巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……
ルーレットゲームの江戸時代版。力士の名前や番号が書かれた円盤を回して、お客であるちびっ子たちが吹き矢で狙う、というもの。命中した場所によって、いろいろな種類のお菓子がもらえる。例えば、横綱の名前が書かれている部分に命中すれば一番グレードの高いお菓子が手に入る、といった感じだ。“はずれ”の力士は「ンだよ、またこいつかよ!」とかいわれなき非難を受けたのだろう。かわいそうである。
さて、『ドッコイドッコイ』のシステムがご理解いただけたところで、悲しいお知らせである。実はこのゲーム、店のおやじによって自在にイカサマ可能なのだ。ルーレットの裏側から細いヒモが伸びており、おやじのさじ加減ひとつで円盤のタイミングをずらすことができるという寸法。これだから大人は汚い。もちろん、回転が急に弱まったりしては不自然だろうから、ちょうどいい勘どころでハズレを引かせて、「いや~惜しいねェ~。残念賞はおじさんの手づくりババロア(まずい)だぁ~」とかやっていたのだろう。けれども中には勘の鋭い子供もいただろうから、バレて吊るし上げを食らったおやじもいたことだろう。そんな時は逆ギレて煙にまけばオールオッケー、である。おやじの往生際の悪さも、アミューズメント要素の一部なのだ。
さらに、もうちょっとだけフォローさせてもらいたい。このテのゲームは騙し騙されの駆け引きもお楽しみの一部なのだから、これを大人の世界を垣間見るきっかけにしてもらえればいいのでは、と思う。がんばれ、江戸の子供たちよ。(なげやり)
(illustration:斉藤剛史)