リーダーシップの身につけ方

リーダーに求められるものとは-12

2016.06.27 公式 リーダーシップの身につけ方 第18回

ポジティブな空気が職場ではとても重要

30 ムダな会議は即刻廃止する

私が社長就任前のザ・ボディショップは会議の多い会社でした。月に一度リーダー以上が50人近く集まり、6時間もかけている会議がありました。以前はその会議で社長が名指しで、延々と個人攻撃をしていたそうで、皆がとても憂鬱になる会議だったとのことです。

私が社長になってすぐに、売り上げが厳しい月がありました。私はこのとき、「今日はこの会議をやめて、みんなでお店を回ろう」と提案しました。本音は「会議なんかやっている場合じゃないだろう!」と言いたかったのです。
実際この会議を中止しても、業務には何の支障もありませんでした。6時間会議はそのまま廃止してしまいました。その会議ための資料づくりももちろん廃止しました。定例で実施しているからという理由だけで会議をするのは、百害あって一利なしです。
一度すべての会議を見直してみるべきだと思います。

31 会議や朝礼は「明るい話題」からはじめる

私は会議や朝礼は「いい話からはじめる」ようにしていました。
お客さまからこんなお礼状をいただいた。先週オープンした店では、開店前から200名のお客さまが並んでくださった。最近行ったレストランで、こんな素晴らしいサービスを受けた、などなど。
このような明るい話題は、会議や朝礼の出席者の気持ちを明るくします。これはアメリカのスターバックスで研修を受けたときに学んだことですが、日本でも取り入れてみようと思ってはじめました。

ある心理学の本を読んでいたら、次のような記述を見つけました。「意思決定するときに、ポジティブな気持ちで判断すると、そうではないときに比べて40%成功率が高まる」。これを読んで、私のやっていることは間違っていなかったと確信しました。もちろん会議は楽しい話題だけではありません。しかし、ポジティブな雰囲気の中で難問に取り組んだほうが、暗い雰囲気で考えるより、よい解決策が生み出せるはずです。

いい話のネタ探しは大変ですが、普段からネタを仕入れておくようにします。いつも会議の冒頭に「何かいい話ない?」と問いかけ、誰もなければ自分が用意したいい話を披露します。最初はなかなか皆から出てこないのですが、長く続けていると、皆いろいろな話を持ってきてくれるようになります。

トップの意思を現場に伝えることの大切さ

32 ラブレターのようにメッセージを発信する

同社での8年間の社長在任中に、私は全従業員に向けたマネジメントレターを書いていました。
私はできるだけお店を訪問して、直接お店のスタッフと話をしたいと思っていました。しかしザ・ボディショップは150、スターバックスは900以上のお店がありました。自分がお店のスタッフだったら、「社長は何を考えているのだろうか?」「自分たちはどこに立っていて、どこに向かおうとしているのか?」を知りたいだろうと思って、マネジメントレターを一所懸命書き続けました。

内容は、売り上げ目標や業績だけでなく、私がやろうと思っていること、みんなに考えてほしいこと、読んでほしい本、知ってほしい名言やエピソード、さらには、私が趣味でやっている草野球やゴルフの結果まで書きました。よいことも悪いことも、嫌なことも厳しいことも、できる限り包み隠さず書きました。

会社が取り組んでいる改革の過程をオープンにし、情報を共有することで、社員全員にその改革に参加してもらいたいという気持ちでした。私にとって、マネジメントレターは、遠くに住む恋人に送るラブレターのようなもの。距離が離れた数多くのお店で、同じミッションに向かって努力している仲間に、私の思いを直接伝えたかったのです。

同じ職場で働くチームのリーダーならば、メンバーに向かって直接メッセージを発することが可能です。リーダーの思いや必要な情報を繰り返し伝え、皆が同じ方向に向かって走れるように努力をするべきだと、私は思います。

(次回に続く)

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プロフィール

岩田松雄
岩田松雄

1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。同社にて幅広い業務を経験後、米国UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社役員を経て、株式会社アトラス(ゲーム会社)の代表取締役として、三期連続赤字の企業を再建。さらに株式会社タカラ常務取締役を経て株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の代表取締役に就任。店舗数を一気に増加させ、売上を67億円から約140億円に拡大。そしてスターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOとして「100年後も光輝くブランド」というコンセプトを掲げ、業績を急回復させ再成長させる。これらの功績が認められ、UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人の中から「100 Inspirational Alumni」
('92年卒業生ではただ一人)に選出される。
現在は株式会社リーダーシップ・コンサルティングの代表取締役CEOであり、次世代のリーダー育成に注力する傍らで、立教大学の特任教授として教鞭もとっている。主に「リーダーシップ」に関するテーマにてこれまで著書は30万部を超える『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』はじめ多数。「リーダーシップ」に関する日本の第一人者として日本のビジネス界を牽引する人物である。
HP: http://leadership.jpn.com
Facebook: https://www.facebook.com/Leadership.jpn?pnref=lhc

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