2つめの仕組みは、ブラザー制度です。
ブラザー制度とは、スキルが未熟な人に教育係をつける制度のことです。目新しくもない制度ですが、取り組めていない組織も多いです。
チーム内で仕事を教える人が、リーダーである自分しかいないとなると、部下育成は本当に大変になります。
ですので、部下が2人以上いるときは、ブラザーを決めましょう。
ブラザーになった部下は、仕事内容に教育係という役割を加えられたことになります。
このとき、部下2人のうち、ある仕事はAさんがブラザーでBさんが教わる立場、別の仕事はBさんがブラザーでAさんが教わる立場というように、仕事内容でブラザーと教わる立場を入れ替えるのも有効です。たとえば、2人とも新人だった場合は、AさんとBさんに対して、最初に覚えてもらう仕事を別にして、覚えた仕事をAさんとBさん同士で教え合うようにしてもいいでしょう。
このように、ブラザー制度は、教育係になってくれるということに大きな意味があります。
「教えることが最大の学びである」というように、ブラザーになった部下は、他の人に教えることを通して、大きな学びを得ます。ブラザー制度そのものが、教育係をも育てる仕組みにもなるのです。
では、肝心のブラザーは、どう決めるといいのでしょうか?
それは、先の「スキル習熟度一覧」を使えば簡単です。
◎になった人から選んで、そのスキルのブラザーになってもらいます。◎がいなかったら、まず○をつくり、その人にブラザーにチャレンジしてもらうことで、後輩に教えながら、自分自身も◎に育ってくれます。
3つめの仕組みは、テスト制度です。
これは、スキルが習熟したかどうかをテスト化することです。
スキル習熟度一覧を作ろうとすると、「議事録の作成」や「チラシ制作」「清掃」や「業績資料の作成」など、いろいろな仕事をリストアップすることになりますが、そのスキルを部下が本当に身につけたかどうかをテストで確認します。
テストの形式は、「実際にやらせて合格かどうかを決める」というだけで十分です。このテストに合格したら、スキル習熟度一覧の△が○に変わることになります。
また、この仕組みが有効になるのは、ブラザー制度とセットになったときです。テスト制度は、ブラザー制度とセットでおこなうように心がけてください。
そして、ブラザーの教育係とテストの試験官役は別の人がおこなうようにするのがコツです。
大事なところなので、もう一度言います。ブラザーは、テストの試験官役をしないでください。
テストがあることによって、ブラザーと教わる立場の人は、共通の目標を追いかける仕組みができあがります。
じつはテストがないと、ブラザー制度は「教える人」対「教わる人」という対立構造になりがちで、関係性がいびつになってしまうのです。テスト制度の存在が、この両者を1つのチームにするのです。
さらに、ブラザー役とテスト役を分けることで、試験官は、テストの場面で、堂々とダメ出しをおこなうことができるようになります。「ここが足りない」「もっとこうしてほしい」と伝え、テストの再挑戦日を決めれば、その目標に向かってブラザーと一緒に頑張ってもらうことができます。
つまり、あえてテストという場を設けることで、部下にダメ出しをしても、モチベーションを落とすことがなく仕事に取り組んでくれるようになるのです。