<台湾はアメリカの「駒」じゃない!>トランプ2.0の「ファクトシート」に公開されたアメリカの対中認識とは?

2025.03.13 Wedge ONLINE

 2月21日のTaipei Times社説‘Taiwan must be a ‘chess player’’は、台湾の有する半導体を中心とする技術力と台湾の持つ地政学的重要性からみて、台湾は「チェスのプレイヤー」であるべきであり、単なる「チェスの駒」であってはならない、と主張している。要旨は次の通り。

台湾の頼清徳総統は国際情勢におけるプレーヤーになるのか(Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)

 米国務省の最新の米台関係ファクトシートは、「中台間の相違が強制ではなく、平和的手段により両岸の人々に受け入れられる形で解消されることを期待する」と繰り返す一方、「我々は台湾の独立を支持しない」という文言が削除された。

 これは、台湾の主権は中国にあるとする中国の誤った主張を否定するもので、より厳しい対中姿勢を示している。

 また最新版は、台湾の国際関与についてもより強く支持することを示唆している。

 前回のファクトシートは、「国家であることを加入条件としない国際機関への台湾の加入を引き続き支持する」としていたが、最新版は加入条件には言及せず、「可能な場合は加入も含めて台湾の国際機関への意味ある参加を支持する」としている。

 同時に国務省はファクトシートに、「中国は中国共産党の目的を世界的に達成し、米国およびその同盟国やパートナー国を犠牲にして中国の利益を推進する手段として、国連や種々の地域フォーラム等の国際機関を操り、内部から崩壊させようとしている」という文言を付け加えた。

 またファクトシートは、米国は「中国の侵害を阻止し、中国の不公正な貿易政策と闘い、中国の悪意あるサイバー活動に対抗し、中国によるフェンタニル前駆体の世界的な不法取引を終わらせ、中国による国際機関の操作を減らし、中国内外における中国の人権侵害について中国の説明責任を促進すること」に努めるとしている。

 つまり、改訂されたファクトシートは、トランプ政権が中国を米国のグローバルな利益に対する最大の脅威と見ていることを示している。

 ヘグセス国防長官は、ウクライナ戦争終結のための北大西洋条約機構(NATO)の会合で、「中国を阻止するには、米国は太平洋の同盟国とその能力に投資するのが地理的に合理的だ。米政府はもはや欧州の安全保障に主たる力点は置いていない」などと述べた。

 トランプが新たな関税――台湾の半導体にも課すと脅している――によって世界中で懸念と外交的緊張を引き起こす一方、米国務省は新たなファクトシートの中で台湾を「高度に進んだ経済、グローバルな製造サプライチェーンの重要部分」と位置づけ、テクノロジー・プロジェクトにおける米台協力を強調する文言も付け加えている。ここからは、米台パートナーシップを容認・支持する姿勢が窺える。

 頼清徳総統は台湾の自衛力を高めるべく国防費を国内総生産(GDP)の3%に引き上げると発表、さらに、米国や同志国と協力して「非共産主義」サプライチェーンを築き、グローバルな安全保障と繁栄に貢献すると訴えた。

 テクノロジー力を有し、地理的に重要な第一列島線に位置する台湾は、「チェスの駒ではなく、プレイヤーになる」よう努めなければならない。

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注目すべき「ファクトシート」の変化

 台湾では米国が中国との対立のために、台湾を「駒」として利用するだけで、そのうち台湾を見捨てるのではないか、との「疑米論」が根強く存在する。これには、就任前のトランプ大統領の発言が強く影響しているようだ。同人は「台湾は我々の半導体ビジネスを奪った」、「台湾はアメリカに防衛費を支払うべきだ」と台湾について消極的発言を行った。