私は対面では上手く説明できないという自覚があるので、一つひとつの仕事に対しての「事前準備」を徹底しています。準備不足だと不安で眠れないというのもありますが、瞬発力で劣るぶん、準備でカバーしようとするクセがついているのです。
これは私のようなコミュ障に限らず、多くの社会人にとって使える技術だと思います。どんなにコミュ力がある人でも、緊張していつもの力が発揮できず、あたふたしてしまうことはあるでしょう。そうした際に助けになってくれるのが、「事前準備」なのです。
私の本業であるエンジニアの仕事の話になりますが、私はシステムの仕様を話し合うような打ち合わせの前に、デモアプリまで作ります。
少し専門的な話をすると、Webアプリだったら、パワポに画面イメージを描くよりはブラウザで表示できる画面モックを作る、画面モックよりは実際にDBに繋げて動かせるデモアプリを作る、というほうがより望ましいみたいな感じです。
バッチのこの部分をこういうアーキテクチャに置き換えたい、と言われたら、サクッと同じ構造の簡単なバッチを一部だけ作って「作ってみたらこんな感じでしたー」って持って行ったりします。
もちろん、デモであっても一からアプリやシステムを作るのは手間だし大変なので、毎回はできません。案件やその時の持ち時間の有無によって、どのレベルまでやるかはマチマチです。それでも、できる限りの手間と時間を「モノづくり」に投入します。お客さんに言われなくても、です。
なぜ、そこまでするのかというと――形のある「モノ」を作ることができるのは、それだけでとてつもなく強力なカードとして機能するからです。
「システム」というのは、オーダー時には実体がありません。そうしたよくわからないものを作るのですから、オーダーしているお客さん自身、どんな機能が欲しいのか具体的にイメージできていないことが多々あります。
それにもかかわらず私の業界では、事前に了承をとってからじゃないと何も作り始めないことが普通です。
まぁ金額が大きく、ぱぱっと完成するものでもないので、当然契約書も必要なんですが……それにしてもちょっと手続きが面倒くさすぎるな、と感じる時があります。
だから私は、とりあえずお客さんが喜んでくれそうなものをさっとお出しする、気の利く板前さんのような存在であろうと、常日頃から思っているわけです。
まずは食べてもらって、それからお客さんに感想を聞いて、差分をアップデートしていく形です。
「言葉」でのコミュニケーションが苦手なぶん、「実物」を通すことで言葉以上に濃いコミュニケーションをとっていくのです。
モノを用意したほうが濃い話ができるというのは、別の業種でも言えると思います。相手が何を求めているかを会話だけで聞きだすのは、コミュ力のある人でも難しいですが、目の前にモノがあれば、それに近いか遠いか、改善点はどこかなど具体的な話ができるのです。
ただし、事前準備を徹底するというのも限界があるし、準備してもうまくいかないことだってあります。
事前準備の話をえらく熱く語ってしまいましたが、そうは言っても時間がなくて準備できないとか、時間と労力がかかりすぎるとか、難しすぎて無理とか、準備しても打ち合わせや会議で失敗しちゃうとか、あると思います。
私も、休日潰して準備して臨んだ大切な会議で一言も発言できずに空気になって終わったり、まったく的外れな発言をして総スカンくらったり、状況を悪くするプロかよってこともいろいろやっちゃってます。
しかし、最終的には上司やお客さんには評価してもらうことが多いです。その場では活かすことができなくても次の反省点になったり、準備を頑張っていたことに気づいてくれる人がいたりするものです。
最後にまとめておきます。
(1)事前準備を徹底する
(2)対面には手ぶらで臨まない。できれば形ある「モノ」を用意する
この二つを意識するだけで、ガチンコのコミュ障でも「できるヤツ」として扱われる可能性がグンと上がります。「仕事まかせたいヤツTOP3」へのランクインも夢ではありません。