今年も中国のダブルイレブン(11月11日の独身の日、双11)が終わった。といっても、今年は過去最長、10月14日から11月11日まで1ヵ月以上にわたって行われたロングランのイベントだった。日本のメディアでも、中国の恒例行事として報道されてはいるが、かつてのようなお祭り騒ぎではなくなっており、トーンダウンは否めない。
それは中国でも同様で、11日にウェイボーをのぞいてみても、そのニュースが上位にランクインすることはなく、わざわざ「双十一」と検索しなければ報道を見つけられないほど、ひっそりとしたものだった。政府は今年、何度も景気刺激策を発表し、内需を拡大しようと躍起になっているが、その対策もむなしく、消費者の財布のひもは固いままで終わったようだ。
ダブルイレブンが終了した12日午前、筆者が再びウェイボーをのぞいてみると、ハッシュタグをつけた関連ワードやセンテンスがいくつかあった。それは「ダブルイレブンで何も買わなかった人」や「ダブルイレブン、もうすぐ終了」という文章だ。
「ダブルイレブンで何も買わなかった人」のページを開くと、「興味がない」や「買いたいけれどお金がない」などのコメントが多く見られた。また、「ダブルイレブン、もうすぐ終了」のページには、以下のようなおもしろい文章があった。
「ダブルイレブンが始まって、早くも十数年の歳月が過ぎた。以前、誰かと会うと、『ご飯食べた?』が中国人の挨拶の定番だったが、ダブルイレブンに熱狂した頃は『何を買った?』が合言葉になった。それほど待ち遠しく、1年に1度の楽しいイベントだった。しかし、月日が経ち、消費者は冷静になり、賢くなった。本当に必要なものだけを買うという選択をするようになったのだ」
この言葉が「ダブルイレブン終わった感」のすべてを象徴しているように感じるが、以前はダブルイレブンに合わせて、消費者は買いたいものを事前に物色しておき、11月11日の午前0時になるやいなや、パソコンやスマホのボタンを一斉にクリックするという人が多かった。それを「儀式」と呼ぶ人もいた。
だが、コロナ禍を挟み、そうした熱気を帯びた動作をする人は少なくなった。メーカーなど商品を提供する企業側は商品を潤沢に用意するし、ダブルイレブンに合わせた特別商品などの準備を着々と進めるようになったからだ。
企業側が躍起になればなるほど、次第に消費者は冷め、意識は変わっていった。コロナ禍の影響や不動産不況に伴う景気の悪化は著しく、若者だけでなく、就職難にあえいでいる中高年も続出。今年は政府が補助金を出して家電の買い替えを促進するように仕向け、各社もそのための特設サイトなどを設けたが、予想していたほど売上げは伸びていないようだ。
ダブルイレブンのシェアが全体の5割を超えるアリババ集団も、300億元(約6400億円)もの割引券を投入し、消費喚起を狙ったが、それもそれほど大きな効果を生まなかったようだ。むしろ、別の問題が浮上した。それは、一定の金額を購入すると、追加で割引がされる仕組みになっているため、いったん商品を購入したあと、すぐに返品するという消費者が続出したのだ。
そうしたやり方をするのは、アリババの割引券だけではない。商品に、ダブルイレブンに合わせた「特典」などおまけがついているものがあるが、その「特典」だけを入手し、肝心の商品を返品するという消費者が増えているのだ。
購入後、7日以内ならば返品可能というルールだからで、しかも返品の配送料は販売側の負担となる。企業によっては、返品率が6割7割、あるいはそれ以上ということもあり、社会問題化している。