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17巻
17-2
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「おかえりなさい」
「おう」
シンたちに気づいて迎えてくれたティエラに返事をしながら、シュバイドにも手で挨拶をする。
バオムルタンも、おかえりとでも言うように小さく鳴いた。
ローメヌンでは、とくにこれといった変化はなかったようだ。
解放されたドゥーギンは、移動する際にローメヌンの上を通ったという。
バオムルタンはドゥーギンを見上げ、ドゥーギンもまたバオムルタンを見下ろしながら飛び去っていったらしい。
「これでよかったか?」
なんとなくシンが聞くと、バオムルタンは大きく一声鳴いて、顔の先端をシンにこすりつけた。
そんな仕草を見ると、さっきの一鳴きが肯定の意味に思えてくる。おそらくそれで合っているはずだ。
「ところでハイドロとオキシジェンに少し話があるんだ。あ、バルたんにも聞いてもらったほうがいいか」
ここに居つくなら、バオムルタンの縄張りの中に棲むということになる。
バオムルタンのほうは温厚なので、ガルマージたちが攻撃的な行動をしないかぎり、自分から狩りに行くことはないだろう。
シンはそう思ったが、知らないで遭遇してトラブルになっては困る。
ガルマージたちのことをハイドロたちに話すとほうほう、ふむふむと興味深そうにうなずいていた。
理解しているのか2人の真似なのか、バオムルタンも首を縦に振っている。
「すぐに捕獲しにいきましょう。ドゥーギンの発生させたエリアに湧いた個体なんてずいぶんと珍しい。せめて一匹確保したいです」
「同感だ。研究のし甲斐がある」
ふっふっふと含み笑いが聞こえてきそうな笑みを浮かべて、2人は準備に取り掛かった。
ネットや疑似餌などの捕獲用アイテムをアイテムボックスに放り込み、さらに調教師のジョブと能力を一時的に得ることができる装備を身につける。
これは、調教師ではないプレイヤーがペットとしてモンスターを捕まえたいときに使う装備だ。
時間をかければ、プレイヤーなら調教師のジョブを得ることは難しくない。ただ、他に時間を使いたいというプレイヤーは多かった。
一部調教師のスキルも解禁されるので、調教師のジョブの体験版のような用途としても使用される。
「さて、行こうか!」
ハイドロの声に急かされて、シンはガルマージたちのいる場所へ一行を案内する。オキシジェンとハイドロの感知能力では、ガルマージたちのいる場所は範囲外なのだ。
マップ上の反応を確認するととくに動いていないようだったので、手間もなく到着した。
シンたちが接近しているのはわかっていたようで、ガルマージたちは警戒した様子で周囲を窺っている。
「ふむ、少し弱っているね。好都合好都合」
捕獲用ネットを構えて笑うハイドロは危ない人にしか見えなかった。オキシジェンも声に出していないだけで同じような様子である。
バオムルタンの姿を見れば能力差から見ても逃げ出しそうなものだが、そうはならなかった。尻尾を足の間に入れて震えているので襲ってくることはなさそうだ。
「これはネットを使うまでもないかな? ほら、食事だよ」
オキシジェンがモンスターを仲間にしやすくする疑似餌を差し出す。しかし、ガルマージは震えるばかりで反応は芳しくない。
「くぅ、シンに怯えてる」
「俺?」
ユズハに指摘されて驚くシン。モンスター同士、バオムルタンに怯えているのだと思っていたのだ。
どうやらシンが他のガルマージやキキューズを殲滅する様子を見ていたらしく、ついに自分の番かと半分諦めの境地に入っているという。
「なるほどな。なぁユズハ、言葉が伝わるなら、ハイドロたちの仲間になって欲しいって伝えてくれないか?」
ガルマージはユズハと系統が近いようで、会話が可能だった。ユズハを通訳にして事情を説明すると、ガルマージたちはとくに異論なく、ハイドロたちの下につくことになった。
正規の職についているわけではないのでボーナスはほぼないが、そもそも戦いを目的にしているわけじゃないので問題ないとハイドロたちは言う。
「目的も達成したし、ローメヌンに戻るか。パッツナーで何があったかも話しておかないといけないからな」
ガルマージがここにやってきた原因でもあるので、なるべく詳しくシンは説明した。
「プレイヤーの変貌にドゥーギンすら操るアイテムか。厄介なものだね」
「一応こっちでも解析してみますね」
ハイドロとオキシジェンは、シンが取り出したドゥーギンを操っていた首輪を見て言った。
シンのほうでも簡単な解析はしている。今のところ、わかっているのは使われた素材くらいだ。製造元がわかるような手がかりはない。
「内訳はわかる範囲だとこんなところだ。見ただけでろくでもないものができるのがわかるぞ」
「ええと、メインはオリハルコンとヒヒイロカネ。まあそうでしょうね。あとは……なるほど、積極的に集めたいものじゃないですねぇ」
シンがアイテムの解析結果を伝えると、オキシジェンが顔をしかめながら言った。
シンやオキシジェンたちからすれば、特殊なアイテムに魔法金属が使われているのは珍しくない。ただ、金属以外の素材の中に血だの心臓だのといったアイテムが必要なのが問題だ。
ゲーム時代ならドロップアイテムのひとつ程度の認識でよかったが、こっちでは血が必要なら入れ物を用意して直接採取しなければならない。
シンのようにアイテムボックスがあれば血だけカード化するということもできるが、あまりしたくはないというのがシンの本音だ。鍛冶の中には武器を鍛える際に血を使うものもあるので、まだ抵抗はないほうだが。
「施設は使いませんか?」
「パッツナーでのことはメッセージカードで連絡が取れるやつらには知らせておくつもりだけど、ウォルフガングには直接伝えておいたほうがいいと思ってな」
「ウォルフガングさん、ですか?」
首をかしげる2人に、ジラートの直系だと伝えると驚いた後に納得していた。ビーストの場合、500年となると孫やひ孫程度ではすまないくらい世代が進む。
直接会うことにこだわるのは、やはりジラートというシンにとって特別な存在の系譜だからだ。エルトニア大陸にあるビーストの国で最大規模のファルニッド獣連合の王でもあるので、直接言葉を交わしたほうがいいという思いもある。
「あのジラートがね。おまけに割と最近まで生きていた、と。それはそれで驚きだけど、満足して逝ったならいいんじゃないかな」
狼のビーストとしてはありえない時間を生きていたジラートの、長寿の秘密が気になるとでも言うかと思っていたが、ハイドロの表情からはそういった感情は読み取れない。
オキシジェンも同じだ。
「気にならないとは言いませんが、仲間を研究対象にはしたくないので」
冗談気味にシンが聞くと、そう返事が戻ってくる。まったく気にならないわけではないようだ。
だが、仲間を研究対象にしたくないと言った2人にシンはほっとした。
ヘカテーによって、マッドなサイエンティスト風に設定されていても、仲間のことは大事にしているのだ。
「では、ジラートの子孫のことは任せたよ。バルたんとあの子たちの事は任せてくれたまえ」
ハイドロがガルマージたちのほうを見て言う。もともと汚染エリアに棲息していたこともあってか、ローメヌンの毒エリアも気にすることなくくつろいでいた。
ローメヌンを後にした一行は、ファルニッドに向かう。ローメヌンからは陸路ではかなり距離があるので、転移の結晶石を使って近くまで転移した。以前ファルニッドに来たときに移動ついでに登録しておいた場所だ。
「いつのまに」
「仰々しく何かやる必要はないからな」
トイレ休憩のときにやったとは言わない。
転移先は森の中なのでそこから出て馬車を出す。ここからはカゲロウが引いていく。
改造された馬車に揺られながら、シンたちはかつて案内された門に向かった。一般の冒険者や商人の入る門とは別の、特別な許可がいる門だ。
「御者は俺とシュニーでいこう。門番の人が顔を覚えててくれれば、過剰に警戒されることもないだろうし」
メッセージは送ってあるので追い返されはしないだろうと思っているが、伝達の遅れやミスは人を介する以上、ゼロにはできない。
シュニーがいれば大抵は大丈夫だと思っているが、それでもトラブルはないほうがいいのだ。
「向こうも気づいたみたいだな」
「私たちが向かっていることも伝わっているようですね」
シンたちの使っている門は幻術によって隠蔽されている。シンには効かないので大きく手を振って存在をアピールすると、門番も手を振り返してくれた。
シンの記憶が正しければ、前回ファルニッドを発つときに見送ってくれた門番の1人だ。
「ええと、獣王様から俺たちが向かっていることは伝わっていますか?」
「はい。ですが念のため、以前王がお渡しになった牙の紋を見せていただけますか」
馬車を収納して近づくと、門番の1人がそんなことを言った。シンは言われたとおり、アイテムボックスの中からウォルフガングにもらったアクセサリーを取り出す。
「確かに確認しました。皆様を歓迎いたします」
シンの手にあるアクセサリーを確認した門番がもう1人の門番にうなずきを返したあと、シンたちに向き直って敬礼した。
すでにウォルフガングにはシンたちが到着した旨を知らせる早馬が出ているらしい。
まもなく迎えが来るだろうと門番が話していると、すぐに豪華な外装の馬車がやってきた。国賓を迎えるために、見栄えにも気を使った品らしい。
乗り心地はそれなりで、この世界の馬車としては高性能だ。
一般的な馬車は恐ろしく揺れる。
王族や貴族の使うものも、一般に比べればましであるもののやはり揺れるので、振動が少ないというだけで金がかかっているのがわかる。さすがは国賓用といったところだ。
案内されたのは、ジラートたちと再会したときに使った部屋だった。ウォルフガングとクオーレに加えて、2人のビーストがいた。
簡単な挨拶を終えると、ウォルフガングが自己紹介するようにうながす。
「お初にお目にかかる。ウォルフガング様の副官をしているウォルク・デガロと申す」
先に口を開いたのはウォルク。獣に近いタイプのビーストで民族衣装のようなゆったりとした服を着ている。
羽は白く、嘴と瞳は黒。体格的にはウォルフガングよりも大柄だ。立ち上がれば2メル以上あるだろう。系統としては鷲型になるらしい。
獣に近いタイプは性別がわかりにくいが、声の低さや体格から男性だろうとシンは推測した。
レベルは244。体格からは想像しづらいが、ジョブは魔導士だ。
シンやシュニーの魔力を感知できるのか、緊張している様子が見られる。
「同じく、副官のシル・ティオと申します」
こちらは人の外見に、獣耳と尻尾があるタイプのようだ。
ショートカットにした髪は全体的に黄色だが、ところどころ黒が混じっている。黒い瞳を細かく動かし、シンたちを観察していた。
全体的にすらりとした体格で、女性としては長身の部類だろう。クオーレのような動きやすい服装をしている。こちらはウォルクほど緊張はしていないように見える。
レベルは239。ジョブは獣戦士。
「俺たちのことは?」
「話してあります。ジラート様でいうところの、ラジムやヴァンのような立場であると考えていただければ」
側近であり、信頼できる相手のようだ。
話はしてあるということだったが、あらためてシンたちも自己紹介をする。メンバーの素性が知れるに連れて、2人の表情がこわばっていくのは見なかったことにした。
「何と言いましょうか。以前よりもメンバーがすごいことになっていますね」
シンたちのことを知っているはずのウォルフガングも少しぎこちない。
元竜王のシュバイドの加入もそうだが、ジラートと同格のフィルマやセティの存在も驚かせる要因だった。ジラートから話だけは聞いていたようなので、シンたちの戦力がどれほどのものか理解できてしまうのだ。
「あー……俺が言うのものなんだけど、あまりかたくならないで聞いてくれ」
自己紹介だけで妙な緊張感が出てしまった。
クオーレだけは、緊張どころか目を輝かせているのが救いだろうか。
シンがパッツナーで起こったことを話し始めると、ウォルフガングの雰囲気が変わる。緊張感はあるが、それは今までとは違う種類のものだ。
国を治める者として、真剣にシンの話に耳を傾けている。ウォルクとシルも同じだ。
「メッセージを読んで理解していたつもりですが、やはり驚かざるを得ませんね」
ウォルフガングたちはシンの話を深刻に受け止めていた。
ジラートの存在もあり、一般人と比べてプレイヤーというものがどういう存在か、ウォルフガングはより深く理解している。
その知識や技術の高さもそうだが、やはりどこか特別な存在なのだ。
有名な者も多く、シンが聞いてもわからないが、この世界の住民ならあの人かと納得する人物もいるという。
「プレイヤーという存在を知っている者ほど、衝撃は大きいと思います。もちろん彼ら、彼女らとて私たちと同じように生きていますし、死にもします。それでも、何かが違うのです」
そう口にするウォルフガングに、ウォルクとシルもうなずく。
選定者も一般人とは違うが、こちらはこの世界で生まれ育つためかプレイヤーのような『何かが違う』という雰囲気はないらしい。
「そういうもんか。まあ、今はそれはいいか。とにかく、そういうやつがいるってことは知っておいて欲しい。有効な対策まで考え付かないのが悔しいけどな」
「いえ、知っているかいないか、この差は大きいです。情報提供感謝いたします」
ウォルフガングが頭を下げると、残りの3人もそれに倣った。ジラートの主だから、というのもあるのだろうが、ちょっと頭を下げすぎではなかろうかと思ってしまうシンである。
「俺たちの用事はこれだけだ。時間をとってもらってありがとうな」
王やその側近ともなれば、ちょっと話がある程度で、気軽に会えるような存在ではない。
話を持ってきた人物と内容を考えれば時間をとらざるを得ないだろうが、あまり長居をしても悪い。シンは伝えるべきことを伝えると、退出しようとする。
「皆様は、これからどうなさるのですか?」
「いくつか国をまたいで、何人かに情報を伝えるつもりだ。メッセージカードを知らないやつもいるからな」
メッセージカードを知っているのは、プレイヤーかサポートキャラクター。あとはそういった希少アイテムを入手できる立場にある者のみ。選定者でも知らない者は珍しくない。
ぱっと思いつくのは、ヒノモトの藤堂貫九郎や天下五剣、バルメルのヒビネコ、シャドウ、ホーリーなどだ。天下五剣はゲームキャラとしての知識があるのでプレイヤーと同じようなもの、とシンは考えている。
「それでしたら、皇国の竜王にもお伝えいただきたい。大陸において大切な役目を持つ国ですので、今回のような情報は共有しておきたいのです。ファルニッドからも公式文書として今回得られた情報を伝えるつもりですが、シュバイド殿が直接話せばより重要な案件として扱ってもらえるはずです。もし向かう先が定まっていないならば、ご一考いただきたい」
情報源がシンやシュニーでなければ、すぐには信じられなかっただろうからと、ウォルフガングは言う。同盟国からの情報となれば重要な案件として扱われるだろうが、より優先度を上げるためには直接向かったほうがいいとのことだった。
「そうだな。俺も多少は皇国のことを知ってる。シュバイドのいた国でもあるし、信頼できるだろう。考えておくよ」
実際はすぐに向かうつもりだ。同盟国ということで心話を使った連絡手段はあるらしいので、情報自体は先に送られる。
ただ、ウォルフガングも言ったとおり、どこまで重要視されるかは未知数。国が大きくなれば扱う情報も多岐にわたる。場合によっては王の耳に入らないなんてこともありえるのだ。
シンもできるだけ重要案件として扱って欲しかったので、シュバイドなりシュニーなりを通して情報提供をすることに異論はなかった。
「シュバイド。竜王に伝えるのは任せていいか?」
ファルニッドを出たシンたちは、竜皇国キルモントを目指して街道を進んでいた。
カゲロウが引いているのでいつもの爆走モードだ。一応、すれ違う商人がいないときにだけ加速している。
「我が出るのが一番話が早いだろう。袂を分かったとはいえ、危険があるならばそれを知らせることに異論はない」
場合によっては敵対する覚悟すらしてシュバイドは皇国を出たと、シンはシュニーから聞いている。そんなシュバイドを使者にするのはどうかとも思ったが、本当に敵対しているわけではないのでそのくらいは問題ないと、シュニーも、そしてシュバイド本人も言った。
「ふむ、そういえば、シンはキルモントのことについてどれほど知っているのだ?」
誰が行くかを決めた後、キルモントへと向かう道すがらシンとシュバイドの間でそんな話題が出た。
「ファルニッドで読んだ資料とか、旅先で聞いた話の受け売りになるけど、聖地から出てくるモンスターの防波堤としての役割を果たしているってのは聞いてるよ。さっきも言った通り、実際に行ったことはないけどな」
「その認識で間違いはない。やり方としては、王都と聖地の間に一定間隔で砦を設け、連絡を取り合いながらモンスターを間引いていく。モンスターは砦にはあまり攻撃せず内陸に向かおうとする傾向があるゆえ、残ったモンスターを機動力のある部隊で殲滅していくことになる。ただ、バルメルのように完全に押しとどめることはできぬ」
キルモントから聖地に向かうにつれて、大地が細くなっていく。これは地殻変動のときにそうなったようだ。
逆に聖地からはモンスターが放射状に広がるため、すべての個体を倒しきることは難しいという。
数が少ないときは殲滅を目指すが、多い場合はレベルの高い個体や機動力のある個体を優先して倒すようにしているようだ。
「それともうひとつ。同盟国や教会から援軍が送られている。規模が違うゆえ、シンが参戦したというバルメルよりも人数は多いな」
バルメルと同じく、キルモントが落ちると氾濫によって発生した大量のモンスターが、大陸中に放たれ続けることになる。
大陸全土の広さから考えれば、解き放たれるモンスターの数はたいしたことがないかもしれないが、その地に住んでいる者にとっては大問題だ。
人以外の動植物にも被害がでるのは確実で、ほうっておけばいずれ大陸中に理性なきモンスターが跋扈するようになってしまいかねない。
そんな理由もあり、よほどのことがないかぎり、キルモントへの兵力派遣が中止されることはないようだ。
「選定者も結構いそうだな。いや、むしろいないときついか」
レベル200台ならまだ何とかなるだろうが、300を超えるといくら鍛えても一般兵には荷が重い。
バルメルもそうだったが、キルモントに常駐する選定者はもっと多いのだろうとシンは思った。もしかするとまた知り合いに会うかもなとも思う。
「シンの知り合いかはわからぬが、元プレイヤーも何人かいたはずだ。会いに行くか?」
「機会があればな。プレイヤー全体から見れば、知らないやつのほうが圧倒的に多いんだし」
バルメルでヒビネコやホーリー、シャドゥと再会できたことのほうが珍しいのだ。
「……いや、そうでもないのか?」
こちらに来ているプレイヤーは自分と関わったことのある者たちなのでは?
かつて考えたことが、ふとシンの頭をよぎる。
バルメルの3人だけではない。今のところ、出会った元プレイヤーは大抵が知り合いだ。
聖女誘拐事件で再会したミルト、シュニーに邪符を使ったハーメルン、エルクントのヒラミーにマサカド。
そういった面々を考えると、シンの思いつきもあながち的外れではないように思える。いくらなんでも、知り合いに会いすぎである。
ただ、先の事件でモンスターへと変わってしまったプレイヤーのように面識のない者もいた。他にも何か、条件のようなものがあるのだろうかと思うシンである。
「何か気になることでもあるのか?」
「ちょっとな」
プレイヤーのことについて、シンは考えていたことをシュバイドに話す。
「おう」
シンたちに気づいて迎えてくれたティエラに返事をしながら、シュバイドにも手で挨拶をする。
バオムルタンも、おかえりとでも言うように小さく鳴いた。
ローメヌンでは、とくにこれといった変化はなかったようだ。
解放されたドゥーギンは、移動する際にローメヌンの上を通ったという。
バオムルタンはドゥーギンを見上げ、ドゥーギンもまたバオムルタンを見下ろしながら飛び去っていったらしい。
「これでよかったか?」
なんとなくシンが聞くと、バオムルタンは大きく一声鳴いて、顔の先端をシンにこすりつけた。
そんな仕草を見ると、さっきの一鳴きが肯定の意味に思えてくる。おそらくそれで合っているはずだ。
「ところでハイドロとオキシジェンに少し話があるんだ。あ、バルたんにも聞いてもらったほうがいいか」
ここに居つくなら、バオムルタンの縄張りの中に棲むということになる。
バオムルタンのほうは温厚なので、ガルマージたちが攻撃的な行動をしないかぎり、自分から狩りに行くことはないだろう。
シンはそう思ったが、知らないで遭遇してトラブルになっては困る。
ガルマージたちのことをハイドロたちに話すとほうほう、ふむふむと興味深そうにうなずいていた。
理解しているのか2人の真似なのか、バオムルタンも首を縦に振っている。
「すぐに捕獲しにいきましょう。ドゥーギンの発生させたエリアに湧いた個体なんてずいぶんと珍しい。せめて一匹確保したいです」
「同感だ。研究のし甲斐がある」
ふっふっふと含み笑いが聞こえてきそうな笑みを浮かべて、2人は準備に取り掛かった。
ネットや疑似餌などの捕獲用アイテムをアイテムボックスに放り込み、さらに調教師のジョブと能力を一時的に得ることができる装備を身につける。
これは、調教師ではないプレイヤーがペットとしてモンスターを捕まえたいときに使う装備だ。
時間をかければ、プレイヤーなら調教師のジョブを得ることは難しくない。ただ、他に時間を使いたいというプレイヤーは多かった。
一部調教師のスキルも解禁されるので、調教師のジョブの体験版のような用途としても使用される。
「さて、行こうか!」
ハイドロの声に急かされて、シンはガルマージたちのいる場所へ一行を案内する。オキシジェンとハイドロの感知能力では、ガルマージたちのいる場所は範囲外なのだ。
マップ上の反応を確認するととくに動いていないようだったので、手間もなく到着した。
シンたちが接近しているのはわかっていたようで、ガルマージたちは警戒した様子で周囲を窺っている。
「ふむ、少し弱っているね。好都合好都合」
捕獲用ネットを構えて笑うハイドロは危ない人にしか見えなかった。オキシジェンも声に出していないだけで同じような様子である。
バオムルタンの姿を見れば能力差から見ても逃げ出しそうなものだが、そうはならなかった。尻尾を足の間に入れて震えているので襲ってくることはなさそうだ。
「これはネットを使うまでもないかな? ほら、食事だよ」
オキシジェンがモンスターを仲間にしやすくする疑似餌を差し出す。しかし、ガルマージは震えるばかりで反応は芳しくない。
「くぅ、シンに怯えてる」
「俺?」
ユズハに指摘されて驚くシン。モンスター同士、バオムルタンに怯えているのだと思っていたのだ。
どうやらシンが他のガルマージやキキューズを殲滅する様子を見ていたらしく、ついに自分の番かと半分諦めの境地に入っているという。
「なるほどな。なぁユズハ、言葉が伝わるなら、ハイドロたちの仲間になって欲しいって伝えてくれないか?」
ガルマージはユズハと系統が近いようで、会話が可能だった。ユズハを通訳にして事情を説明すると、ガルマージたちはとくに異論なく、ハイドロたちの下につくことになった。
正規の職についているわけではないのでボーナスはほぼないが、そもそも戦いを目的にしているわけじゃないので問題ないとハイドロたちは言う。
「目的も達成したし、ローメヌンに戻るか。パッツナーで何があったかも話しておかないといけないからな」
ガルマージがここにやってきた原因でもあるので、なるべく詳しくシンは説明した。
「プレイヤーの変貌にドゥーギンすら操るアイテムか。厄介なものだね」
「一応こっちでも解析してみますね」
ハイドロとオキシジェンは、シンが取り出したドゥーギンを操っていた首輪を見て言った。
シンのほうでも簡単な解析はしている。今のところ、わかっているのは使われた素材くらいだ。製造元がわかるような手がかりはない。
「内訳はわかる範囲だとこんなところだ。見ただけでろくでもないものができるのがわかるぞ」
「ええと、メインはオリハルコンとヒヒイロカネ。まあそうでしょうね。あとは……なるほど、積極的に集めたいものじゃないですねぇ」
シンがアイテムの解析結果を伝えると、オキシジェンが顔をしかめながら言った。
シンやオキシジェンたちからすれば、特殊なアイテムに魔法金属が使われているのは珍しくない。ただ、金属以外の素材の中に血だの心臓だのといったアイテムが必要なのが問題だ。
ゲーム時代ならドロップアイテムのひとつ程度の認識でよかったが、こっちでは血が必要なら入れ物を用意して直接採取しなければならない。
シンのようにアイテムボックスがあれば血だけカード化するということもできるが、あまりしたくはないというのがシンの本音だ。鍛冶の中には武器を鍛える際に血を使うものもあるので、まだ抵抗はないほうだが。
「施設は使いませんか?」
「パッツナーでのことはメッセージカードで連絡が取れるやつらには知らせておくつもりだけど、ウォルフガングには直接伝えておいたほうがいいと思ってな」
「ウォルフガングさん、ですか?」
首をかしげる2人に、ジラートの直系だと伝えると驚いた後に納得していた。ビーストの場合、500年となると孫やひ孫程度ではすまないくらい世代が進む。
直接会うことにこだわるのは、やはりジラートというシンにとって特別な存在の系譜だからだ。エルトニア大陸にあるビーストの国で最大規模のファルニッド獣連合の王でもあるので、直接言葉を交わしたほうがいいという思いもある。
「あのジラートがね。おまけに割と最近まで生きていた、と。それはそれで驚きだけど、満足して逝ったならいいんじゃないかな」
狼のビーストとしてはありえない時間を生きていたジラートの、長寿の秘密が気になるとでも言うかと思っていたが、ハイドロの表情からはそういった感情は読み取れない。
オキシジェンも同じだ。
「気にならないとは言いませんが、仲間を研究対象にはしたくないので」
冗談気味にシンが聞くと、そう返事が戻ってくる。まったく気にならないわけではないようだ。
だが、仲間を研究対象にしたくないと言った2人にシンはほっとした。
ヘカテーによって、マッドなサイエンティスト風に設定されていても、仲間のことは大事にしているのだ。
「では、ジラートの子孫のことは任せたよ。バルたんとあの子たちの事は任せてくれたまえ」
ハイドロがガルマージたちのほうを見て言う。もともと汚染エリアに棲息していたこともあってか、ローメヌンの毒エリアも気にすることなくくつろいでいた。
ローメヌンを後にした一行は、ファルニッドに向かう。ローメヌンからは陸路ではかなり距離があるので、転移の結晶石を使って近くまで転移した。以前ファルニッドに来たときに移動ついでに登録しておいた場所だ。
「いつのまに」
「仰々しく何かやる必要はないからな」
トイレ休憩のときにやったとは言わない。
転移先は森の中なのでそこから出て馬車を出す。ここからはカゲロウが引いていく。
改造された馬車に揺られながら、シンたちはかつて案内された門に向かった。一般の冒険者や商人の入る門とは別の、特別な許可がいる門だ。
「御者は俺とシュニーでいこう。門番の人が顔を覚えててくれれば、過剰に警戒されることもないだろうし」
メッセージは送ってあるので追い返されはしないだろうと思っているが、伝達の遅れやミスは人を介する以上、ゼロにはできない。
シュニーがいれば大抵は大丈夫だと思っているが、それでもトラブルはないほうがいいのだ。
「向こうも気づいたみたいだな」
「私たちが向かっていることも伝わっているようですね」
シンたちの使っている門は幻術によって隠蔽されている。シンには効かないので大きく手を振って存在をアピールすると、門番も手を振り返してくれた。
シンの記憶が正しければ、前回ファルニッドを発つときに見送ってくれた門番の1人だ。
「ええと、獣王様から俺たちが向かっていることは伝わっていますか?」
「はい。ですが念のため、以前王がお渡しになった牙の紋を見せていただけますか」
馬車を収納して近づくと、門番の1人がそんなことを言った。シンは言われたとおり、アイテムボックスの中からウォルフガングにもらったアクセサリーを取り出す。
「確かに確認しました。皆様を歓迎いたします」
シンの手にあるアクセサリーを確認した門番がもう1人の門番にうなずきを返したあと、シンたちに向き直って敬礼した。
すでにウォルフガングにはシンたちが到着した旨を知らせる早馬が出ているらしい。
まもなく迎えが来るだろうと門番が話していると、すぐに豪華な外装の馬車がやってきた。国賓を迎えるために、見栄えにも気を使った品らしい。
乗り心地はそれなりで、この世界の馬車としては高性能だ。
一般的な馬車は恐ろしく揺れる。
王族や貴族の使うものも、一般に比べればましであるもののやはり揺れるので、振動が少ないというだけで金がかかっているのがわかる。さすがは国賓用といったところだ。
案内されたのは、ジラートたちと再会したときに使った部屋だった。ウォルフガングとクオーレに加えて、2人のビーストがいた。
簡単な挨拶を終えると、ウォルフガングが自己紹介するようにうながす。
「お初にお目にかかる。ウォルフガング様の副官をしているウォルク・デガロと申す」
先に口を開いたのはウォルク。獣に近いタイプのビーストで民族衣装のようなゆったりとした服を着ている。
羽は白く、嘴と瞳は黒。体格的にはウォルフガングよりも大柄だ。立ち上がれば2メル以上あるだろう。系統としては鷲型になるらしい。
獣に近いタイプは性別がわかりにくいが、声の低さや体格から男性だろうとシンは推測した。
レベルは244。体格からは想像しづらいが、ジョブは魔導士だ。
シンやシュニーの魔力を感知できるのか、緊張している様子が見られる。
「同じく、副官のシル・ティオと申します」
こちらは人の外見に、獣耳と尻尾があるタイプのようだ。
ショートカットにした髪は全体的に黄色だが、ところどころ黒が混じっている。黒い瞳を細かく動かし、シンたちを観察していた。
全体的にすらりとした体格で、女性としては長身の部類だろう。クオーレのような動きやすい服装をしている。こちらはウォルクほど緊張はしていないように見える。
レベルは239。ジョブは獣戦士。
「俺たちのことは?」
「話してあります。ジラート様でいうところの、ラジムやヴァンのような立場であると考えていただければ」
側近であり、信頼できる相手のようだ。
話はしてあるということだったが、あらためてシンたちも自己紹介をする。メンバーの素性が知れるに連れて、2人の表情がこわばっていくのは見なかったことにした。
「何と言いましょうか。以前よりもメンバーがすごいことになっていますね」
シンたちのことを知っているはずのウォルフガングも少しぎこちない。
元竜王のシュバイドの加入もそうだが、ジラートと同格のフィルマやセティの存在も驚かせる要因だった。ジラートから話だけは聞いていたようなので、シンたちの戦力がどれほどのものか理解できてしまうのだ。
「あー……俺が言うのものなんだけど、あまりかたくならないで聞いてくれ」
自己紹介だけで妙な緊張感が出てしまった。
クオーレだけは、緊張どころか目を輝かせているのが救いだろうか。
シンがパッツナーで起こったことを話し始めると、ウォルフガングの雰囲気が変わる。緊張感はあるが、それは今までとは違う種類のものだ。
国を治める者として、真剣にシンの話に耳を傾けている。ウォルクとシルも同じだ。
「メッセージを読んで理解していたつもりですが、やはり驚かざるを得ませんね」
ウォルフガングたちはシンの話を深刻に受け止めていた。
ジラートの存在もあり、一般人と比べてプレイヤーというものがどういう存在か、ウォルフガングはより深く理解している。
その知識や技術の高さもそうだが、やはりどこか特別な存在なのだ。
有名な者も多く、シンが聞いてもわからないが、この世界の住民ならあの人かと納得する人物もいるという。
「プレイヤーという存在を知っている者ほど、衝撃は大きいと思います。もちろん彼ら、彼女らとて私たちと同じように生きていますし、死にもします。それでも、何かが違うのです」
そう口にするウォルフガングに、ウォルクとシルもうなずく。
選定者も一般人とは違うが、こちらはこの世界で生まれ育つためかプレイヤーのような『何かが違う』という雰囲気はないらしい。
「そういうもんか。まあ、今はそれはいいか。とにかく、そういうやつがいるってことは知っておいて欲しい。有効な対策まで考え付かないのが悔しいけどな」
「いえ、知っているかいないか、この差は大きいです。情報提供感謝いたします」
ウォルフガングが頭を下げると、残りの3人もそれに倣った。ジラートの主だから、というのもあるのだろうが、ちょっと頭を下げすぎではなかろうかと思ってしまうシンである。
「俺たちの用事はこれだけだ。時間をとってもらってありがとうな」
王やその側近ともなれば、ちょっと話がある程度で、気軽に会えるような存在ではない。
話を持ってきた人物と内容を考えれば時間をとらざるを得ないだろうが、あまり長居をしても悪い。シンは伝えるべきことを伝えると、退出しようとする。
「皆様は、これからどうなさるのですか?」
「いくつか国をまたいで、何人かに情報を伝えるつもりだ。メッセージカードを知らないやつもいるからな」
メッセージカードを知っているのは、プレイヤーかサポートキャラクター。あとはそういった希少アイテムを入手できる立場にある者のみ。選定者でも知らない者は珍しくない。
ぱっと思いつくのは、ヒノモトの藤堂貫九郎や天下五剣、バルメルのヒビネコ、シャドウ、ホーリーなどだ。天下五剣はゲームキャラとしての知識があるのでプレイヤーと同じようなもの、とシンは考えている。
「それでしたら、皇国の竜王にもお伝えいただきたい。大陸において大切な役目を持つ国ですので、今回のような情報は共有しておきたいのです。ファルニッドからも公式文書として今回得られた情報を伝えるつもりですが、シュバイド殿が直接話せばより重要な案件として扱ってもらえるはずです。もし向かう先が定まっていないならば、ご一考いただきたい」
情報源がシンやシュニーでなければ、すぐには信じられなかっただろうからと、ウォルフガングは言う。同盟国からの情報となれば重要な案件として扱われるだろうが、より優先度を上げるためには直接向かったほうがいいとのことだった。
「そうだな。俺も多少は皇国のことを知ってる。シュバイドのいた国でもあるし、信頼できるだろう。考えておくよ」
実際はすぐに向かうつもりだ。同盟国ということで心話を使った連絡手段はあるらしいので、情報自体は先に送られる。
ただ、ウォルフガングも言ったとおり、どこまで重要視されるかは未知数。国が大きくなれば扱う情報も多岐にわたる。場合によっては王の耳に入らないなんてこともありえるのだ。
シンもできるだけ重要案件として扱って欲しかったので、シュバイドなりシュニーなりを通して情報提供をすることに異論はなかった。
「シュバイド。竜王に伝えるのは任せていいか?」
ファルニッドを出たシンたちは、竜皇国キルモントを目指して街道を進んでいた。
カゲロウが引いているのでいつもの爆走モードだ。一応、すれ違う商人がいないときにだけ加速している。
「我が出るのが一番話が早いだろう。袂を分かったとはいえ、危険があるならばそれを知らせることに異論はない」
場合によっては敵対する覚悟すらしてシュバイドは皇国を出たと、シンはシュニーから聞いている。そんなシュバイドを使者にするのはどうかとも思ったが、本当に敵対しているわけではないのでそのくらいは問題ないと、シュニーも、そしてシュバイド本人も言った。
「ふむ、そういえば、シンはキルモントのことについてどれほど知っているのだ?」
誰が行くかを決めた後、キルモントへと向かう道すがらシンとシュバイドの間でそんな話題が出た。
「ファルニッドで読んだ資料とか、旅先で聞いた話の受け売りになるけど、聖地から出てくるモンスターの防波堤としての役割を果たしているってのは聞いてるよ。さっきも言った通り、実際に行ったことはないけどな」
「その認識で間違いはない。やり方としては、王都と聖地の間に一定間隔で砦を設け、連絡を取り合いながらモンスターを間引いていく。モンスターは砦にはあまり攻撃せず内陸に向かおうとする傾向があるゆえ、残ったモンスターを機動力のある部隊で殲滅していくことになる。ただ、バルメルのように完全に押しとどめることはできぬ」
キルモントから聖地に向かうにつれて、大地が細くなっていく。これは地殻変動のときにそうなったようだ。
逆に聖地からはモンスターが放射状に広がるため、すべての個体を倒しきることは難しいという。
数が少ないときは殲滅を目指すが、多い場合はレベルの高い個体や機動力のある個体を優先して倒すようにしているようだ。
「それともうひとつ。同盟国や教会から援軍が送られている。規模が違うゆえ、シンが参戦したというバルメルよりも人数は多いな」
バルメルと同じく、キルモントが落ちると氾濫によって発生した大量のモンスターが、大陸中に放たれ続けることになる。
大陸全土の広さから考えれば、解き放たれるモンスターの数はたいしたことがないかもしれないが、その地に住んでいる者にとっては大問題だ。
人以外の動植物にも被害がでるのは確実で、ほうっておけばいずれ大陸中に理性なきモンスターが跋扈するようになってしまいかねない。
そんな理由もあり、よほどのことがないかぎり、キルモントへの兵力派遣が中止されることはないようだ。
「選定者も結構いそうだな。いや、むしろいないときついか」
レベル200台ならまだ何とかなるだろうが、300を超えるといくら鍛えても一般兵には荷が重い。
バルメルもそうだったが、キルモントに常駐する選定者はもっと多いのだろうとシンは思った。もしかするとまた知り合いに会うかもなとも思う。
「シンの知り合いかはわからぬが、元プレイヤーも何人かいたはずだ。会いに行くか?」
「機会があればな。プレイヤー全体から見れば、知らないやつのほうが圧倒的に多いんだし」
バルメルでヒビネコやホーリー、シャドゥと再会できたことのほうが珍しいのだ。
「……いや、そうでもないのか?」
こちらに来ているプレイヤーは自分と関わったことのある者たちなのでは?
かつて考えたことが、ふとシンの頭をよぎる。
バルメルの3人だけではない。今のところ、出会った元プレイヤーは大抵が知り合いだ。
聖女誘拐事件で再会したミルト、シュニーに邪符を使ったハーメルン、エルクントのヒラミーにマサカド。
そういった面々を考えると、シンの思いつきもあながち的外れではないように思える。いくらなんでも、知り合いに会いすぎである。
ただ、先の事件でモンスターへと変わってしまったプレイヤーのように面識のない者もいた。他にも何か、条件のようなものがあるのだろうかと思うシンである。
「何か気になることでもあるのか?」
「ちょっとな」
プレイヤーのことについて、シンは考えていたことをシュバイドに話す。
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