【イアン・ブルマの衝撃論文】米国支配の終わりは近い!韓国は中国を頼り、独・仏はロシアを頼り、そして日本は……?

2025.03.28 Wedge ONLINE

 3月5日付Project Syndicate誌に掲載されたイアン・ブルマの論説‘Who Will Lead the Democratic World?’(誰が民主主義世界をリードするのか)は、米国が抜けた穴を埋められるのはドイツ・日本だけだが、それには多くの問題がある、と分析している。要旨は以下の通り。

(RobGreene/gettyimages)

 米国支配の終わりは近い。問題は米国に安全を依存してきた欧州と東アジアの主要同盟国がどう反応するかだ。

 欧州の指導者は急遽会合を開催し勇敢に語った。カッラス欧州連合(EU)外相は、自由世界は新たな指導者を必要としており、それは我々次第だとXに投稿。英国のスターマー首相はウクライナでの公正な停戦実現のため核兵器国仏と協働すると約した。注目はドイツの次期首相と目されるメルツが、欧州は米国から独立すべきだと発言したことだ。

 トランプの同盟国裏切り、ウクライナ侮辱、権威主義者受容が、欧州と東アジアの民主主義国を新たな同盟形成に導けばベストだ。新秩序形成は必須だが障害もある。

 EUは軍事勢力ではなく英仏主導の有志連合は米国を代替できない。欧州諸国が北大西洋条約機構(NATO)に代わる軍事同盟を作るとしても長い年月が必要でドイツの指導力無しには成功しないだろう。

 2011年にポーランドの外相はベルリンで、ドイツの力よりドイツが行動しないことを恐れる、と語った。ナチ占領で傷ついた欧州諸国国民の多くはこれに同意するが、過去に欧州の大部分と自身を崩壊させた軍事力再来に未だに神経質な多くのドイツ人は同意しないだろう。先の総選挙ではトランプとプーチンに同情的で反ウクライナ支援の極右ドイツのための選択肢(AfD)が第2位だった。

 東・東南アジアでは一層問題山積だ。米国のアジア同盟国に核兵器国はない。中国支配から防衛するNATO的枠組みもない。

 米国の最も裕福な同盟国日本は米国に頼り切りで、核を持つ北朝鮮専制体制の脅威に晒されている韓国も同様だ。中国の敵対行動に対処している東南アジア諸国にも米国の支援は必須だ。

 そして、米国と公式な安全保障関係が無い台湾がある。トランプがプーチンとの取引でウクライナを犠牲にする用意があるなら、習近平との商売のため台湾を差し出す可能性は否定できない。

 もし米国支配が終わるなら中国を止める唯一の手はアジア版NATO創設だ。韓国、台湾、インドネシア、マレーシア、フィリピンの民主主義国に加え、半民主主義国であるシンガポール、タイ、権威主義国のベトナムでさえ包含するものだ。

 しかし欧州と同じ問題がある。このような多様な同盟を主導できるのは日本だけだが、アジアの多くの人々は第二次世界大戦時の酷い行為を認めない保守政党が長年支配する日本の主導を警戒し、殆どの日本人は自分を信頼していない。

 米国支配体制はいずれ終わらざるを得ない。多くの裕福な国が自国の安全を一つの超大国に依存するのは元々健全で持続可能ではない。しかし終焉のタイミングと形は最悪だ。欧州とアジアの民主主義国が露中イラン北朝鮮という権威主義国同盟に対応する正にその時に、守護者が支援引揚げを脅し、防衛再構築の時間はない。

 米国の同盟国がパニックし他の大国に保護を求めることもあり得る。韓国と東南アジアは中国を、英国は米国を頼るかもしれないが、独、仏はロシアを頼るだろう。取り残された日本は広島以来の核兵器アレルギーを克服するかもしれない。

 欧州は何とか対応し、米国はアジアから撤退しないかもしれないが、希望的観測を持つべきではない。欧州とアジアの民主主義国が権威主義国への唯一の防波堤であり、政治的自由を守る責任は過去それを破壊した独・日が負っている。