッシブなタスクがある場合、先にパッシブなタスクに取りかかれば、パッシブなタスクの進行中にアクティブなタスクを並列処理できます。
たとえば、「グラフィックデザイナーに概要を説明する」(パッシブなタスク)か「プレゼンの準備を進める」(アクティブなタスク)場合は、先にグラフィックデザイナーに概要を説明しておけば、デザイナーがプロジェクトに取りかかる間に、あなたはプレゼンの準備を進めることができます。
キッチンの作業でも同じことが言えます。この場合、パッシブなタスクから手をつけずに調理すると、仕上がるまでに倍の時間がかかってしまうのです。
集中してタスクに取り組むのに役立つツールの1つが、「音」です。
音楽を聴くことで集中力を高める効果が確認されており、なかでもシカゴ大学の調査によれば、「環境音」は仕事をうながす雰囲気作りにうってつけ。静かな川岸、カフェ、雨音といった環境音を提供しているサイトを利用すれば、集中しやすい状況を作ることができます。
最後に、だらだら仕事を避ける方法として数多く挙がったのが、「自分で締め切りを作る」こと。「午前11時までにプレゼンの準備を終わらせる」など、できるだけ具体的に、そして決めきることを起業家たちは大事にしていました。
制約があることで必然的に集中する状況を作れます。また、リミットがあれば、「なんとかクリアしたい」という意欲にも火をつけられるとのこと。
「完了」は「完璧」よりも優れている――数多くの成功者は「100%を目指して時間をひたすら注ぎ込む」のではなく、「とにかく決めた時間内に終わらせる」のを意識することで、始動にかかる時間を圧縮し、生産性を爆上げしているのです。