2017シーズンまさかの「96敗」から、昨シーズンセリーグ2位という快進撃を見せたヤクルトスワローズ。ドン底のチームを見事立て直した小川監督は今年、「KEEP ON RISING~躍進~」をスローガンに掲げ、さらなる飛躍を目指す。本連載では2018年シーズンに続き、インタビュアーにスポーツライター長谷川晶一氏を迎え、「躍進」を成せる強いチームをつくるにはどのような采配と決断が必要なのか――小川監督へのタイムリーなインタビューを通じて組織づくりの裏側に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――いよいよ残り試合もあとわずかとなりました。今季の全日程が終了したわけではありませんが、昨年2位だったチームが、ここまで低迷してしまった要因をどのように考えていらっしゃいますか?
小川 2017年の「シーズン96敗」という悔しい時期を経て、一昨年秋のキャンプから、昨年春の沖縄キャンプまで、選手たちにはマスコミの言う「猛練習」を課しました。そして、監督である僕だけでなく、首脳陣も大きく変わったことも刺激となって2位になりました。でも、それは本当の力ではないし、首位・広島と競り合ったわけでもなく、簡単に言えば「まだ地力はついていなかった」というのが、実際のところでした。
――一昨年の屈辱を選手たちは生々しく記憶していたし、小川監督や宮本慎也ヘッドコーチを筆頭に、石井琢朗、河田雄祐、田畑一也各コーチの就任によって、「チームが生まれ変わろうとしている」という雰囲気は確かにありましたよね。
小川 そうした追い風ムードに乗ったこと、広島以外の5球団がそれぞれ決め手に欠いたこともあって、我々は2位になりました。けれども、広島相手には完敗を喫したし、他球団に対しても、圧倒的な力を見せつけて2位になったわけではありません。僕らも、選手たちも、その点はよく理解していたので、「油断をした」ということは絶対にありません。けれども、地力をつけるまでにはまだまだ至らなかったのが現実です。
――今季は、開幕3戦目で坂口智隆選手が死球による長期離脱があり、先発ローテの一角と目されていたスアレス投手や、クローザー・石山泰稚投手、あるいは西浦直亨選手など、故障者も相次ぎましたね。
小川 はい、確かにそうですね。でも、こんなことを言ってはいけないけれど、「故障者が出る」というのは、ある意味では想定内なんです。故障者がいないに越したことはないけれど、全力プレーを続けていけば故障する選手が出ることも、当然あります。ケガは想定内で臨まないとペナントレースは戦えません。
――では、今季ここまで苦しんだ理由、低迷の要因は何だとお考えですか?
小川 ひと言で言えば、先ほどから繰り返しているように「地力がない」ということだと思います。勝ち切るだけの本当の力は、まだまだないという……。これは技術だけではなく、故障者が多いということはフィジカルの面もあるし……。繰り返しになりますが、ケガというのは、ある程度は想定内です。ですから、故障者がいる中で、いかに戦っていくかということが大切になってきます。その中で成績を出していくのが、プロ野球の世界ですから。そう考えると、監督である自分の選手起用や采配というのも力が足らず、総合的に「チーム力」という面で見たら、やっぱり、「まだ力がなかった」、そう考えなければいけないと思っています。