健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

それでも同窓会には出たほうがいい――認知症の専門医が勧める理由

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60歳を過ぎると同窓会が増える

60歳を過ぎたころから、同窓会や同期会の連絡が増えてきます。

というのも、定年間際になると自分の人生の先が見えてきて、仲間と競争する意欲もなくなり、素直な気持ちで接することができるようになるからです。

このように精神的な余裕ができることに加え、時間的にも余裕ができるため、昔を振り返る気持ちになってくるのでしょう。

そんなふうにして集まった同窓会には、20年ぶりとか30年ぶりに会う仲間もいるはずです。
中には、学校の成績が良く名門大学に行き、大手商社に入った友人もいるかもしれません。
昔だったら、劣等感や対抗心から普通に話すことができなかったかもしれませんが、定年してしまえばそんなことは関係ありません。
かつてのわだかまりを忘れて、一緒に過ごした青春時代を語り合いたくなるのです。

いつもと同じ話になっていく

懐かしく若い時代を語る、そういう会はいいものです。
ですが、同窓会も何度か繰り返し開催されるようになると、毎度同じ人しか集まらないようになります。
そして、そこで交わされる会話も、どうしても同じ話になってきます。

健康状態が良くない、仕事を失敗したというような仲間は、なかなか同窓会には現れません。同窓会に出てくるのは、どうしても同じメンバーです。
さらに、年齢とともに、現役で働いていた人も引退していきます。
そうして、新しい体験を聞くチャンスがなくなり、定年後の悠々自適な暮らしをするメンバーで、同じ昔話をするだけになってしまうのです。
つまり、話に新しい情報がなくなるのです。

同窓会に情報を仕入れに行っているわけではないので、新しい情報は必要ないかもしれませんが、せっかく人に会って話をしても、いつも同じ内容では、脳を刺激するという意味においては、あまり役立たなくなります。

脳への刺激についてはさておいたとしても、心地いい昔話だとしても、同じ話を繰り返ししていては、しだいに飽きてくるようになるはずです。

限られてくる話の内容、だんだん減ってくる参加者

同窓会に参加する人数も減っていき、やがて現役のときの半分にも満たなくなってくるはずです。それもしだいに減っていき、やはり同じメンバーばかりになってきます。

会話が脳に良いのは、新しい人に会って、多少の緊張を持ちながらするところが、脳には良いわけです。
しかし同じ仲間だけで会うのであれば、再会する新鮮味もなくなってきて、自分の病気の話と若いときの懐かしい話に限られてきます。

70歳後半になってくると、さらに参加者が減ってきます。そして、友人に会うたびに、だれかが亡くなったというような話になるのです。
以前は懐かしい昔話であふれていた同窓会も、最後は、同じ話をするばかりでなく、健康の話だけになってしまうのです。

最近、私が同窓会に出ても、健康相談を受けることが多くなってしまいました。
そうなってくれば、同窓会に出てきても、時間の無駄のように思えてくるものです。
せっかく同窓会に参加しても、ネガティブな話ばかりでは意味がありません。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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