今、空き家は全国で約85万戸。土地にいたっては相続後に登記が行われず、長期間未登記となった場所の総面積は、九州の面積(約368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールにも上っているのです。昔は子育てに適しているといわれていた郊外型の戸建てやマンションが、今の職住近接のトレンドに合わないことがその原因。空き家や所有権不明の土地が急増しています。
そもそも子育てに適した住居も、子どもが独立して家を出てしまえば、老夫婦には持て余す広さになるのです。とくに郊外で広めの戸建てに住んでいるのであれば、室内の掃除や庭の手入れをするだけでも重労働となります。子育てに適した住宅は、終の住処(最期を迎える時まで住む家)とするには決して適しているとはいえません。
年を取れば取るほど、気力や体力が失われて引っ越しや買い替えは考えられなくなり、決して住みやすいとはいえない自宅を終の住処とする人が多いのです。
また、住宅の種類だけではなく、そもそもどこに住むのか、誰と一緒に住むのかという視点も、老後の生活を充実させるために欠かせない要素となります。
ここでは、「どこに住むのか」「誰と住むのか」そして「どのような家に住むのか」という3つの視点から、老後生活を豊かなものとする終の住処とは何か?を考えていきます。
都会暮らしに疲れて、人生の最後は豊かな自然の残る田舎や海外に住みたいと思っている人は多いかもしれません。私は28歳のときに、これまで慣れ親しんできた東京を離れ、北海道のニセコに移住した経験があります。終の住処として都会からニセコに移住してきた人にたくさん出会いました。私の体験を含めて、地方への移住の現実についてお伝えします。
ニセコで出会ったTさんは宅建を取得し、不動産事業を始めて事業は大成功。都会から移住者を誘致すると同時に、地元の人と深く関わって土地や部屋を上手に見つけていました。家族ともうまくやっていて、スキーなどアウトドアを満喫。Tさんをはじめ移住して成功している人に共通するのは間違いなく、コミュニケーション力が高いことです。
田舎にいても、何かしらの人とのコミュニケーションが必ずあります。人が少ないから誰とも関わりがない、ということはありえません。
たとえお金があって広い家に住んだとしても、地元の人との時間を作らず、人とのつながりを避けていると、縁のない田舎に終の住処を構えるのは難しいと思います。幸せを感じることができず、結局は都会に戻るケースが多いのです。
失敗する人のパターンは、本気の移住ではなく、どこかで別荘の感覚があるのかもしれません。
都会に帰る所が別にあるということから、地元と積極的に関係を持とうとしないのでしょう。沖縄に移住した知人もいますが、北でも南でも同じことです。