
かつて小誌で連載し、好評を博した「天才たちの雑談」が2023年2月号以来、約2年ぶりにアンコールとして復活! SFで描かれたような世界は実現するのか。様々な分野の「天才」たちが最新技術やアイデアからその可能性を?雑談?した。
構成・編集部(梶田美有)
撮影・さとうわたる
瀧口 今回は、これまでのシリーズで人気の高かった「SF」をテーマにして、「あのSFは実現するのか」という内容でお送りします。最新の研究や、先生方の発想から、「この設定はこういう形では実現しそう」「これは無理そう」という観点でお話を伺いたいと思います。
加藤 いいですね。SFは分かりやすいですし、意外とSFの世界を参考にしている方も多いと思いますからね。
瀧口 まずは、他人の「感覚」を体験できるテクノロジーは実現するのか、というテーマについて考えたいと思います。
暦本 1980年代の映画『ブレインストーム』では、人間の記憶や知覚を他人に伝達できるマシンが開発されます。記録した「感覚」は保管することもできるので、装置をつければ、あらゆる追体験が可能になる。物語では、開発者が心臓麻痺を起こした際、死ぬまでの感覚を自ら記録して、それを体験するとどうなるか、と話が進むのですが……。
今、VRで視覚や聴覚は再現できますが、例えば触覚などはまだ研究段階です。単純に「触った」という感覚であれば可能ですが、心臓麻痺のような、身体の中で「痛い」というような感覚を再現するのはまだ難しいという印象です。
野村 触覚以外にも嗅覚、「匂い」を追体験しようと思ったら、様々な物質が関係しているから再現が難しいですよね。「匂い」自体を伝えるのではなく、同じ匂いを「感じる」ようにする方が早いのではないでしょうか。