
2期目のドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名等略)は、1月20日の就任演説の中で「未来はわれわれのもので、この国の「黄金時代」が今始まったばかりだ」と言い、自分の政権下で米国は黄金時代を迎えると宣言した。では、どうやってトランプは米国の黄金時代を築くのかだろうか。そして、彼の黄金時代は米国民と世界および日本にとってどのような意味を持つのだろうか。
トランプ第2次政権が発足して僅か3週間しか経過していないが、トランプが主張する米国の黄金時代の築き方が早々に見えてきた。結論から述べると、それは「領土拡張」「国際支援縮小」並びに「関税偏重」の3つの政策に、彼の「デーィル(取引)のパワー」を組み合わせて、支持者を納得させる成果を引き出すというものだ。言うまでもないが、それは、これまで米国が築いてきた莫大な富や強力な軍事力、信頼に足るリーダーシップを背景にして初めて可能となる。
まず、「領土拡張」からみていこう。トランプは「グリーンランド購入」「パナマ運河の管轄権再取得」および「カナダ併合」の領土拡張リストに、新たに「ガザ地区所有」を加えた。
中でも、トランプはガザ地区に関しては、不動産開発業者の視点からみており、同地区を「中東のリビエラ」に変える構想を打ち出した。彼は以前からガザ地区について、「海に面している」「天候が良い」と言ってきており、最近では「解体現場」と呼び、「不動産」とまで言い切っている。
トランプは、ガザ地区を不動産価値の高い物件としてみているのだ。米国は黄金時代に州間幹線高速道路や学校等を建設していった。彼は、ガザ地区をそれ以上の美しいリゾート都市として描き出して見せ、自分の主導する和平を、イスラエルには宿敵ハマスが追放された世界として、トランプ一族や金銭および地位の利益体系の内にいる人々には巨額の富を生む機会として提示した。
その際、世界中が仰天したように、トランプは長期にわたってガザを「所有」すると述べた。それはイスラエルから直接引き継ぐという意味らしいが、トランプは、米国はガザ再建に金を出さず、再建を担うのは他の裕福な国であるという認識を示した。EU(欧州連合)や日本が「他の裕福な国」に含まれることに間違いない。トランプの要望に難色を示せば、関税が課せられるだろう。
また、トランプはパレスチナ人200万人には移住を強制し、その受け入れは周辺諸国、特にヨルダンやエジプトに任せ、米国は彼らを受け入れないと言う。米国への移民・難民を嫌うトランプ支持者に配慮したのだろう。ガザ地区からハマスを排除できれば、米国が米兵を駐留させる必要もない。派兵費用や米兵戦死の可能性もまぬかれ得る。
トランプがガザ地区の土地所有の発想で、米国の黄金時代の一部を築けると思っているとすれば、米国のリーダーシップを失うだろう。何よりも、パレスチナ人の「安寧と福祉」の実現は叶えられない。
トランプの「ガザ地区所有」発言を受けて、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、「トランプ大統領は米軍をガザ地区に派兵することを約束していない」、「米国はガザ地区再建の費用を出すつもりはない」と釈明に追われた。
その際、レビット報道官はパレスチナ人を他の場所に強制的に再定住させるというトランプの提案を別の言い方で表現して正当化した。レビットはこの「再定住」をガザの人々が安全な場所に移動し、平和に暮らす「人道的措置」に置き換えたのだ。