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児童書・童話 完結 ショートショート
僕がベッドに入って、なかなか眠れずにいると、お母さんは「眠れないときは、羊を数えなさい」と言いました。 「なんで羊を数えるの?」 「羊を数えるとよく眠れるからよ」 「なんで羊を数えるとよく眠れるの?」 「昔からそう決まっているのよ」 「誰が決めたの?羊が決めたの?」 お母さんは困ったような顔で、僕の顔を見つめています。僕は「質問ばっかりして悪かったかな」と思いましたが、気になるものは仕方がありません。気になったままでは、眠れないのです。お母さんは、しばらく考えた後、僕に言いました。 「羊を数えることに決めたのは人間なのよ」 「どうして羊に決めたの?」 「それはね。羊が英語で『シープ』、眠ることは英語で『スリープ』って言うからなのよ。ほら、シープとスリープって似ているでしょ?」 「シープ、スリープ、シープ、スリープ・・・本当だ!似ているね!」 「似ているでしょ?さぁこれでもうスッキリしたでしょう。もう寝なさい」 お母さんは、一仕事終えた後のようなホッとした表情を浮かべながら、僕に言いました。 「・・・でもさ、他の言葉じゃ駄目なのかな?」 僕の質問を聞いたお母さんの顔は、少しムッとしていました。だって、気になるものは仕方がありません。気になったままでは、眠れないのですから。 「他の言葉って?」 「スープとかどうかな?シープとスープは似ているでしょ?」 お母さんは、またしばらく考えた後、僕に言いました。 「確かに、シープとスープは似ているわね」 「でしょ?」 「でもね、スープは駄目なのよ」 「どうして?どうしてスープは駄目なの?」 「だって、スープは寝たままの状態では飲めないでしょ?スープを飲むためには、起きなければならないのよ。もしも寝たままの状態でスープを飲もうとしたら、ダラダラとこぼれてしまうわ。そんなのは嫌でしょ?」 僕は、寝たままの状態でスープを飲むことを想像しました。僕の口からは、まるでよだれのように、スープがダラダラとこぼれ落ちています。僕はなんだか、ゲッという気持ちになりました。 「うーん、お母さんの言う通り、寝たままスープを飲むのは無理そうだね」 「そうでしょ?さぁこれでとってもスッキリしたでしょう。もう今度こそ寝なさい」 「うん、お母さん、今度こそお休み・・・あ!明日の朝ごはんはスープにしてね。寝たままじゃなくて、起きたままスープを飲みたいから!」 お母さんは優しくうなずくと、ゆっくりと部屋から出ていきました。僕は、明日に食べるスープのことを考えながら、朝までぐっすりと眠ったのです。
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文字数 1,026 最終更新日 2020.11.04 登録日 2020.11.04
働く女性の一日を描きました。
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文字数 2,050 最終更新日 2020.07.13 登録日 2020.07.13
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