あなたの部下は、何でも自分で考えて行動する「主体的」な人ですか?
仕事を任せる際、部下が主体的かどうかは重要です。
任された仕事の意味を自分なりに解釈し、どうすればうまくいくかを自ら考え、工夫を凝らし、多少の壁なら乗り越えて成果を出す、そういうたくましさがほしいものです。
ところが多くの場合、以下のようなことが起こります。
・ちょっと考えたらわかるようなことが、わからない。
・調べたらわかることを質問して、自分で答えを見つけようとしない。
・何度教えても、「また聞けばいい」と思って覚えない。
・まさかと思うようなことにつまずき、仕事が止まる。
・止まった仕事をそのまま放置して、平気でいる。
このような状態だと、仕事を任せる方も大変です。
考えない部下は、全ての答えを与えなければ動きません。
「1を聞いて10を知る」といいますが、それは夢のまた夢。
「10を聞いて1動く」の毎日にうんざりすることでしょう。
では、どうすれば、部下は主体的に、かつ自分で考えて行動してくれるようになるのでしょうか?
それには、そもそも「主体的」とはどういう状態なのかを理解する必要があります。
難しく考えることはありません。実にシンプルに定義できます。
それは、「問いのレベル」です。
「部下の主体性」は「問いのレベル」で決まります。
自分の周りにいる主体的な人を思い浮かべてください。
その人は、必ず「問い」を持っているはずです。
・この仕事がもっとうまく行くためにはどうしたらいいか?
・どうすればこの問題を解決できるか?
・どうすればもっと生産性が上がるか?
・どうすればもっと価値を高めることができるか?
このような問いがある状態が「主体的」なのです。
主体的でない人には、問いがありません。
ただ作業をこなす、仕事を終わらせることにだけ着目し、「どうすれば?」「なぜ?」といった問いがないので、説明しても耳に入らず、覚えないのです。
逆に言えば、常に「問い」がある状態にできれば、部下を主体的な人に変革させることができます。
そんな部下の「問いのレベル」は、どうしたら高まるのでしょうか?
その鍵は、「上司の質問力」にあります。
あなたは、「質問」の目的を何だと捉えていますか?
「質問」は、「自分の知らないことをきく」ために行うのが普通です。
東京駅までの行き方を知らないから、「東京駅はどこですか?」と質問するわけです。
しかし、任せ上手のリーダーは、全く別の目的で質問をしています。
「自分の知らないこと」ではなく、むしろ「知っていること」を質問します。
なぜなら、質問には以下の2つの機能があるからです。
① 相手の関心を高める
② 相手に考えさせる
① 相手の関心を高める
人は質問されると「関心」が高まります。「先月の売上は〇〇円でした」と「伝達」する場面を、「先月の売上はいくらだったと思う?」と質問に変えるだけで、グッと部下の関心が高まるのです。
テレビ番組はこの機能を多用していて、「果たしてタレントの〇〇は激辛チャーハンを食べ切ることができるのか!?」などとあおります。
タレントがチャーハンを食べ切れるかどうかは、視聴者にとって本来どうでもいいことのはずなのに、質問によって関心を高められてしまい、ついついチャンネルを変えられずに観入ってしまうのです。
② 相手に考えさせる
質問のもう1つの役割が、「相手に考えさせる」です。
人は質問されると、つい「考えてしまう」生き物です。
「この資料はここが問題だね」と指摘するよりも、「この資料が10倍よくなる方法があるんだけど、なんだと思う?」と質問されると、部下は資料の改善点を考えるようになります。
日常生活でも、「今日の晩ご飯は何がいいかな?」と質問されれば、今日の晩ご飯を考えてしまいます。「将来の夢は何ですか?」と質問されれば将来の夢を考えてしまいます。
つまり、上司であるあなたは、部下に考えてほしい質問をすることで、部下の問いのレベルを上げることができるわけです。
任せ下手な上司は、「質問」を使わず「伝達」や「指示」をしてしまいます。
大切な出来事を「伝達」し、これをやって、あれをやってと細かく「指示」を出すので、部下の関心を引き出せず、考えさせる問いを与えることもできず、「部下が考えて動いてくれない」と嘆くことになります。
あえて、「知っていること」を質問する。
「伝達」の前に質問を入れて関心を高める。
「指示」を質問に変えて考えさせる。
これだけで、部下は見違えるほど考えて動いてくれるようになります。