【交付金倍増で地方創生は実現しない】必要な都市の機能分担と連携、本当の意味の活性化とは

2024.10.16 Wedge ONLINE

 今日、圏央道は埼玉・千葉・神奈川・茨城など各県の業務核都市等を結び、TXは埼玉・千葉・茨城の各都市を、上野東京ラインは埼玉・神奈川の各都市間を結ぶなどして東京大都市圏の機能連携の基盤を形成し、各都市の役割分担を支えている。今後、リニア中央新幹線が完成すると品川から橋本まで10分以内、品川から甲府まで20分内外で移動できるので「展都」はさらに進展する。

 埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長により構成される九都県市首脳会議は一貫してこの「展都」を推進してきた。一方、大阪圏、名古屋圏では業務核都市構想に対応する動きはなかった。

 地方創生といっても各地方都市が同じような機能をもつわけではない。各地方都市がそれぞれに特色ある発展をし、それぞれが互いに役割分担し、連携していくことが大切である。

 大阪圏、名古屋圏そしていわゆる札仙広福4都市以外にも都道府県域を越えて各広域都市圏の中心となりうる都市はある。各県の中でも県庁所在都市をはじめ中核的な都市がある。これらを中心として相互の有機的なネットワークが形成される政策を推進しないと地方創生は実現しない。

東京から分散すべき機能は何か

 皇居・国会・内閣を東京から移転するべきと主張する人は少ないだろう。国力を削ぐ結果となるのが明らかだからである。石破首相が唱える防災省ないしは防災庁は東京都区部以外の地域に設置した方がいいという議論はあるかもしれない。首都直下地震の発生可能性を考えるとなおさらである。

 同じ理由で、防衛省も東京都区部以外に立地すべきかもしれない。シビリアン・コントロールのために通信システムのさらなる充実は必要だが、かつて1923年の関東大震災のあと、首都移転を強く主張したのは当時の陸軍だった。これらは一例にすぎないが、政府行政機能の一部を東京区部から移転する議論は進めるべきではないか。

 文化庁は京都に移転したが、文部科学省も必ずしも東京都区部でないほうがいいという意見があるかもしれない。そもそも大学や専門学校がこれほど多く東京都区部に存在するのはなぜなのだろうか。

京都に移転した文化庁(アフロ)

 大学の教育・研究機能のうち、たとえば都市工学などは大都市中心部に立地したほうがよいだろう。研究上もそうだし、教授陣が大都市行政に協力する上でも便利だろう。

 社会人が働きながら学ぶ分野は都心に立地すべきだろう。しかし郊外や地方都市にあったほうが研究・教育環境がいい分野も多いのではないか。

 そもそも大学は固定資産税がゼロである。日本の安全保障上、重要産業とされるようになった農業でさえ軽減はされているものの、固定資産税を払っているのに大学はゼロである。

 だから地価の高い都心に立地する必要がない部門も負担感なく都心に立地する。学生募集には都心立地が有利だと言う大学人もいる。現状でよいのか、論点とすべきである。

大企業の郊外立地というメリット

 世界の情報革命を推進するアメリカのIT企業は大都市郊外の森林地帯や牧場地帯に立地するケースが多い。アップル、グーグルなど筆者が近年訪ねた企業はいずれも屋根付きスタジアムのような巨大かつ平面的なオフィスを郊外に構えている。

 従業員が互いにコミュニケーションを図り、ひらめきやアイデアを共有するには縦型のオフィスでは限界があるから体育館型にするのだと当事者の人たちから聞いた。日本でも同種の特性をもつ企業がさらに勃興してくれば大企業の郊外立地が実現するだろう。

 国土政策としても誘導が必要ではないか。大学もセットで移転すると相乗効果が期待できよう。

 移住促進策を講じて無理に人を移住させる前に、大都市中心部に立地する必要がない機能を分散させることに国家として取り組むほうが地方創生に役立つのではないか。合わせてそれぞれに特色ある機能をもつ地方都市のネットワークを形成するインフラに投資することこそ国の役割ではないか。