
質問力の重要性はわかっても、質問がうまい人は少ないのが現状です。
具体的に、上手な質問と下手な質問の違いを見ていきましょう。
① 下手な質問…「ネガティブ質問」
下手な質問の代表は、「否定質問」や「過去質問」といった「ネガティブ質問」です。
否定質問とは、質問の中に「ない」という否定語が入っているもので、過去質問とは、過去に起こったことに対する質問です。どちらも得てして「なんで」や「どうして」とセットで使われます。
・なんでできないの? どうしてやらないの?(否定質問)
・なんでそんなことしたの?(過去質問)
・どうしてやらなかったの?(否定&過去質問)
ネガティブ質問をされた部下は、「責められている」と感じ、自分を守ろうとして「言い訳」をしたり、「謝罪」によってその場を収めようとします。いわば部下の「防御本能」を引き出してしまい、仕事に向かうエネルギーを奪ってしまうのです。
② 上手な質問…「ポジティブ質問」&「具体化質問」
上手な質問の代表は、「肯定質問」や「未来質問」といった「ポジティブ質問」と、具体的にどうしたらよいかを聞く「具体化質問」です。
どちらも、「なんで」ではなく、「どうしたら」「どうすれば」とセットになることが多い質問です。
・どうしたらいいと思う?(肯定質問)
・どうすればできるようになる?(肯定&未来質問)
・できたらどうなる?(肯定&未来質問)
・具体的にはどうしたらいいかな?(具体化質問&肯定質問)
事例で理解した方が体得しやすいので、ケーススタディをやってみましょう。
「やろうと思っているのにできていないこと」をテーマにすると、上手下手が顕著に現れます。
ケース①
「毎日、出社後に新聞を読む約束をしたのに読んでいない」について、「ネガティブ質問」だけで応対してみてください。
上司:「読む約束したのに、なんで読んでないの?(否定質問)」
部下:「すみません、読む時間がなくて(言い訳)」
上司:「読む約束したよね? なんで読む時間が取れなかったの?(否定&過去質問)」
部下:「読もうとは思ってたんですけど、朝起きれなくて(言い訳)」
上司:「どうして朝起きれないの?(否定質問)」
部下:「自分の意思が弱いんだと思います。すみません(謝罪)」
このように、否定と過去の質問を重ねても、自分を守るための言い訳と謝罪で終わってしまいます。
ケース②
「毎日、出社後に新聞を読む約束をしたのに読んでいない」について、「ポジティブ質問」と「具体化質問」だけで応対してみてください。
上司:「どうすれば読めるようになるかな?(肯定&未来質問)」
部下:「朝少し早く起きれば読む時間ができます」
上司:「具体的には何分早く起きればいいの?(具体化質問)
部下:「15分あれば読めます」
上司:「どうすれば15分早く起きれる?(肯定&未来質問)」
部下:「最近寝る時間が不規則で遅くなりがちなので、決まった時間に寝るようにすれば起きられると思います」
上司:「新聞が読めたらどうなるかな?(未来質問)」
部下:「仕事の視野が広がって、いい影響が出ると思います」
非常に簡単な例ですが、言い訳と謝罪を聞くことに意味はありません。
ポジティブ質問を訓練すべきです。
日々の仕事の中で、部下にもっと関心を持ってほしい、考えてほしい場面はありませんか?
例えば会議。
参加者がみな無関心で何も考えていない会議を開いて、「この会議、意味ないな」とみんなが感じているような状態なら、質問を見直すべきです。
多くの業績会議が、報告の「伝達」と「指示」出し、「言い訳」と「謝罪」の場になってしまっています。
これらは全て、質問力によって変えることができます。
会議というのは本来、業績の未達を謝罪して終わりではなく、これからどうして行くか提案する場であるべきです。
そのためには、以下のような質問が有効です。
・先月の業績がいくらだかわかりますか?
・どうしたら達成できたと思いますか?
・来月はどうしたら達成できると思いますか?
・具体的には何をすべきでしょうか?
・その取り組みが徹底できたらどうなりますか?
こういった質問を毎回投げかけられると、部下は自分で考えるようになります。
さらに上級編としては、このような質問を会議の「前」にしておいて、会議の場では、未来への提案をプレゼンしてもらうようにすると、非常に意味のある会議になります。
大人数が集まる会議では、その場で考えさせるのは非効率になりがちです。会議前に質問を与えて部下に考えさせておけば、会議は提案を発表する場となり、周囲の人にも非常に頼もしい部下だと感じてもらえます。
もっと関心を持ってほしいこと、もっと考えてほしいことを質問に変える。
たったそれだけのことで、部下は見違えるほど成長するのです。
次回に続く