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――要望をただ鵜呑みにすることなく、「満足」を提供する。
新井氏:それが私たち執事の仕事です。ただ、どこに満足を感じていただけるか、それは今までのご主人さまがそうであったように、千差万別で正解はありません。私たちのサーヴィスそのものにマニュアルがないのは、そのためです。私たちはサーヴィスのプロですが、お客さまの前では常に素人だと考えています。
また、お客さまに起こることは、すべて私ども執事の責任です。外国からいらしたご主人さまを成田空港から都内にお連れする場合などは、車の手配はもちろんのこと、必ずヘリコプターを用意しておきます。そうすれば、たとえ予期せぬ事故が起きて道路が大渋滞になっても、車からヘリに乗り換えていただくことで、大切な会議や商談に遅れることなく、また快適にお送りすることができます。想定外の事態を、万全の準備で迎えるのが、私どものサーヴィス哲学なんです。
こうした哲学は、一般の方々からも好評をいただき、現在は飲食業や接客サーヴィス業に向けに講演や研修も開催しています。また、『執事が教える至高のおもてなし』(きずな出版)や『執事が教える 相手の気持ちを察する技術』(KADOKAWA)『執事のダンドリ手帳』(単行本:クロスメディアパブリッシング/文庫版:三笠書房)など、書籍として出版し皆様にお届けしています。
これらは、私どもの社会への貢献だと考えております。培ったノウハウを言語化し、共有することで再現性が生まれます。私どものサーヴィス哲学は、もともと備わったものではありません。私自身も学んだように後天的なものであり、また相手の真意を汲み取る術を知っていれば誰にでもできるのです。
2020年のオリンピックを控え、外国からのお客さまをどうおもてなしするか話題になっていますが、こうした哲学を伝えることでサーヴィス業全体の底上げを図っていきたいと考えています。そして、お客さまだけでなく、広く世の中に貢献したい。これが今の私の想いです。