部下を叱れない上司が増えています。
あなたは、部下を叱ることができていますか?
ここで言う「叱る」とは、部下のよくない行動を指摘して改善を促す行為です。
部下は未熟な面が多いものなので、叱らなくてはならない瞬間は必然的に訪れます。
そんなとき、上司が叱らずにその状態を放置していては、部下の成長が遅くなるばかりか、顧客からのクレームが出たり、会社にとって重大な損失を与えてしまったり、場合によっては部下に一生残る傷を負わせたりする可能性すらあります。
ですから、大事な場面で部下を叱れないのは、「部下の育成を放棄した怠慢だ」「部下への愛情不足だ」と指摘されてもおかしくありません。
相手に課題を伝えるのは、上司にとって重要な役割なのです。
しかし、そんな状況でも「叱れない上司」が増えています。
これは、上司自身が「叱る」という行為に心理的な抵抗を感じたり、叱ることで部下との関係性の悪化を恐れたりして、見て見ぬふりや、言えずにイライラして態度で伝えようとするなどしてしまうことが原因の一端といえます。そして、この「叱れないことのストレス」は、実は相当なものです。
そんな現代の上司の背景を踏まえ、今回は「叱れない上司が叱らなくても部下を育成する方法」をお伝えします。
叱らずに部下を育成する方法をお伝えする前に、よくやってしまう「よくない叱り方」と対策を紹介します。
これを理解すると、「正しい部下の育成方法」がより深く理解できるはずです。
<叱る際の悪い例>
① 「ダメな理由」を言わずに叱る
② 「行動」ではなく「マインド」を否定する
③ 「何度言ったらわかるんだ」と叱る
④ 「相手の成長」よりも「自分の怒りをぶつけたいだけ」になっている
では、事例としてわかりやすい「遅刻」をケースに1つずつ見ていきましょう。
① 「ダメな理由」を言わずに叱る
叱る側は、「当たり前だと思っていること」ほど、実はダメな理由を省いてしまいます。遅刻がダメなのは当たり前のことですから、いちいち理由をつけないことが多いのですが、それが第一の問題です。
部下は、あなたが思っているほど遅刻を問題だと思っていないかもしれません。時間に遅れることによってどのくらい迷惑がかかっているのか、部下本人の評価がどう下がるのか、今後の仕事にどういう影響があるのか。こうしたことをあえて説明をしてみると、認識のズレを修正できます。
② 「行動」ではなく「マインド」を否定する
遅刻は時間に遅れたことが問題なのであって、時間に間に合うように「行動」を変えてもらえればいいのですが、ついつい、「遅刻をするという意識の低さ」「考え方の甘さ」といったマインドに焦点が当たりがちです。「遅刻してもいいと思っているんだろう?」「やる気あるの?」と、ついついマインドを責めてしまうのです。
しかし、人はマインドを否定されると、強い反発を覚えます。誰も遅刻をしようとしてする人はいません。「遅刻は悪いことだと理解してくれていると思うけど、遅れたらダメだ」というように、マインドは肯定し、行動だけを改善してもらう方が、ムダな反発を生みません。マインドは否定しないことが重要です。
③ 「何度言ったらわかるんだ」と叱る
「何度言ったらわかるんだ」というのは、何度指摘しても相手の問題行動が改善しないと、つい言ってしまうセリフです。これは、気付かないうちに、部下ができないのは「覚えの悪い部下のせいだ」と責任を相手に押し付けてしまっている状態です。
オレはちゃんと教えている、オレは悪くない、という気持ちが漏れてしまっているのです。もちろん覚えの悪い部下もいるでしょうが、人には得意分野と苦手分野があるので、できるまで何度でもいう覚悟や度量が必要です。
④ 「相手の成長」よりも「自分の怒りをぶつけたいだけ」になっている
いざ叱るとなった際、自分の心に目を向けると、「怒り」が湧いていませんか? 部下の行動に対して、「どうしてそんなことをするんだ?」とか、「何度言ったらできるようになるんだ?」とイラつき、怒りが湧いているとしたら要注意です。
この場合の怒りというのは、「自分の思い通りにしたい」という感情ではないでしょうか。怒りが先に立つと、部下は、自分の成長を願って注意してくれているとは思いません。
実際、怒りをぶつけられた部下は、行動を直そうとする前に、自分を守ろうとします。
「言い訳」をするのは序の口で、だんだんと無口になり、最後には聞き流してやり過ごそうとし始めます。
何度叱っても無反応だったり、手応えが感じられないとしたら、部下にスルーされている可能性が高いです。怒りに頼らない叱り方をする必要があります。
このように「よくない叱り方」は、どれもついやってしまうものばかりではないでしょうか。
注意・喚起できないのも問題ですが、叱る方法がよくないのも問題です。
では実際に、どのようにしたらいいのかを見ていきましょう。
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