――オープン戦期間中にスワレス、ブキャナンの離脱はありましたが、昨年同様、キャンプ期間においては目立った故障者が出ませんでした。これもまた猛練習によって、身体が強くなったという一面もあるのではないですか?
小川 そうですね。ただ、これには二つの考え方があると思うんです。一つは、猛練習によって身体が強くなってケガをしにくくなった。そういう一面もあると思います。そしてもう一つの面として、チーム内における競争意識が高まったことも大きいのかなと思っています。ケガをして出遅れる、二軍に落とされる、ポジションを奪われる、試合に出られなくなる……。その意識が、以前よりも強くなったと思いますね。それによって、万全のケアを心がけるようにもなったと思います。
――猛練習によって身体が強くなったこと、そして、フィジカルケアに対する意識が高まったこと。この二つが大きな故障者が少ない理由とお考えなんですね。
小川 そうですね。ケアに対する意識の高まりは、競争意識だけではなく、青木(宣親)の加入も大きかったと思います。試合に臨む際の青木の「トレーニング」に対する考え方、取り組み方、身体への意識というものが、若い選手にいい影響を与えているなというのは実感しますね。
――他球団のキャンプも取材したのですが、単に練習量の多さだけではなくヤクルトキャンプの活気や熱気は、ひいき目抜きに見ても群を抜いていたように思いました。数年前のキャンプと比べると、そこが大きく変わった気がします。
小川 やっぱり、キャンプにおいて「活気」というのはとても大切なものだと思っています。宮本慎也がヘッドコーチとしてチームに戻ってきて、その辺りは口を酸っぱくして何度も言っています。声を出すことによって気持ちが前に出るんです。普段から声を出していないと、とっさのときに声は出ません。「試合で声を出せばいいや」というものではないんです。活気を生み出すためにも、大きな声を出すというのはとても重要だと思いますね。
――昨年のキャンプは17年の「96敗」を受けて、死に物狂いでキャンプに取り組んでいました。そして、昨シーズンの2位を受けた今年のキャンプでも、気が緩んだり慢心したりする感じは受けませんでした。その辺りは、どのように気持ちを引き締めていたのですか?
小川 気の緩みというのは多少はあったのかもしれませんけど、そこはやはり宮本ヘッドがしっかりと練習後のミーティングで選手を集めて話をしていました。今、僕が意識しているのは練習のやり方にしても、取り組む姿勢にしても、これからのヤクルトスワローズの伝統を作りたいということなんです。
――ぜひ、詳しく教えてください。
小川 これからのヤクルトスワローズを考えたときに、年長者たちが後輩たちにしっかりとした道筋を残していくことが大切だと思っています。「去年2位になったから」とか、そういうことではなく、常にしっかりと野球に取り組む「ヤクルトらしさ」というものをチームに残していきたいんです。そういう思いを持って、我々首脳陣は選手たちと接しています。幸いにして、今年のキャンプでは気の緩みなどなく、みんなが真剣に練習に取り組んでくれたと思っています。