2024年7月24日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が、「カマラ・ハリスは共和党員を当惑させている。副大統領の強いスタートは共和党とトランプ陣営を驚かせたように見える」との社説を掲載している。
民主党はカマラ・ハリスの下に結集し新たな活力を得ている。他方、共和党は突然奇妙に後戻りしているように見える。米国は今トランプが敗北しうる大統領選挙をしている。
民主党員の安堵は明らかである。民主党の選挙運動にお金が流れ込んでいて、副大統領の戴冠に党内では小さな異論もない。プレスはすでに彼女を歴史的人物として持ち挙げている。このすべてが8月の民主党大会の前に起こっている。
ハリスは抜け目なく選挙運動を未来対過去、新世代対旧世代、59歳の自分と78歳のトランプの対比を示しつつ行っている。これらすべてが共和党を当惑させている。
彼らは逆効果にならない攻撃を見つけられないでいる。ハリスは「不適切な候補者」であると彼女を貶めることは、共和党が引き寄せようとしている女性と少数派の有権者を疎外することになる。
もう一つの不適切な攻撃はバイデンは再選を求めないのなら、今辞任すべきと主張することである。有権者は次の6カ月と次の4年間を区別できる。いずれにせよ、バイデンはいまは過去の人である。ハリスこそが負かすべき候補者である。
一部共和党員はハリスを「気味が悪い」と描くことで勝利し得ると考えている。しかしこれは候補者がその批判を裏付ける場合にのみ機能する。選挙運動では、彼女は2019年や副大統領の初期の時期よりよくやっている。
共和党の不器用さは、共和党は民主党が候補者入れ替えをするとは信じていなかったことを示唆する。しかし民主党主流は決定をした時には、その権力を維持するために断固として活動する。
ハリスはバイデン外交の実績を守らなければならないし、米軍最高司令官の役割に適任であることを証明しなければならない。世界が動乱にある中、トランプは強さの点で有利である。
ハリスの最大の脆弱性は彼女がカルフォルニアの進歩的政治の温床で育ったことである。彼女は全国的に穏健な有権者にアピ-ルしなければならなかったことは無い。
これは中部米国では不人気な多くの左翼的立場を州司法長官として、また上院議員としてとったことに見えている。彼女は政治的中道への目立つ政策的動きをすることが賢明であろう。
一つのワイルド・カードは討論での候補者の出来具合である。トランプはバイデンには楽勝だったが、ハリスはそう簡単ではない。
* * *
米国大統領選挙は、バイデンの撤退の後、トランプとカマラ・ハリスの間で争われることになったが、この社説は、第一に、この選挙がどちらかが勝つと決まっているようなものではないと指摘している。その指摘はその通りだろう。
バイデン撤退後、バイデンが指名したカマラ・ハリス副大統領で民主党がまとまるか、他の候補者が名乗りを上げないかを見ていたが、民主党は見事に、あっという間にまとまった。バイデンに代わる候補者をハリスを含め競争させるべし、ハリスに戴冠するのには反対という声もあったが、時間的余裕もなく、民主党がハリスでまとまったことは良かったと思われる。
今後については、ハリスがオンライン投票で大統領候補者に指名され、その後、副大統領候補が指名されるという段取りかと思われるが、ハリスの副大統領に誰が指名されるかが注目点である。米国大統領選挙はいわゆる激戦州での結果によって決まるので、そこでの勝利に貢献できる副大統領候補をハリスが選ぶことになるのではないか。その際に政治的中道の人を副大統領候補に選べば、この社説の指摘するカルフォルニアでのハリスの左翼的決定への共和党側からの攻撃への防御にも役立つと思われる。
トランプとハリスの討論会がどうなるかがワイルドカードとこの社説は言うが、ハリスは検事経験者であり、トランプの議論は簡単に反論できるのではないかと考えている。ハリスはトランプのような犯罪者を取り調べてきたと言っているが、討論会ではハリスが優位に立つと思われる。
最近まで米大統領選挙はほぼトランプで決まりと思っていたが、まったくそうではなくなり、ハリスがガラスの天井を突き破り、大統領になる可能性は十分にあると今は考えられる。今回の大統領選挙は、トランプもバイデンも嫌というダブル・ヘイタ―が多数を占めると言われてきたが、バイデン撤退、若いハリスの登場で、局面は変わりつつあるのではないか。