社員成長の決め手は、人事が9割

極めれば経営層にも昇り詰める「人事」という仕事

2024.08.28 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第31回

人事が目指すべきキャリア「3つの選択肢」

会社経営を成功させる鍵は、人事によって9割が決まります。人事担当者になったあなたは何をするべきでしょうか。そんなテーマでお届けしてきたこの連載ですが、今回で最終回。最後に「人事が目指すべきキャリア」についてお伝えしたいと思います。

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最初に目指すべき目標は、人事担当者として経験を積み、人事マネージャーとなり、人事部長に昇進することでしょう。マネージャーとは、小単位の組織を率いる、あるいは自己の専門性を活かしながら周囲を巻き込むレイヤー(階層)です。人事マネージャーに求められるのは、おもに次のような能力になります。

チームにおけるPDCAを管理し、メンバーのキャリアプランを明確にし、評価し、指摘し、育成し、社内の優秀な人材を見極める。ロジカルシンキング、コミュニケーション、プレゼンテーションなどのスキルを磨き、「人」の情報を収集し、社内の問題分析を行い、解決案を提示する。リスクや労働法規、就業規則をはじめとする各種人事規程、メンタルヘルス、ハラスメントの見識も深めることも必要になります。

人事部長に昇進するために重要なのは、5〜10年先を見据えた戦略策定です。通常、部長に求められるのは3〜5年先を見据えた中長期的視点ですが、「人」を扱う人事部門の責任者は、もっと先まで考える必要があります。組織運営を担い、経営や役員との交渉事も増え、制度一つ変えるにも高度な説得力や根回しが必要になります。

清濁併せ呑む度量の大きさ、慎重な判断力、経営や社員とのコミュニケーション、社内外の優秀な人材の発掘、決断力とその責任を負う覚悟…。人事部長は多くのものが求められますが、これらを身につければ、次の「3つの選択肢」が見えてきます。

(1)人事のプロとして会社を渡り歩く

人事が目指すべきキャリアの1つは、人事のプロとして複数の会社を渡り歩くことです。人事部長に昇進しても後進が育ってきたら道を譲らなくてはなりません。ですから人事の知識と経験を活かして、同じ領域で同じステージの会社を渡り歩くのです。

人事という領域はとても幅広いため、すべてを見渡せる人材をすぐに育成するのは難しく、人事部長を外から中途採用しようとする会社はたくさんあります。人事部門がない中小企業も多いので、人事の知見や経験が豊富な人材は常にニーズがあります。

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人事のスキルは汎用性が高いので、人事部長を経験した人なら、同じ企業ステージの、同じような状況の企業だったら、どのような会社の人事部門でも活躍できるでしょう。

ただ、企業の側から考えると、外部から人事部長を採用するのはリスクがあります。外から人事部長を採用すると「とにかく変えることで存在意義を発揮しようとする」ケースが多々あり、その改革が必ずしも成功するとは限りません。

研修や社内イベントなどの「おもしろ人事」だけなら失敗しても痛手は小さいのですが、等級制度・評価制度・給与制度など、企業人事の土台、根幹となる仕組みを安易に、根本的に変えて失敗すると致命的です。多数の社員が辞めたり、人間関係が悪化したり、企業への信頼が失われたり、業績が悪化することもあります。

ですから私は、基幹的な人事機能が備わっている企業であれば、内部の優秀な人材を人事マネージャーに抜擢し、経験を積ませることをおすすめしています。社内のことをよく知る現場経験の長い人材が人事マネージャーから人事部長になり、安定的に人事が運用されている会社は多くあります。

人事として転職をする場合は、自身の経験やスキルを活かして、その会社のプロパーの人事マネージャーを人事部長に育てることを目標にしましょう。育成に成功したら、また別の会社で人事マネージャーを育て、さまざまな企業の成長に貢献していくのです。人事の仕事をずっと続ける場合は、このような選択肢があります。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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