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1巻
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しおりを挟む目が覚めると、そこが見慣れた光景ではなくて焦る。
いや、一瞬そう思ったのだけど、ベッドの天蓋の幾何学模様や、白で統一された家具の配置などは見知っている。ここはぼくの寝室だ。
でも頭がぼんやりしていて、なんかおかしいと思っちゃう。
とりあえず身を起こし、手を見てみた。
とても小さくて、モチモチしている!? しかも関節が埋もれるくらいのプヨ肉が指についていて、さらに赤ちゃんの腕みたいに関節じゃないところに皺があるんだけど!
……なんじゃこりゃあ?
「サリエル様、お目覚めになられましたか! どこか痛いところはございませんか?」
ぼくが自分の手を見て驚いていたら、侍女のエリンが声をかけてきた。
エリンは、年齢は二十代前半くらいかな? 紺のワンピースに白いエプロンを身につけている。白い毛に覆われた大きな耳が頭頂部にあり、耳と同じ白色の髪は頬の辺りでぱっつんと切り揃えていた。
彼女は丸くてぱっちりしたオレンジ色の瞳をウルウルさせて、ぼくをみつめている。
そのとき、ぼくはエリンを見て、彼女の顔の横に唐草模様のボードみたいなものがあるのに気がついた。これ、なんだろう?
四角いボードには『サリエルの専属侍女、エリン。希少な白色の毛を持つ狼獣人。お肉大好き』と書かれていた。
こんなの今まで見たことがなくて、目が釘付けになってしまう。
エリンへの返事も忘れて、そのボードに手を伸ばした。でも触れない。
そのうちボードは消えてしまった。書かれていたのはエリンの注釈というのか、備考というのか……
もしかしてあれは、備考欄だったのかな?
「サリエル様、いかがなさいましたか?」
何もないところに手を伸ばす動作をしたぼくを、エリンは不思議そうに見る。
「ごめん、虫がいたのです。痛いところはありません」
虫と聞くなり、エリンは顔の横で手を振ったり耳を震わせたりした。
『ケモミミ可愛いっ!』
あ、変な声が聞こえた。
誰かがぼくの声で話しかけてきたように感じたのだけど、これはぼくにしか聞こえていないみたい。だって、エリンは反応していないんだもん。
というかぁっ、ぼくの中にぼくじゃない何かがいる!?
だってぼく、ケモミミって何かわからないもん。なんだかやっぱり絶対おかしいよ!
「良かったです。二日も眠っていらしたので心配いたしました。早速レオンハルト様に報告をしてまいります。お医者様にもすぐに診てもらいましょう」
ぼくが動揺している間に、エリンはそう言って足早に部屋を出ていってしまった。
あぁ、待ってぇと思って、ぼくはエリンに手を伸ばしかけた。今ぼくが抱えている違和感について質問したかったのだ。
でも人様に聞く前に、一度自分自身でよく考えてみるべきだと思い直す。どんな違和感なのか、何がわからないのかがわからないし、今は何を質問するべきなのかもわからないのだ。
ぼくは肉付きの良い手を引っこめて、改めて周りを見回してみる。
今ぼくが寝ているのは、小さなぼくが寝るには大きすぎるくらいに立派な天蓋付きベッド。
ずっとこのベッドで寝ていたはずなのに、なぜか今になって『天蓋付き? お金持ちの家のお坊ちゃまみたいで贅沢!』という感想が出てくる。
ううん、感想というか、心の中で何かがそう言っているのだ。
まるでぼくがぼくでなくなって、ぼくの中に別の誰かがいる感覚。それがなんだか気持ち悪い。
そもそもぼくはいったい誰なのだ……いや、大丈夫。それは覚えている。
ぼくはサリエル・ドラベチカ、六歳である。
父上は魔王、母上はサキュバス。ただぼくは母上の連れ子なので、魔王と血縁関係はない。だけど母上が魔王との間に子をもうけたので、ぼくもついでに養ってくれた。
『魔王様、太っ腹ぁ!』
ちなみに、母上が教えてくれないので、ぼくの本当の父親が誰なのかは知らない。
ぼくには魔族の象徴であるツノが生えてないし、魔族であれば潤沢にあるはずの魔力も少ししかない。だからぼくは魔族ではなくて人族とのハーフなのかもって、使用人は噂をしている。
『何、その使用人。いやぁな感じ』
さっきから、何かがぼくの思考に妙な合いの手を入れるけど、無視しよう。
そんなふうに自分の状況を思い浮かべていたら、今自分がどうしてこうなっているのかがわかってきた。もう少し思い出してみよう。
と思った矢先に扉の向こうが騒がしくなり、誰かの足音がバタバタと聞こえた。
扉を勢い良く開けたのは、黒髪の超超超美少年だ。
彼に続いて、白衣を着ているからおそらく医師と、あちこちに包帯を巻いて腕を白い布で吊っている痛々しい様相の大人も部屋に入ってくる。
「サリュっ、目が覚めたのか? 無事なのか?」
焦りと憂いをにじませる口調ながら、美少年の声質は落ち着きのある耳心地のよいものだ。
美少年はベッドに腰を乗せ、ぼくの顔をのぞきこむ。
一瞬黒髪に見えたけれど、よく見ると濃い藍色だった。ボリューミーな波打つ髪が肩辺りまで伸びている。切れ長の目元、紫色の瞳は、まるでアメジストのようで、どの角度から見てもキラキラと輝いている。色白な顔には高い鼻梁がスッと通っていて、今は少し肉厚な唇をきゅっと引き結んでいる。どこか心配そうな表情に見えた。
そして左右の耳の後ろから、羊のツノの形をしている三重巻の立派なツノが見えている。
この国ではツノは魔力の量に比例すると言われていて、本数が多く、太く、長いものを持つ者ほど魔力が多いと言われているのだ。ぼくは今、謎の違和感で頭がぼんやりとしているけれど、美少年の魔力量がとても多いということは、そのツノを見ればわかる。
『うわぁぁ、超絶美形の破壊力、パネェ……』
ぱねぇ? そんな言葉今まで使ったことがないのに、どうして思い浮かぶのだろう。脳内で何かと何かがせめぎ合っている感じだ。モヤモヤして、眉をむにゅと動かした。
「サリュ、大丈夫か? 頭が痛いのか? 気分が悪いのか?」
眉根を寄せる表情をしたから心配したのか、ぼくを愛称で呼ぶ美少年が具合を聞いてくる。
「だ、大丈夫です。どこも痛くないですし、気分も悪くないです」
少し慌てたけど、なんとか質問には答えた。
というか、ぼくがオタオタしているのは謎の違和感や美少年の質問が多かったから、だけではない。美少年の横に出ている備考欄の文章があまりにも長くて、読むのが大変だったからなのだ。
備考欄には、こう書かれていた。
『シークレット攻略対象、レオンハルト。次代の魔王と目されている悪役令嬢の兄。威厳と気品に満ちた彼は、ディエンヌと友達になることで攻略できる。兄弟仲が良いことをアピールすると好感度がアップする。もう最高に格好良いっ』
ぼくには『こうりゃくたいしょう』とか『こうかんど』の意味がわからない。というか、最後のほうは誰かの感想なのでは? この備考欄はたぶん何者かによって書かれたものなのだろう。
わからないなりにそんな考察をしていたら、感極まった美少年がぼくに抱きついてきた。
「あぁ、本当に心配したのだ、サリュ。無事で良かった」
彼のぬくもりを感じながら、ぼくはひとつひとつ思い出していく。
美少年の名前は、レオンハルト・ド・ドラベチカだ。
魔王と正妻の間に生まれた由緒正しき長男で、年齢はぼくより五歳年上の十一歳。
魔王城に来た当初、ぼくは母上に育児放棄された。兄上はそんなぼくを保護して面倒を見てくれた、心優しい人なのである。
魔王である父上は、ぼくを養うとは言ったが、魔王城に入れたあとは我関せずだった。まぁ魔王の子供として魔王城に置いてもらえるだけでもありがたいことなのだけど。
母上にはぼくを養育する義務がある。でも母上はぼくを育てる気がまったくなかったみたいで、実質レオンハルト兄上がぼくをこの年まで育ててくれたのだ。
兄上がいなかったら、ぼくはこの魔王城のどこか片隅でひっそり朽ち果てていたことだろう。ぼくをみつけてくれてありがとうございます、兄上。と胸のうちで感謝を述べた。
『マジ、エレガントスパダリじゃないか。素敵ぃぃ。最高に格好良いっ』
ぼくの中で、また何かが変なことを言っているよ。意味はほぼわからないけど、兄上が格好良いのは、まぁ同意するかな。
ぼくを抱きしめたことで心を落ち着けたのか、兄上はぼくからそっと離れる。
続いて、医師がぼくのことを診察した。
医師からオッケーが出ると、もうひとりの痛々しい様相の人がベッドの横で跪いて頭を下げた。
「サリエル様、このたびは私の不手際でこのようなことになり、申し訳ございませんでした。どのような処分もお受けいたします」
彼の備考欄には『レオンハルトの従者、ミケージャ。家庭教師であり護衛。生ものが苦手』と書いてある。濃茶色の長い髪、上にS字に伸びる太めのツノには見覚えがあった。
でも、なんで彼が謝っているのかはわからない。ぼくが小首を傾げると、兄上が説明した。
「覚えていないのか? サリュとミケージャの乗った馬が、ディエンヌの魔法で吹き飛ばされたのだ。ミケージャがとっさに風魔法でサリュをかばったのだが、間に合わなくて、おまえは頭を打ってしまった」
ぼくはそのことを思い出し、息をのんだ。
ディエンヌというのは、ぼくの妹の名前だ。
なんとなくぼんやりしている今の頭でも、悪い意味ですぐに思い出せるくらい厄介な妹である。むしろぼくは、彼女の存在を忘れてしまいたい……
というか、魔法で吹き飛ばされたということは、ミケージャが包帯姿なのは、ぼくを助けたことで自分の身をかばえなかったから?
「兄上、どうして治癒魔法でミケージャを治さないのですか?」
怪我や病気を治せる治癒魔法を兄上は使える。なのに、ミケージャはどうして包帯姿なのか。
「いいえ。サリエル様のお許しもなく、自分ばかりが骨折を治すなどできません」
兄上にたずねたぼくに、ミケージャはそう答えて首を横に振った。
「骨折ぅぅ? ほ、骨が折れているの?」
驚愕に、ぼくは打ち震える。先ほどエリンはぼくが二日寝ていたと言っていた。ということは、ミケージャは二日間も痛い思いをしていたことになる。そんなの、可哀想だ。
そう思っているうちに、ぼくは彼についていろいろと思い出していった。
レオンハルト兄上に育ててもらったぼくは、兄上の従者であり家庭教師でもあるミケージャに勉強を教わったのだ。ミケージャは、身の回りの世話をしてくれるエリンと同じくらい、ぼくのことを見守ってくれた人で、大切な人。
そんな彼が長く痛い思いをしていたと思うと、悲しくて胸が痛くなる。
「痛いのは可哀想です。兄上、早く治してあげてぇ」
ぼくは泣きながら兄上にお願いする。しかし、そこでまた違和感を持った。
ボロボロっと涙が出たのに、頬を伝ってこない? 目の周りに涙が溜まる感じになっているようだけど、なんでぇ? その現象に驚いて、涙が引っこんだ。
「ほら、サリュは先に怪我を治したからといって怒るような子じゃないと言っただろう。私のサリュは魔国という掃き溜めに舞い降りた鶴のように、清廉で穏やかで優しい子なのだ」
そう言って、兄上はミケージャに触れると魔法を発動し、あっという間に怪我を治した。ぼくは涙の違和感のことはひとまず忘れて、ホッとする。
「良かった。もう痛くないですね?」
ミケージャにたずねると、彼はそっと微笑んだ。
「はい。サリエル様の寛大な御心に感謝いたします」
「そんな、ミケージャはぼくを助けてくれたのに、何も怒ることなんかないです」
そう、あのときのことを思い返すと、本当に死んでいてもおかしくなかったと思う。
突然つむじ風のような魔法が馬の周りに発動し、ぼくは一緒に馬に乗っていたミケージャごと宙に舞い上げられたのだ。
『そうそう、下を見るとビルの三階くらいの高さがあったなぁ』
ぼくは死を覚悟した。ミケージャがかばってくれなかったら、今ぼくはここにいないだろう。
落下しているとき、慌ててぼくのほうへ駆け寄る兄上の姿を見た。兄上はぼくの前ではいつも柔らかく微笑んでいることが多い。
でもそのときは、珍しく焦りに顔をこわばらせていた。
ぼくは心配をかけてごめんなさいと思いながら、意識を失ったのだった。
というか、そのときディエンヌも見えたけど、彼女は自分の魔法で吹き飛ばしたぼくを指差してキャハキャハ笑っていたよ。もうっ、妹なのに悪意に満ち満ちていて怖いんですけど。
「いいえ。同乗していたにもかかわらずサリエル様をしっかりお守りできなかった、私の落ち度でございます」
「いえいえ、悪いのは完全にディエンヌですから」
まったく、悪辣な妹を持ってしまったぼくの不運を嘆くしかない。
ここで頭の中で、今までの話をまとめてみる。
どうやらぼくは妹に殺されかけ、頭を強く打って二日ほど寝ていたということらしい。なるほど。
「本当に大丈夫なのか? サリュ」
考えごとをしていたぼくが、ぼんやりしているように見えたようだ。兄上はとても心配そうにぼくの顔をのぞきこむ。
『顔が良いっ』
心の中の何かが、ぼくの胸をきゅんとさせながら言った。そのせいか、兄上の顔も見慣れているはずなのに、改めて美しいことを認識して照れてしまう。
「大丈夫です。ぼくは頭を打ったのでしょう? ちょっと記憶が混乱していますが、兄上のこともちゃんと覚えていますし、休めば治ります」
心の声を放っておいて、ぼくは兄上の問いかけに答えた。
どちらかというと、あまり追及しないでほしい。自分自身まだわからないことばかりだし。そして、照れるから麗しい顔をあまり近づけないで、とも思う。これはぼくの中にいる人の気持ちだろうか?
「何? 記憶が混乱? それは大丈夫ではないだろう。どうしたら治るのだ?」
なのに、にわかに慌て始めた兄上がさらに顔を寄せてくるから、ぼくは照れと恥ずかしさと頭のモヤモヤで目が回りそうになった。
「落ち着いてください、レオンハルト様。そう騒ぎ立てては、サリエル様が余計混乱なさいます。意識を失ったあとは記憶が曖昧になることもございますが、早く治すには安静と休養が一番です」
しかし、医師がそう言ってなだめてくれたおかげで、兄上もうなずいて離れた。ナイス、医師。
「そうか、では早くサリュを休ませないとな。続きの部屋にエリンも医師も残しておくから、何かあったらすぐに呼び鈴を鳴らすのだぞ」
兄上はそう言うと、ぼくを再びギュッと抱きしめる。でも、まだ不安げに表情を歪めていた。
「わかりました、兄上。お忙しい中お見舞いに来てくださり、ありがとうございました」
ぼくの口からはスムーズに敬語が出てくる。それは今まで丁寧な言葉遣いを日常的にしていたからだと思う。
そして、まだ十一歳の兄上が魔王の長男として、そして次代の魔王候補として魔王城の仕事を引き受けていて忙しいことも覚えている。実は、魔王である父上はあまり仕事熱心な人ではない。そんな魔王に代わって、兄上が国の采配を担っているのだ。
だから、たかが義弟であるぼくの見舞いなどで、兄上の手をわずらわせるわけにはいかない。
「何を言うのだ、サリュ。私の大事な弟の意識がやっと戻ったのだぞ、国なんか放り出しても駆けつけるに決まっている。さぁ、早く良くなれ」
さりげない仕草でぼくの額にチュッとキスして、兄上はミケージャとともに部屋を出ていった。
『え、キス? 恋人のような甘いキス? 超絶美形のチュウぅぅ! きゃぁぁぁ、ぼくと兄上は兄弟なのにぃぃ? こんな間近で兄弟BL、萌えぇぇぇ!!』
中の人が興奮して胸をドキドキさせる。これはぼくの胸なので勝手にドキドキさせないでほしい。
そして少し距離感が近いけれど、これは家族の挨拶なのだ。いつもの挨拶。びぃえ……はよくわからないけど。とにかく中の人にそう言い聞かせ、ぼくは高鳴る胸を落ち着かせた。
ぼくに、このような親しげな挨拶をしてくれるのは、兄上だけ。
兄上はいつでもぼくの特別で、一番ぼくを気にかけてくれる人なのだ。
みんなが部屋を出ていって、ひと息ついてから、ぼくは頭の中を整理してみることにした。
まず、口から出る言葉と頭の中で考える言葉遣いが違う。考える内容が違うこともあった。
頭を打ったからか一瞬記憶が怪しかったときもあったが、今現在サリエルであるぼくの意識はちゃんとある。育ってきた状況や記憶も、どんどん思い出せているところだ。
しかしぼくとはまったく違う、言葉遣いが雑で、客観視していて、備考欄を見てもあまり動じない誰かが、どうやら体の中に……いる。確実に、いるね。
そこまで考えて、ぼくはその誰かが今までもぼくの中にいたのかもしれないと思いついた。気を失う前も、たまに『パソコン』とか『電化製品』という、この世界にはない物の名前や言葉が出てくるときがあったのだ。
死を意識した出来事を今回経験したことで、その誰かがグッと前に出てきた、のかな?
だけど、その誰かが胸の内で何かを言ったところで、特に支障はないなと思った。ちょっとうるさいし、胸をドキドキさせるのは鬱陶しいけど、まぁいいでしょう。
というわけで、ぼくはベッドをヨジヨジと降りた。
手と足が短くて、降りるのにちょっと苦労する。でもぼくの備考欄に何が書いてあるのか、先ほどから無性に気になっていたから、がんばった。
室内には、四つ葉のクローバーをくわえた小鳥の彫刻が施された白い家具が一式そろえられていて、可愛らしい子供部屋という印象である。
その家具のひとつであるクローゼットの中に姿見があるので、ぼくはそこへ向かい、扉を開けた。
その瞬間……驚愕のあまり目が真ん丸になってしまった。
鏡の中に、丸々と太らせるだけ太らせた、精肉工場行き待ったなしのニワトリがいる!?
いや、本当のニワトリではなく、びっくり顔のぼくなのだけど。
寝間着がズボンなしの白いネグリジェだったからそう見えたのかもしれない。体型が丸くて、肌の色が白かったからかもしれない。
でもニワトリだと思った一番の要因は、赤い髪の寝癖が頭頂部でピヨッと跳ねていて、それがニワトリのトサカのように見えたからだ。
『いやいや、ぺっかり開いた真ん丸の目は可愛いよ。真っ赤な瞳の中に花が咲いているじゃん。ひまわり模様の虹彩なんて、レアだよ、レア。頬肉はたっぷりしていてアレだけど、まぁ、幼児はもっちりしているほうが可愛いってもんだ。トサカもさぁ、アホ毛だと思えば可愛く見えなくもないじゃん。つか、横髪シャギー入れて頬肉を隠そうとしているのが姑息だけどな、ハハハ』
中の人に励まされるような、けなされるようなことを言われ、ぼくは悔しさのあまり寝間着を丸い手で握りしめる。
というか、ぼくはなんで標準体型だと思いこんでいたのだろう? 生まれてこの方、ずっともっちりだったというのに。
きっと、ぼくを励ます謎の中の人が細身だったのだろう。自分が太っているなんて思ってもみなかったのだろう。その意識に引きずられて、ぼくまでそう思いこんでしまったのだろうっ。
しかし、この泣きそうなくらいの衝撃によって、自分のことをはっきり思い出した。
【魔王の三男だけど義理の息子で、ツノなし魔力なし、もっちりぽっちゃりの用なし落ちこぼれ幼児】であることをぉぉ!
『マジかっ! 魔王の三男に転生したといっても底辺スタートじゃないか。魔王と血縁のない義理の息子ってことは、権力もなしかっ! それにぼくの命を狙う妹もいるんだろ? てか、生き残るだけでも困難なムリゲーなんじゃね?』
ムリゲーの意味はわからないが、とりあえず中の人は放っておいて、本題の備考欄を見てみる。しかし、そこには単純に『サリエル、悪役令嬢の兄(尻拭い)』と書いてあるだけだった。
「えぇぇ? それだけ!? レオンハルト兄上の備考欄は何行も書いてあったのに、ぼくはたった一行? 十六文字? というか誰が書いたか知りませんが、兄上とぼくでは熱量が段違いなのですけど? もっちりチビのニワトリには興味ないってこと? ひどいっ。むっきぃぃっ」
怒りのボルテージが高まるが、この中にもきっと重要な言葉が隠されているはずだ、と思い直し、心を落ち着けて吟味してみようと試みる。
ぼくは悪役令嬢の兄。ぼくの妹はディエンヌしかいないから、ディエンヌが悪役令嬢になるということだ。あの極悪非道で、兄でさえ笑いながら殺そうとする悪魔のような妹(五歳)だから、それにはうなずくしかないが。
なぜぼくがディエンヌの尻拭いをしなければならないの?
それだけは勘弁してほしい。無理。関わりたくない。一抜け希望である。
そうは言っても、ディエンヌとは異父兄妹だから血の繋がりがあるのだ。
やはり兄であるぼくが、彼女の尻拭いをしなければならないのだろう。
しかしたったの一文だけど、吟味したらやっぱりショッキングな内容だったな。
★★★★★
朝、目を覚ますと、昨日と同じ光景が目に映る。
ベッドの天蓋の見慣れた幾何学模様。横を見ると、そろいの白いファンシー家具。
ここはぼくの寝室だ。今日はそれらを見ておかしいとは思わなかった。ぼんやりしていた頭や思考もすっきりしている。良かった。
手を広げて大の字になってもまだ余裕がある大きなベッドの上で、ぼくは布団をはいで、コロリーンと体を転がしベッドから床に着地した。うむ、絶好調である。
そして、庭に面した掃き出し窓を開けた。
どんより曇った空を見上げると、メガラスがギャースと鳴きながら飛んでいる。黒い鳥の魔獣でカラスに似ているが、体長はその三倍大きく、ギザギザの牙があってカラスよりも禍々しい。
『メガラスって、メガとカラスの合体か?』
相変わらず、ぼくの中で誰かが言っている。そこは昨日と変わっていなかった。がっかり。
彼か彼女かわからないが、ぼくの心の内側に住み着いているコレのことは『インナー』と呼ぶことにした。昨日はインナーの出現に少しパニックになったけど、ひと晩冷静に考えて、ぼくの中の大半はサリエルだとわかったから、生活に影響なしと判断したのだ。
『つか、普通は六歳っていったら自我がなくてさ。インナーが入れ替わったりしちゃうシチュじゃね? 瞬間記憶能力持ちとか、どんなチートだよ。ま、他はダメダメだけどぉ』
インナーはぼくの口を使って普通に会話してくるようになった。なんだか心の中にツッコミを飼っているみたいだ。でもひとりでボケツッコミしていたら兄上が心配するから、人様の前で口を使わないよう注意してある。
「そうです、ぼくはダメダメなんです。だから、この世界で生きるのは大変ですよ?」
忠告するかのように指で胸の真ん中を押すと、インナーが答えた。
『魔王の三男で、瞬間記憶能力持ち。チートで異世界無双かっ!? なんて一瞬思ったけど。宝の持ち腐れ。ツノなし魔力なし、おデブなニワトリで無双するビジョンは見えないから、確かに面倒くさいね』
会話にチラチラ出てくる瞬間記憶能力というのは、見聞きしたものを忘れられない能力である。ぼくには魔力がないけど、人様の会話を一字一句違えずに覚えられる能力だけはあるのだ。
赤ん坊の頃に魔王と母上がした会話を覚えているのも、そういう理由があるからだ。
母上が魔王の子を身ごもり魔王城に招かれたとき、ぼくを養ってやると魔王が約束した。その場面を自分で見て聞いて覚えている。
でも、瞬間記憶能力がチートだなんてインナーは言うけど、この国、魔族が住むアストリアーナ魔王国、通称魔国では、魔力が強大な者が優遇される傾向があるから、物覚えがいいだけの能力はあまり有用ではない。
魔力の多さの次には腕力が優遇される。つまり力で弱者をおさえこむ、圧倒的で典型的な恐怖政治の国なのだ。
それに、一度見たものを忘れないぼくの能力はちょっとはすごいのかもしれないけど、ぼくは応用ができないから、その知識で何をしたらいいのかがわからない。
教科書のどこのページにこういう記述がある、とは言える。けれど、その記述を踏まえて何か行動したり作り出したりすることはできない。テストで満点を取ることもできるが、決して満点を取ることが重要なのではなく、その知識が己の実になっていなければ意味がないのだ。
知っていることを活用できてこそだと、ぼくは思う。
『贅沢ぅ。テストで満点を取ったら、ぼくなんか鼻高々だけどね』
インナーがぼくの口を使って、拗ねた。なんでぇ?
「インナー、テストで満点取っても、ここでは魔力でぺしゃんこにされちゃうんだよ。でもこの能力のおかげでインナーに乗っ取られなくて済んだから、少しは役に立っているのかもね」
普通なら六歳は幼児と言われる年齢だけど、これだけいろいろなことを考えられるのも、この能力のおかげだ。六年分の自我がしっかり残っていて、ぼくの記憶の量は膨大だった。そのせいでインナーはぼくの中で幅を利かせられなくなったようなのである。
『なぁなぁ、もっとこの国のことを教えてよ。母上がサキュバスってなぁに?』
好奇心旺盛にこの国のことを聞いてくるインナーに、ぼくは心の中で説明した。
サキュバスは、淫魔だ。
持ち前の美貌で人族を誘惑し、夢の中に潜りこみ、性交渉をして生気を奪う種族である。魔族が相手なら、普通に性交渉をして生気や魔力を取りこみ、糧にする。
しかし、他者から生気を取りこめないと生きていけない弱い魔族ゆえに、下級悪魔と呼ばれていた。下級悪魔は、魔王という強大な魔力を持つ者に普通は近寄ることができないはず。なのに、母上はなぜか魔王と懇意になってディエンヌという妹まで産んでしまった。
これは奇跡や快挙に近いらしい。
ディエンヌは魔王の魔力を受け継いでいるから、魔王城でもお姫様扱い。だけどぼくは下級悪魔と誰とも知れない父親との間の子供だから、家族内格差は推して知るべし、言わずもがなである。
『他には何があるんだ? 魔族ってなぁに?』
なんともアバウトな質問に困ってしまうけど、思いつくままに説明する。
魔族は、中には空を飛べる人もいるけど、普段は地を歩き、馬車に乗る。彼らの町もあるし、商いもしている。その辺りは人族とほぼ変わりはない。
しかしトラブルが起きると、暴力で解決するような乱暴な気質がある。でも人が集まればそれなりにルールもあるから、有無を言わさず皆殺しなんかは、よっぽどでないとしない。いつも殺伐としていたら、生活が成り立たないからだ。
魔国には、たまに人族の国から勇者がやってくる。そして戦争になったりならなかったりするけれど、大概は穏便にお引き取り願う。こちらが悪かったら謝って、向こうが悪かったら話し合いをして解決するのだ。
ちょっと気性が荒々しくて体が丈夫、そんな理由で魔族は人族に恐れられているけれど、怒り心頭で荒れ狂ってでもいなければ、基本話は通じる。平和外交が一番である。
それから魔族は契約をきちんと守る。意外かもしれないが、交渉ごとは信用が第一だとわかっているからなのだ。
あと自由恋愛で、魔王はハーレムなんか作っちゃっているけど。一部の魔族は愛情深くて、伴侶をデロデロに愛しちゃう傾向がある。そういうところ、どちらかと言えば人族よりピュアなのだ。
人族のほうが、そんなひどいことしちゃうの? というようなことを平気でするからね。ズルとか、嘘とか、騙すとか、殺すとか……
『うわぁぁ、怖いねぇ。人間、怖いぃ』
なんかインナーが胸の内側で震えているのを感じる。基本情報でぼくの心を揺さぶらないで。
『なぁ、同じ大陸に魔族と人族が暮らす国があるんだぁ? 変なの』
「変かな? 獣人族の国や妖精族の国もあるよ。あと魔獣もいるよ。空飛ぶメガラスがドラゴンに食べられるとか、たまにあるみたい。ドラゴンはまだ見たことがないけど。大きな鳥が小さい鳥を捕食することは、よくあることだよね?」
『よくあるかぁ? まぁいいか。じゃあここは魔界ではなく異世界だね。魔界だったら世界中が魔物や悪魔で占められているじゃん?』
「そういうものですかねぇ」
こんなふうに偉そうに説明しているけど、実はぼく、魔王城の外に出たことがない。だから、いろいろな国や種族がいるというのは全部本の知識である。
獣人や魔族、魔獣は見ているし、勇者の話もよく話題にのぼるので、この世界にいろいろな種族がいることは察しているけど、すべてを知っているわけではない。
だからインナーが異世界と言うなら、それでいいんじゃない? 異世界という言葉の定義はわからないが。
短い首を傾げると、そのタイミングでノックの音が響いて、エリンが部屋に入ってきた。
「サリエル様、おはようございます。お体の具合はどうですか? お食事はできそうですか?」
綺麗な所作でお辞儀をし、ぼくにたずねる。
エリンは白狼獣人の侍女だ。とはいえ、エリンの顔はうら若き人間の顔。魔族がツノを生やしているとしたら、獣人はそこに獣の耳が生えている。
『ケモミミっ。そして、愛らしき尻尾っ、白くてふさふさの尻尾ぉぉぉ』
インナーはぼくの中でそう叫び、彼女のスカートからちょっと出ている尻尾に異常なほど興奮を示す。
言いつけを守って口に出して言わなかったのは偉いよ。でもぼくは心の中で『変態ですか?』と軽くののしっておいた。
そしてそれを表に出すことなく、ぼくはエリンのすべての問いに、うむと返す。インナーとのトークタイムは終了して、朝食の席に向かおう。
だがその前に、部屋に入ってきたエリンに手伝ってもらい、身支度を整えた。
お湯で濡らしたタオルをいっぱい持ってきたエリンは、アイボリーで寸胴なぼくの寝間着を脱がせ、パンツ一枚になったぼくの全身をタオルで拭きあげた。肉と肉が折り重なる皺の中まで拭かれ、気持ちが良いけど、とてもいたたまれない。
昨日まではそんなことを思わなかった。腕を上げたままくるくる回って、エリンになんの気もなく拭かせていたというのに。
今思うと、うら若き乙女にもっちり肉を拭かせていた自分がとても恥ずかしいし、とにかくこれはダメなやつだという意識が湧き上がる。この意識は、おそらくインナーの気持ちなのだろう。
でもダメだと気づけるのは良いことだ。早く自分でいろいろとやれるようになろうと、ぼくはこのとき心に決めたのだった。
体を拭いたあと、エリンが濃い緑色のズボンを穿かせてくれる。それからフリルのついた白いシャツと、ズボンと同じ生地の緑色のジャケットに袖を通した。
これもインナーの意識だろうけど、ぼくは着替えをひとりでできないことが、情けないような申し訳ないような気になってしまったのだ。だからシャツを自分一人の力で着てみることにした。
エリンは『サリエル様が大人になられた』って感動している。
しかし、丸くてぶっといこの指では穴にボタンを入れられなかった。
時間がかかりそうだったので、やむなく断念する。だがいずれ必ず、自分だけでボタンを穴に通してみせよう。ぼくはそう決意を新たにしたのだった。
たぶんインナーは、着替えや身支度ができる自立した人だったのだろう。着替えを侍女に任せるぼくの甘えを許しません、という気持ちをひしひしと感じた。
『つか、可愛い女の子の前でパンイチとか、体を拭いてもらうとか。無理。恥ずかしぃぃ』
ごもっともでございますと胸のうちで謝る。しかし、ぼくはまだ六歳なので少し大目に見てもらいたい。
インナーは欲望に忠実で面倒くさがりの割に、恥ずかしがりだったり人の目を気にしたりする小心者だ。なかなかに複雑な心理を持っているから、同居するのは難しいかもしれないな。
そんなこんなで身綺麗になったぼくは、ようやく朝食の席であるダイニングルームへ向かった。
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クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
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