リーダーシップの身につけ方

リーダーに求められるものとは-10

2016.05.23 公式 リーダーシップの身につけ方 第16回

チームが一丸となり、目標に向かう仕組みを作る

23. 人の痛みを知る人が、優れたリーダーになる

アトラスの社長演説で、カッコいい経営用語を並べたてても、社員の心には届かなかったことを反省した私は、ザ・ボディショップの社長就任演説では、「社長就任挨拶 七つのお願い」と題して、自分の気持ちを素直に次のように伝えました。

  1. 一緒に働ける縁を大切にしましょう。
  2. ともに人間として成長しましょう。
  3. 社長が交代しても、具体的な行動を起こさなければ何も変わらない。「一人ひとりが変革に参加する」気持ちで、会社をよくしていきましょう!
  4. 社長ではなく、お店を見て仕事をしよう。お店重視・小売の原点に立って仕事を振り返りましょう。
  5. 大切な友人を自宅に招く気持ちで接客しましょう。
  6. 創業の原点に戻り、バリューズを大切に。常にPDCAサイクルを仕事に取り込みましょう。
  7. ザ・ボディショップが目指すブランドに、すべての仕事が有機的につながるよう、細部にこだわりましょう。

何人かの女性社員は、涙を流しながら聞いてくれました。強い手応えを感じました。私が心から発した一所懸命な言葉が、会社を変えるきっかけになったのだと思います。

メンバーを教育することは、自分の成長につながる

26. 「ほめ上手」なリーダーになる

日本の職場では、ほめることが少ないような気がします。自身がほめられて発奮した経験のない上司は、ほめるのが下手です。

スターバックスには、ほめ合う文化が根づいていました。「GAB(Green Apron Book)カード」という仕組みがあり、誰かがよいことをしたと思ったときに、メッセージを書いてその人に渡すというものです。GABカードには、「何がよかったのか」を具体的に書くので、生のメッセージが相手に伝わります。

リーダーがスタッフをほめるときも、具体的な言葉を選び、「多少大げさかな」と思うくらいほめてあげるのがコツです。「成功すればほめてもらえる」という認識が本人だけでなく、職場全体に浸透し、信頼関係と笑顔を生み出します。何をほめるかによって、会社が何を大切しているかも、メッセージとして社員みんなに伝えることができます。
最初は簡単な課題を与え、うまくいったらほめる。そして、少しずつハードルを上げていけば、メンバーは確実に成長していきます。

27. 「教える」ことで、自らが学ぶ

スターバックスでは、社員、アルバイトを問わず、全てのパートナーが多くの時間の教育トレーニングを受講します。社長として入社した私も、アルバイトと一緒にこの研修を受けました。一週間は座学で、次の一週間は店舗での実地研修です。

私が意外に感じたのは、講師が教育担当者や店舗責任者ではなく、店で二番手、三番手のパートナーだったことです。正直、最初は「大丈夫かな」と思いました。しかし、後から、この研修は新入社員のためだけのものではなく、半分は「教える人を教育する」ためのものだということに気づきました。
教育担当に選ばれたパートナーは、教えるために必死に勉強します。質問があったときにしっかり答えられるように、猛勉強をして研修に臨みます。

実は、教える人のほうが、たくさん学んでいるのです。できる人が教えるのではなく、教えるからできるようになる。これは、リーダーにとっても絶好のヒントです。メンバーに教えることは、自分にとっても学びの場になるのです。

(次回に続く)

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プロフィール

岩田松雄
岩田松雄

1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。同社にて幅広い業務を経験後、米国UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社役員を経て、株式会社アトラス(ゲーム会社)の代表取締役として、三期連続赤字の企業を再建。さらに株式会社タカラ常務取締役を経て株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の代表取締役に就任。店舗数を一気に増加させ、売上を67億円から約140億円に拡大。そしてスターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOとして「100年後も光輝くブランド」というコンセプトを掲げ、業績を急回復させ再成長させる。これらの功績が認められ、UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人の中から「100 Inspirational Alumni」
('92年卒業生ではただ一人)に選出される。
現在は株式会社リーダーシップ・コンサルティングの代表取締役CEOであり、次世代のリーダー育成に注力する傍らで、立教大学の特任教授として教鞭もとっている。主に「リーダーシップ」に関するテーマにてこれまで著書は30万部を超える『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』はじめ多数。「リーダーシップ」に関する日本の第一人者として日本のビジネス界を牽引する人物である。
HP: http://leadership.jpn.com
Facebook: https://www.facebook.com/Leadership.jpn?pnref=lhc

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