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1巻
1-1
しおりを挟む第一章
1
「D級冒険者ピート、お前を犯罪者として拘束する」
目の前には白ひげを蓄えた目つきの鋭い老人がいる。このルケニア王国王都の冒険者ギルドのギルドマスターだ。
彼は俺に厳しい目を向けている。元Sランク冒険者らしく、並の冒険者ならこの眼光を浴びると何も言えなくなってしまうのだが、俺ははっきりと彼の目を見返した。
「身に覚えがありませんが?」
何ら後ろめたいこともないので、いちいち怯える必要がないからだ。
「とぼけるな! 貴様はダンジョン内で他の冒険者にモンスターを擦り付けて危険に追いやったのだろう?」
ギルドマスターの言葉を聞いて考えてみるが、やはり身に覚えがない。
俺はソロでダンジョンに潜っているが、人との接触は避けているし、仮に接触する場合でも細心の注意を払っている。
「やはり間違いではないかと?」
結論は同じで、再度ギルドマスターに聞き直した。
するとギルドマスターはさらに厳しい目で俺を見ると追及してくる。
「その証拠を出せるのか?」
だが、基本的にソロで人目を避けて活動しているので、ダンジョン内での俺のアリバイを証明してくれるような人間はいない。
「逆に聞きたいのですが、どの冒険者が俺のことを訴えたのですか?」
なので、その「モンスターを擦り付けられた」と言った人物の名前を聞き、誤解を解くことにした。
「そっ、それは言えん」
ところが、ギルドマスターは焦りを浮かべると、質問への回答を拒否してきた。
「それではこちらとしても身の潔白を証明しようがない。せめて本人にもう一度確認してもらえませんか?」
何やらきな臭いものを感じつつも、ギルドマスターに発言の撤回と再確認をお願いしたのだが……。
「お前たちっ! 入ってこい!」
ギルドマスターがそう言うと、高ランク冒険者が数人部屋に入ってきた。
「こいつは言い訳ばかりしおって反省の色が見えない! 国に引き渡すから連れていけ!」
冒険者はあっという間に俺を拘束すると、俺から杖を取り上げてしまう。
「どういうことですかっ! 俺はやっていない!」
俺を拘束する冒険者の中には、普段付き合いがある者の姿があった。ギルドマスターは別にして、彼ならば俺のことを信じてくれるはず。
そう考えて声を上げるのだが……。
「ええい、その薄汚い口を閉じさせろっ!」
「ムグッ!」
布で口を覆われ言葉を封じられた。
「ギルドマスター、ピートはどうなるのですか?」
俺が言葉を封じられたところで、知り合いの冒険者はギルドマスターに俺の今後の処遇について確認した。
「ちょうど『深淵ダンジョン』へ犯罪者を投獄する時期だ。一緒に連れていく」
その言葉を聞いて、俺の背筋が冷たくなる。冗談ではない。そんな場所に行かされてたまるか……。
「し、しかし、一般的な犯罪者でも罪が確定するまでは勾留するのが原則では?」
知り合いの冒険者は困惑しつつも粘り、ギルドマスターに確認するのだが、
「くどいっ! 生意気な態度からして間違いあるまい! 歯向かうようなら貴様も仲間とみなすぞ」
その一言で全員黙り込むのだった。
「それじゃあお前たち、中に入ったら立ち止まらずに進むんだぞ」
周囲を武装した兵士が取り囲んでいる。全方向から槍が突き出されていた。目の前には洞窟の入り口があり、入り口の上には数字が刻まれている。
「畜生! ふざけやがってっ!」
「殺してやるっ!」
周囲ではひげを蓄えた人相の悪い男たちが兵士に向かって声を荒らげている。彼らは凶悪な犯罪者で、殺人や強盗、他にも誰かを不幸に陥れてここにいる。
「黙れ! この場で刺し殺されたいのか?」
兵士の言葉で一斉に槍が突き出され、男たちは下がった。
「今から食糧と装備品を配る。言っておくが、逃げようとか余計な考えは捨てるんだぞ? 貴様らにできるのはこの忌むべきダンジョンに入ることだけだ」
袋を受け取った犯罪者から順に洞窟の中へと消えていく。
その際に、入り口の上に刻まれていた数字が減少していく。これは、このダンジョンに生贄を捧げると減少する数字だ。
やがて、俺の番となった。
「あの、俺は冤罪なんです! 手違いでここに連れてこられただけで……」
ここに入るなんて冗談じゃない。俺は何一つ悪いことをしていないのだ、身の潔白を証明するため最後の足掻きをするのだが……。
「いいから貴様もとっとと入れっ!」
背中を強く押され暗闇が目の前に迫る。この境界線を越えたら戻れない、そう理解しながら……。
俺は深淵ダンジョンの入り口を潜るのだった。
★
中に入ると先程の犯罪者たちがその場に佇んでいた。
洞窟全体が光っているようで、松明や光明の魔法を使う必要はなさそうだ。
「俺、そんな重い罪を犯してないのに……」
「私だって、店に嫌がらせする相手に注意しただけなのに……」
中には到底犯罪者には見えないような者がいる。俺と同じく冤罪で投獄された者もいるようだ。
後ろを見ると、あとから送られてきた人間の姿が見える。どうやらこれで全員のようで、壁を見ると出口は影も形もなかった。
「まさか俺が犯罪者と一緒にあの深淵ダンジョンに放り込まれるとはな……」
俺は溜息を吐くと、現状を正しく認識するところから始めた。
今回の件は、国内での犯罪者の数が足りずに起こったものなのだろう。
ここは古くからある深淵ダンジョンと呼ばれる場所だ。
このダンジョンができたのがいつなのかは記録にない。少なくとも数百年前にルケニアが建国された頃には既にあったらしい。
大陸の中央にある絶壁に囲まれた場所で、ルケニアを含む十二国の中心に位置している。
それぞれの国に面した壁には巨大な扉が設置されており、そこからダンジョンに入ることができる。
だが、扉が開くのは一年に一度だけ。
このダンジョンは一定人数の人間が入ると閉じる。逆に言えば、一定の人間が入らなければ開きっぱなしになってしまうのである。
なお、今までこのダンジョンに入って生きて戻った者はいない。
以前は、このダンジョンを攻略しようとする国もあった。
だが、毎年精鋭を送り出しては誰も帰ってこなかった。
やがてその試みは国力を低下させるまでになったため、隣国とのパワーバランスが崩れることを懸念する声が聞かれるようになる。
そうして国々が採った方策は、精鋭を送り込むのをやめ、ダンジョンの扉を開けっぱなしにすることだった。
だが、それによりダンジョンから大量のモンスターが発生。スタンピードが起き、一つの国が壊滅しそうになった。
その日以来、周辺十二国は毎年ダンジョンに犯罪者を入れると決めた。
「つまり……嵌められたってことなんだよな」
気付いたのはダンジョンの前に立たされた時。俺以外にも何名か、絶望した様子を見せていた人間がいる。中にはギリギリまで無罪を訴えていた者もいた。
おそらく、今年は犯罪者の数が足りず、その補填がギルドに回ってきたのだ。その結果として、ソロで冒険をしている俺が選ばれたというわけだ。
俺たちは水と食糧を渡され「なるべく奥まで進むように」と命じられる。
以前、スタンピードが起きていることから、モンスターが存在することは周知されている。できる限り内部の敵を削って欲しいからか、武器や防具も与えられている。
現状を正しく認識した俺は周囲に声を掛けることにした。
「皆、聞いてくれ」
犯罪者やそうでない者も一斉に俺を見る。普段人から注目されるのに慣れていないので緊張する。
「それぞれ違う事情でここにいるようだが、ここは生存不可能と言われている深淵ダンジョン。俺たちは、国の犠牲に選ばれてしまった」
「ふざけやがって!」
「だからなんだってんだよ!」
威勢の良い声が聞こえる。ここで下手に委縮されるよりはましだろう。
「こうしてここにいても仕方ない。これから先は皆で生き残ることを考えたいと思っている」
俺の提案に、犯罪者たちは互いの顔を見合わせた。感情的になって争っても誰も得をしないとわかっているからだろう。
やがて、俺の言葉が浸透したのか皆の意思が統一される。
「確かに……何が出るかわからねえこんな場所じゃ協力するしかねえな」
「ああ、その通りだな」
「頼むぜ魔導師」
魔法が使える人材は他にいない様子。皆が俺の提案を受け入れてくれたようで安心する。
「それじゃあ、皆で一緒に生き残ろう」
噂に名高い深淵ダンジョンを攻略するには心許ないメンバーではあるが、俺たちはダンジョン攻略の一歩を踏み出した。
★
「ひとまず、モンスターが出たら俺が倒す。前衛の人間は、俺の魔法の詠唱が終わるまで敵を近付けさせないようにしてくれ」
最初に隊列を決める際、戦闘経験がある犯罪者を前衛にした。
幸いともいうべきか、少なくともDランク冒険者相当の経験がある者が数名いたのだ。
それぞれの罪状は強盗・殺人・強姦と目を背けたくなる犯罪を犯している者たちだが、今は運命共同体なので目を瞑るしかない。
「へっ、任せとけ。雑魚モンスターなら俺がぶっ殺してやる」
「牢屋暮らしで身体がなまってるからよぉ」
「おめえらっ! ぐずぐずするんじゃねえぞ!」
彼らの素行は悪く、戦えない人間に対し怒鳴ったり恫喝したりしているので、周りの空気は最悪だった。
しばらく進んでいると奥のほうからモンスターが飛んできた。
「ジャイアントバットかよ」
洞窟に棲むコウモリ型モンスターで、飛び回って噛み付いてくることからわりと厄介なモンスターだ。
「ちっ! くそっ!」
「取り付いてきた!」
「痛てえええええっ!」
一匹一匹の攻撃は大したことないのだが、数が多いので無傷では済まない。
俺は魔法の詠唱を終えると、威力を抑えて解き放った。
「ファイア」
熱風を浴びせたジャイアントバットが地面に落ちる。
やつらの羽は薄く燃えやすいので、ちょっとした熱でも穴が開くのだ。
「あっちい!」
「てめぇっ! 何しやがる!」
「今のうちに地面に落ちたやつに止めを!」
俺は前衛の前に走ると、まだ奥に大量にいるであろうジャイアントバットに向けて魔法を放つ。
「ファイアボール」
巨大な火球が発生し前方へと飛んでいく。
ドオオオオオオオンッ!
爆発音とともに、奥に潜んでいたジャイアントバットが焼け死んだのか、嫌な臭いが漂ってきた。
「うっ……臭え」
前衛の三人はその臭いを嗅ぐと顔を歪める。
「火が消えたら突破するぞ」
今の攻撃でジャイアントバットは全滅したはず。
俺たちは火が落ち着くと先へと進んだ。
時間が経つにしたがって、壁の光が徐々に暗くなってきた。
外の世界と時間が一致しているのか、夜になると明かりが消える仕組みのようだ。どのような技術が使われているのか非常に興味深く感じる。
「それにしても、奇妙な構造だよな……」
道中作成してきた地図を見ていた。
これまでの道で何度も分岐が存在していたのだが、どの分岐も左右と正面に分かれている。
一応ジグザグに進んでは来たがどこまで行っても同じ分岐なので、このダンジョンを作った者の意図を感じる。
「多分、これはダンジョンというよりは人工の建造物に近い」
等間隔で分岐が用意されていてすべてが繋がるようにできている。これなら方角さえ見失わなければ元の場所に戻ることもできるだろう。
「つまり、これはダンジョンというよりは、入ってきた者をある一定方向に導いているという……」
外の世界で聞いた深淵ダンジョンの推測と、自分で見た経験から、やがて最適解が導き出される。ここを抜け出す手がかりに繋がろうとした瞬間――。
「勘弁してください!」
言い争いが聞こえてきた。
「どうした?」
俺が駆け付けると、無実の罪で投獄されたであろう老人と、犯罪者の三人が争っていた。
「いいから、黙って言うことを聞きやがれっ!」
「俺たちが前衛で戦ってやってるから、こうして生きながらえてるんだろうがよぉ!」
「てめえらは俺らに食糧を渡す義務があるんだよ!」
必死に袋を抱える者たちから、犯罪者が食糧を奪おうとしている。
「やめろっ!」
俺は憤りを覚えると、犯罪者たちを怒鳴りつけた。
「な、何だよ、お前の分もあるんだぜ」
「へへへ、俺らはこのグループの要だからな。ちゃんと分け合おうぜ」
「女も思いのままだ。お前だって嫌いじゃねえだろ?」
「ひっ!?」
最後の一言で、女性の犯罪者が怯えた目で俺を見てくる。
「いいからその手を放せ」
俺は杖を構えると前衛の三人に告げる。
「外の世界での犯罪についてはこの際だ、目を瞑ろう」
杖の先に魔力を溜め、火球を作り出す。
「だけど、俺の目の前で弱者を虐げるというのなら考えがあるぞ」
これは脅しではない。たとえ戦力になるからといって、その攻撃性を弱者に向けるような者を擁護するわけにはいかない。
俺の本気が伝わったのか、犯罪者たちはヘラヘラとした笑みを浮かべ、老人から離れた。
「へへへ、悪かったって」
「ちょっと調子に乗っちまっただけなんだ」
「俺らも協力したいと思ってるんだぜ」
取り繕うように言葉を並べる。
「大丈夫ですか?」
「ううう、ありがとうございます」
老人はホッとすると礼を言った。彼らに殴られたのか顔にアザができている。
「こんなところで争ってる場合じゃないんだけどな……」
深淵ダンジョンに潜ってからまだ半日しか経っていないにもかかわらず、問題が起きている。
俺は溜息を吐くと、この先やっていけるのかと頭を悩ませるのだった。
★
翌日から、犯罪者の挙動に注意しながら探索を進めるようになった。
モンスターとの戦闘は今の戦力で何とかなる。問題は……。
「くそっ! また罠かよ」
落とし穴に落ちた犯罪者を引っ張り上げるのに苦労している。致命的な罠ではなく、俺は犯罪者が引っ張り上げられるのを待つ間地図を見ていた。
「多分、もうすぐ罠にかからなくなるとは思う」
昨晩、これまでの進行ルートで気付いたことがあり、今日はその法則に従い分岐を決めてきた。
「どういうこった?」
犯罪者の一人が俺の言葉を拾い質問してきた。
法則が確信に至ったので、皆に説明することにする。
「出発地点がここで、俺たちは今こう分岐を進んできている」
必ず三つに分岐しているルートとそれをジグザグに進んできた道筋、そして罠のあった位置関係を示してやる。
「そして今俺たちがいるのはここ」
現在地を示したあと、俺は推測でダンジョンの構造を書き加え皆に見せた。
「これって……」
驚く男に頷く。
ダンジョンの構造は円を描いており、すべて中心に向かうようにできていた。
「罠があるのは、俺たちの入り口から北上した際の側道。直進した場所には罠が配置されていない」
これは罠が侵入者を嵌めるためのものではなく、正しい道筋に誘導するためのものだからだろう。
「おそらく、このまままっすぐ進んだ先に何か手掛かりがあるはずなんだ」
それが深淵ダンジョンの終点なのか、もしくは……。
「へへへ、なるほどねぇ」
「流石は魔導師、頭がいいな」
「ああ、そこまでわかればこっちのもんだ」
犯罪者たちも希望を見出したのか笑みを浮かべる。
この時俺はもっとその笑みの意味を考えるべきだったと、後程後悔するのだった。
夜になり、洞窟の明かりが消えたことからその日の移動をやめ休息を取っている。初日に争いがあったことを考えた俺は、他の人間を守るためできる限り一緒にいることにした。
「ちょっと来てくれ!」
そんな中、犯罪者の一人が血相を変えて俺を呼びに来た。
「どうした?」
「それが、誰か落ちたみたいなんだ、明かりをくれないか?」
「そんな馬鹿な、目に見える落とし穴だぞ」
順調にダンジョンを進んでいる最中、あからさまな落とし穴を発見した。そこを越えたところでその場を背に休息をとっていたのだが、誤って落下した人間がいるのだと言う。
俺は慌てて魔法で明かりを出す。
「おーい、大丈夫か?」
落とし穴を覗き込み声を掛ける。だが、思っているよりも穴が深いのか奥まで明かりが届かず声も聞こえなかった。
「気絶している? あるいは……?」
落ち方が悪くて既に絶命している可能性もあった。
「点呼を取って誰がいないか確認を」
後ろを振り返ると、
「へへへ」
三人の男が俺を取り囲んでいた。手にはいつの間にか俺の杖が握られている。
「何のつもりだ?」
協力しなければ深淵ダンジョンで生き残れないのは理解しているものと思っていた。
「これまではあんたに従ってきたがもう我慢の限界だ」
「俺たちは好きにやらせてもらうさ」
「幸い、ここからの脱出方法は聞き出したからな」
杖を取り上げられてしまうと簡単な魔法くらいしか使えない。
「あんたの分まで俺たちが生き延びてやるから安心するんだな」
ドン、と背中を押された俺は、落とし穴へと落下した。
★
「ちっ、まさかこのタイミングで裏切ってくるとは……」
俺を必要ないと判断するにはまだ早い。裏切るならダンジョンを出てからだと考えていたのは早計だった。
落とし穴の壁はつるつるしているので登ることができない。
「くそ、せめて杖があれば……」
犯罪者たちに奪われていなければどうにかなったのだが……。
俺はひとまず落ち着くことにした。
「どのくらい経ったかな?」
落とし穴に落とされてから丸一日は経過しただろうか?
俺は顔を上げるとぽつりと呟く。
「ん?」
何気なく目の前を見ていると、壁にある溝が気になった。
自然な溝かと思ったが、何やら縦に伸びており不自然だ。
微かに魔力の反応を感じる。
「もしかすると、魔導トラップだろうか?」
魔力に反応して作動する罠があるのだが、これまで深淵ダンジョンでは見かけなかった。それがなぜこのような落とし穴に仕掛けてあるのか疑問が浮かぶ。
「どちらにせよ他に脱出手段もないし試してみるか」
犯罪者どもが戻ってくる可能性がないので、このままなら間違いなく餓死する。罠を発動させた上で状況を打開しようと考えた。
壁に手を当て魔力を流すと、魔法陣が浮かび上がり反応があった。
「動く……?」
壁が動き少し経つと、そこにはかろうじて潜り抜けられそうな入り口ができていた。
「まさか、こんな仕掛けになっていたなんて……」
あからさまな落とし穴だったので、落ちる人間はいないだろう。
もし仮にいても、仲間がいれば引き上げてもらえるし、魔力を認識できなければ気付きようがない。
「一体何のためにこんな仕掛けを?」
巧妙に隠されていたのなら理由があるはず。俺はその部屋に入った。
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