私が社長就任前のザ・ボディショップは会議の多い会社でした。月に一度リーダー以上が50人近く集まり、6時間もかけている会議がありました。以前はその会議で社長が名指しで、延々と個人攻撃をしていたそうで、皆がとても憂鬱になる会議だったとのことです。
私が社長になってすぐに、売り上げが厳しい月がありました。私はこのとき、「今日はこの会議をやめて、みんなでお店を回ろう」と提案しました。本音は「会議なんかやっている場合じゃないだろう!」と言いたかったのです。
実際この会議を中止しても、業務には何の支障もありませんでした。6時間会議はそのまま廃止してしまいました。その会議ための資料づくりももちろん廃止しました。定例で実施しているからという理由だけで会議をするのは、百害あって一利なしです。
一度すべての会議を見直してみるべきだと思います。
私は会議や朝礼は「いい話からはじめる」ようにしていました。
お客さまからこんなお礼状をいただいた。先週オープンした店では、開店前から200名のお客さまが並んでくださった。最近行ったレストランで、こんな素晴らしいサービスを受けた、などなど。
このような明るい話題は、会議や朝礼の出席者の気持ちを明るくします。これはアメリカのスターバックスで研修を受けたときに学んだことですが、日本でも取り入れてみようと思ってはじめました。
ある心理学の本を読んでいたら、次のような記述を見つけました。「意思決定するときに、ポジティブな気持ちで判断すると、そうではないときに比べて40%成功率が高まる」。これを読んで、私のやっていることは間違っていなかったと確信しました。もちろん会議は楽しい話題だけではありません。しかし、ポジティブな雰囲気の中で難問に取り組んだほうが、暗い雰囲気で考えるより、よい解決策が生み出せるはずです。
いい話のネタ探しは大変ですが、普段からネタを仕入れておくようにします。いつも会議の冒頭に「何かいい話ない?」と問いかけ、誰もなければ自分が用意したいい話を披露します。最初はなかなか皆から出てこないのですが、長く続けていると、皆いろいろな話を持ってきてくれるようになります。
同社での8年間の社長在任中に、私は全従業員に向けたマネジメントレターを書いていました。
私はできるだけお店を訪問して、直接お店のスタッフと話をしたいと思っていました。しかしザ・ボディショップは150、スターバックスは900以上のお店がありました。自分がお店のスタッフだったら、「社長は何を考えているのだろうか?」「自分たちはどこに立っていて、どこに向かおうとしているのか?」を知りたいだろうと思って、マネジメントレターを一所懸命書き続けました。
内容は、売り上げ目標や業績だけでなく、私がやろうと思っていること、みんなに考えてほしいこと、読んでほしい本、知ってほしい名言やエピソード、さらには、私が趣味でやっている草野球やゴルフの結果まで書きました。よいことも悪いことも、嫌なことも厳しいことも、できる限り包み隠さず書きました。
会社が取り組んでいる改革の過程をオープンにし、情報を共有することで、社員全員にその改革に参加してもらいたいという気持ちでした。私にとって、マネジメントレターは、遠くに住む恋人に送るラブレターのようなもの。距離が離れた数多くのお店で、同じミッションに向かって努力している仲間に、私の思いを直接伝えたかったのです。
同じ職場で働くチームのリーダーならば、メンバーに向かって直接メッセージを発することが可能です。リーダーの思いや必要な情報を繰り返し伝え、皆が同じ方向に向かって走れるように努力をするべきだと、私は思います。
(次回に続く)