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1巻
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しおりを挟む序章
「えー、いつもあたしたち兄妹の配信を見に来てくれてありがとねー。七宮紗哩でーす! カメラマンをやってくれてるのはいつもどおり、お兄ちゃんの七宮基樹です! 今からあたしたちの、最後の配信を行います」
俺が構えるカメラに向かって妹の紗哩が話し始めた。
明るい髪色のサイドテール、曇りのない素直な笑顔はわが妹ながらいつ見てもかわいい。
ま、頭の中が最高にアホなんだが。
:同時接続数 4人
その数字を見て、俺たちの人生の総決算が四人かと思ったら逆に乾いた笑いが出てきた。
まあこんなもんだよな。
〈え、最後ってもう配信やめちゃうの?〉
「いや、違うの。……今あたしたち、実は亀貝ダンジョンに来ています!」
〈はあ? 亀貝ダンジョンって日本唯一のSSS級でしょ?〉
〈シャーリーちゃんまだA級じゃん! お兄さんの基樹さんもA級でしょ?〉
「お兄ちゃんはこないだC級に落ちました!」
〈え、なんで降級してるの?〉
「それにはウケる理由があるんですけど!」
この妹なに言ってやがる、俺が降級したそのウケる理由って、お前のせいじゃないか。
「その話はまたあとでするね! いやー実はですね! ……お兄ちゃん、今回のこと言っていい?」
「ああ、言っちゃえ言っちゃえ」
俺の言葉に、紗哩は力強く頷いた。
「実は!! あたし、海外のめちゃくちゃ怪しい証券会社でレバレッジを死ぬほど効かせてえふえっくすなるものに手を出したところ、こないだの歴史的ユーロ安で一億二千万円の借金を背負っちゃいまして!」
〈はあ?〉
〈ゼロカットシステムあるんじゃないの? ほら、資産がマイナスにならないようにするやつ〉
「あると思ったんだけどない契約だったの! あたしの確認不足でぇす! えへへ!」
〈あれ、きみ、去年もなんかのマルチに引っかかって借金あったよね?〉
「そ~でーす!! 去年一度自己破産してまーす! だからさすがに今年は免責おりませーん! 終わりでーっす! あたし、死にまっす! 死ぬって言ったらお兄ちゃんも一緒に死んでくれるそうなので、どうせなら心中配信しまーす! ね、お兄ちゃん?」
「まあそういうことだ。お前ら、俺たちの最期を看取ってくれよな」
〈紗哩ちゃんは馬鹿だけどかわいいからなんとかなるよ! まだ十九歳の女の子ならいろんな稼ぎ方があるよ!〉
「さすがに一億二千万は無理だろ、最後にダイヤモンドドラゴンと戦って死ぬのが俺たちの目標だ。な、紗哩?」
「うん! ダイヤモンドドラゴンって、倒すどころか出会って生還した人すらほとんどいないからね! エンカウントするだけですごいんだから! じゃ、みんな、あたしたち行くね、見ててね~」
ダンジョン。
数十年前、それは突如として世界中に発生した。
実態はいまだ謎だが、探索者として入ると不思議なスキルをダンジョン内限定で得ることができる。
そのかわり、ダンジョン内には危険なモンスターがうろうろしており、命がけの戦いとなる。
だがモンスターたちは地上世界ではほとんど手に入らない、貴重なアイテムをドロップするのだ。
国会で特別法が立法され、十五歳以上のものに限れば登録さえすればダンジョンの探索が可能になっている。
そして、亀貝ダンジョンのダイヤモンドドラゴン。
あまたのS級探索者を返り討ちにしてきた、最悪、いや災厄のSSS級モンスターだ。
そもそも出会うだけでも至難の業であり、それに勝てる人間なんてほとんど存在しないのではと言われている。
ちなみに亀貝というのはダンジョンのある場所の地名だ。
俺たちは二人ともA級だから、SSS級ダンジョンのSSS級モンスターを倒せるわけない。
だけど今回俺たちは生きて帰ろうだなんて思っちゃいないわけで。
死ぬのが目的なのだ。だから、行けるところまでダンジョンに潜ってやろうというやぶれかぶれな計画だ。
ちらっとダイヤモンドドラゴンの姿をおがめるところまで行けたらラッキー、まあだめだったら死んじゃいましょう、という感じ。
両親も昔死んじゃってるし、頼れる親戚もいないし、二十二歳と十九歳の兄妹が一億二千万円の借金背負って暗い人生をのたうち回りながら生きるくらいなら、花火のようにパーッと華やかに散ろうっていうわけ。
生きて帰ることをあきらめさえすれば、ワンチャン最深部までいけるんじゃないか? と思ったのだ。
「よし、じゃあ見ててくれよな!」
俺ははりきってそう言ったのに、
〈犬の散歩行ってくるわ、おつー〉
:同時接続数 3人
いきなり視聴者が一人減った。
「……いてら。……見ててくれよな!」
ダンジョン内はなぜか電波が届くから、配信しながら探索することにする。
いままでもちょいちょい配信していて、数人の常連さんは見てくれたりするのだ。
これが超絶人気配信者とかなら同時接続数万人とかでサポートチャット、通称サポチャとかメンバーシップ登録とかでウッハウハなんだろうけど、同時接続三人じゃあなあ。
「よし、じゃあお兄ちゃん、行こうよ、死出の旅へ」
「……お前なあ……。なんかウッキウキで言ってるけど、これ、お前のせいだからな……」
「あ、はい、このたびはまことに申し訳ございませんでした」
頭を下げる紗哩。
はぁ。ほんと、仕方がない妹だ。
「言っとくけど、めっちゃこき使うからな」
「あ、はい、どうぞあたしをお好きなようにおこきつかいくださいませ」
「おこきつかうってなんか響きがエロいな」
「……どういう脳みそしてたらそう思うの」
★
よっし、今日も配信頑張るぞ、と針山美詩歌は思った。
チャンネル登録者数五百万人を誇る国民的人気配信者、針山美詩歌、通称みっしーはカメラに向かって満面の笑みを見せる。
サラサラの黒髪ショートボブ、やばいくらいに整いすぎていて知らない外国人とかからは“CGだろ?”とまで言われるその美貌、さらには底抜けに明るくて聞いているだけで前向きになれるそのトーク。
オタクネタからシモネタまでどこまでも品を失わずに喋りまくって、その上あらゆる配信関係者・芸能関係者から“あの子は聖人”とまで言われる人柄の良さ。
まさに日本一の配信者と言って良かった。
「おはみっしー!! 今日もみっしーの飼い主様たちがいっぱい来てくれてるねー!」
:同時接続数 55万人
飼い主様とは美詩歌のファンたちの通称である。初期のころ、みんなのペットというモチーフで配信していたころの名残で、実はあまり浸透していない。浸透していないのにいまだ言い続けているところがまた意固地でかわいいと評判だったりする。
「ありがとねー! いや、昨日さー、企画で激辛焼きそば食べたじゃん? すっごい辛くてさー。もういろんなとこがヒリヒリしちゃってるよ」
【¥10000】〈おはみっしー〉
〈おはみっしー! 昨日あまりの辛さに泣いてたもんな〉
〈どこがヒリヒリしているのか気になる〉
〈今日もかわいいよみっしー!〉
【¥34340】〈みしみしみっしー!〉
日本トップレベルの同時接続者数をたたき出すその美貌は伊達ではなく、今日も朝から数十万人の視聴者を集めていた。
鈴の音のような心地よい声も才能と言えるし、円満な家庭でまっすぐ育てられた太陽のような性格は男性からも女性からも分け隔てなく人気を得ていて、もはや国民的アイドル配信者と言って間違いない。
「さて! 今日はダンジョンに来ています! 日本一の難関ダンジョンと言われる新潟市の亀貝ダンジョンです!」
〈え、みっしーダンジョン配信はじめるの?〉
〈みっしーダンジョン探索の登録してたっけ?〉
「はい! 登録はしてます! でも一番最低ランクのD級探索者です。だから、もちろんSSS級ダンジョンの攻略なんてできませーん! あはは。あのね、この近くにおいしいドカ盛りラーメン屋さんがあって、今日はそれの超大盛りに挑戦した動画を撮ったの! 案件です! 背脂たっぷりで大満足! もーおなかいっぱい!」
〈朝からドカ盛りラーメンってやばくね?〉
〈みっしーは大食いタレントできるくらいは食えるからなー〉
〈こんな朝から背脂はエグい〉
【¥1000】〈胃薬代〉
「そのあとちょっと時間があったんで、ここに寄ってみました! 地下一階でちょろっと一番弱いモンスター倒すくらいならいいでしょー? たまにはダンジョン配信の真似事やってみよーじゃないかーっていう企画ですね!」
〈ラーメン食ったあとダンジョンかよ胃袋がバケモンすぎるだろ〉
【¥500】〈地下一階ならSSS級ダンジョンでも敵が弱いからな〉
〈気をつけてよー。いま一人なの? やめときなよー〉
【¥50000】〈昨日の激辛やきそばおもしろかったです。今日はドカ盛りラーメンだったということで、整腸剤をこれで買ってください〉
〈ダンジョンは危なくない?〉
「だーいじょうぶだよー。ちゃんとリサーチ済み! 地下一階はスケルトンとスライムしかいないから! それに稲妻の杖があればたいていの敵は一撃!」
美詩歌は企画動画で買った稲妻の杖を見せびらかす。
お値段なんと四百五十万円。
なにせ大物インフルエンサーともなると、こんなものも軽く買えるのだ。
「それに私一人じゃないよ。いつものカメラマンの美由紀さんとマネージャーさんの夏子さんもいるよ! この二人もD級だから別に役に立たないけどね! あはは! じゃー行きまーす!」
予定どおり、スライムと出会ってそれを魔法でこともなげにやっつける。
すると、スライムがいた場所に小さな箱が出現した。
「お! アイテムボックスをドロップしました! ちょっと中を見てみましょう!」
〈やばいやめろ〉
〈みっしー盗賊スキルないよね? 危険だからよしなよ〉
〈まじ危ないぞ〉
〈アイテムボックスは危険〉
〈SSS級ダンジョンのトラップはやばい、やめとけ〉
「えー、大丈夫だよーまだ地下一階だし! じゃー開けまーす!」
美詩歌は攻撃魔法スキル持ちだが、盗賊スキルは一切持っていない。
そんな人間がSSS級ダンジョンのアイテムボックスを解錠したのだ。
無知なるが故の、無謀だった。
プワンプワンプワン!!!
という大きな音がしたかと思うと。
最悪のトラップ魔法、テレポーターが発動した。
次の瞬間、カメラマンとマネージャーの目の前で、美詩歌の姿はそこから掻き消えた。
★
やばい、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ!
なんとかしないと!
針山美詩歌は絶体絶命だった。
とはいえ、全身が壁の中にテレポートされなかったのは幸運だった、と美詩歌は思った。
もしそんなことになってたら即死だった。
それだけは免れていた。
しかし、それは全身が壁の中ではない、というだけだった。
右腕が肘の上まで壁の中に埋め込まれている。
テレポートさせられたときに、ちょうど右腕の部分が壁と重なる場所にあったのだろう。
「これ、どうなってるの……?」
引っ張って抜こうとしたが、まったく抜ける気配がない。テレポートしたときに腕が壁と同化したのかもしれない。
「右手でよかったよ、頭だったら死んでたもんね」
独り言を言う。
「大丈夫、なんとかなる!」
笑顔を作り、自分に向かって叫んだ。
左手首につけていたスマートウォッチを見る。
現在地は……地下八階。
SSS級ダンジョンの、帰還不可能といわれる地下八階に飛ばされたのだ。
一番に頭に浮かんだのは、
“生きて帰る!”
という揺るぎない、強い意志だった。
常にポジティブで決して折れない。
それが、国民的人気配信者として成功を収めた、美詩歌のメンタルなのだ。
「まずは、救助を呼べるか試さなくちゃ」
持っていたyPhoneはどこに行ったのだろうか?
あ、あんな遠くに落ちてる。
でも、右腕が壁に埋め込まれている現状、あんなところまで取りに行けない。
「Hey,Sari ! Hey,Sari ! Hey,Sari ! ヘイ、サリィィィィィ!!!!!!」
力の限り叫んだが音声認識は反応しない。
「Sariちゃん、薄情すぎるでしょ……。いらんときには反応するくせに……」
しばらくすると着信が来てピカピカ光ったがもちろん出ることはできない。スマートウォッチで確認するとマネージャーの夏子さんだ。
でもこのスマートウォッチは通知を確認はできるが応答はできない。
ただこの場所にいるということは確認してくれただろう。
このままここで大人しくしてたら助けに来てくれるかな? でもここはSSS級ダンジョン。それも、ボスを倒さないと帰還不可能な地下八階。
救助が来るにしても時間がかかるだろう。
それまでになんとか生き延びるしかない。
と、そこに不吉な唸り声が聞こえてきた。
ダンジョンを形づくっている石材は不思議な力でかすかに発光しており、多少の明るさはある。しかし、すべての石材が発光しているわけでもなく、そこかしこに暗がりもできている。
その暗くなっている場所に目を凝らすと、そこには三頭の犬の影が見えた。
いや、犬と言うには大きすぎる。
フューリーウルフと呼ばれる、オオカミのモンスターだ。
巨大な牙、六本の足。
そいつらは美詩歌を見つけると、威嚇すらせずいきなり襲い掛かってきた。
美詩歌はD級探索者にすぎない。
SSS級ダンジョンの地下八階のモンスターに勝てるわけはない。
それも、片腕が壁と同化して動けない状態ではなにもできやしない。
でも。
――私は生きることをあきらめない!
美詩歌の手元には一本の杖があった。
四百五十万円もした、希少アイテム、稲妻の杖。
美詩歌はそれを振りかざして叫んだ。
「雷鳴よとどろけ! いかづちの力を解放せよ! サンダー!」
絶対に生きて帰る。
絶対に死なない!
生きて、生きて、生き抜く!
二百歳まで生きてやる!
十八歳で死んでたまるか!
私は、みんなの希望の光、みっしーなんだから!
★
ピロリロリーン。
【緊急ニュース速報】
人気配信者の針山美詩歌さん(18)が、ダンジョン内配信中にテレポーターの罠にかかり、現在行方不明。
★
「はい、小谷選手、今日も大きなホームランでしたねー。……ん? あ、緊急のニュース速報が入りました。ええと、ええー!? 以前この番組にも来てもらったことのあるみっしーさんがダンジョンで行方不明だそうです!」
「そんな……。テレポーターのトラップ? 確かあれって、万が一壁の中に飛ばされたりしたら……」
「い、いや、みっしーならきっと無事なはずです! ……無事であることを祈りましょう……」
★
「では新潟西南警察署前の桐生さーん?」
「はい、新潟西南警察署前の桐生です。――えー、警察発表によりますと、今日午前九時半ごろ、針山美詩歌さんはダンジョン内での配信中、テレポーターのトラップにより行方不明となりました。美詩歌さんはyPhoneを所持したままであり、その電波の解析を行ったところ、SSS級ダンジョンである亀貝ダンジョンの地下八階にテレポートさせられた可能性が極めて高い、との捜査関係者の話です。遭難から三時間が経っておりますが、まだ連絡はとれておらず、安否の確認はとれておりません」
★
189 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:27:45.12
亀貝ダンジョンの地下八階だってよ
190 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:30:09.33
これ生きていても無理じゃね?
191 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:32:56.49
亀貝ダンジョンって地下八階からは一方通行のシュートしかなくて階段ないんだよな?
192 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:35:18.78
そうだよ
だから地下八階以上もぐるとボスを倒すか死ぬかしかない
193 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:37:02.43
SSS級ダンジョンのボスなんてSSS級探索者パーティしか倒せないぞ?
SSS級探索者なんて世界に30人もいないよな?
194 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:42:30.67
これはもう絶望的かもわからんな
195 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:44:12.09
やばい
ショックでなにも食えない
196 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:46:57.82
こんなん無理じゃん
生きてたとしてどうやって助けるんだよ
197 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:49:23.40
有名人が事故にあって死ぬニュースとか、日曜の昼から気が滅入るな
198 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:51:56.75
まだ死んでないぞ
199 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:54:39.27
>198
いやさすがにこれは生きてるわけ無い
200 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日) 13:56:12.08
俺の娘がファンだったからこのニュースのせいでずっと泣いている
俺も泣いてる
★
「総理! 総理! 人気配信者の針山美詩歌さんが行方不明の件ですが!」
「えー、もちろん国民の安全を図るのが政治の役割であると、そのように思っております。しかしながらダンジョン内の探索につきましてはダンジョン特別法により原則自己責任であると、そのように認識しております。ダンジョン内での遭難は国内においても、月に数件認められるところでありますが、政府といたしましては、著名人であったとしても、原則として個別に救助隊を出すことについては、慎重に議論を進めなければならないと考えております」
★
「はい、こちら現場です。遭難から十二時間が経ちました。いまだ針山美詩歌さんとの連絡はとれておりません。民間の捜索隊においても、S級探索者しかおらず、SSS級ダンジョンの地下八階以上の探索は極めて困難であり、救助は絶望的との見方が広がっております」
★
『I know the accident of her distress. I want to go help, but it takes time to prepare. If we're going to explore an SSS-class dungeon, we need a party of six. At least it will take two weeks for us to prepare our equipment, gather our members, and get to Japan. I think it's almost impossible for me to save her.』
字幕
(彼女が遭難した話は知っている。私も助けに行きたいが、準備に時間がかかる。SSS級ダンジョンを探索するのであれば、我々には六人パーティが必要だ。我々が装備を整え、メンバーを揃え、日本に行くには最低でも二週間は必要だろう。私が彼女を救うのは、ほとんど不可能だと思う)
「――世界一の探索者といわれるアニエス・ジョシュア・バーナード氏はこのように語っており……」
★
Aaron Mask
“Oh my God I'm big fan of her. If you save her, I'll pay you $300,000 as a reward.”
翻訳する
アーロン・マスク
「なんてことだ。ボクは彼女のファンだったのに。もし、彼女を救ってくれたら、報奨金30万ドル払ってもいい」
38万件の反響 122万件のいいね
★
「所属事務所のPOLOLIVEの宇佐田社長は、針山美詩歌さんの救出に成功した人には三億円の謝礼金を支払うと発表いたしました」
★
892 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:33:15.63
数億円もらったところでSSS級ダンジョンの攻略なんてできないだろ
893 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:34:22.49
俺が行こうか?
894 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:35:57.31
>893草
絶対無理
895 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:37:14.52
亀貝ダンジョン事故直後から野次馬多すぎて
一般の人は今封鎖されてるって
896 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:39:45.11
SSS級ダンジョンだし誰も助けにいけないだろうな。
897 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:40:29.76
ちょっとまって
一組だけ今亀貝ダンジョンの地下八階に入ったパーティがいるぞ!
898 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:42:18.34
まじで?
899 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:43:09.27
草
うそだろ
900 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:44:45.92
まじだ
901 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:46:11.58
え
このニュース見てダンジョン探索にいったってこと?
902 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:47:23.64
>901 事故あってすぐに封鎖されてるからそうじゃないな
もともと潜ってたんだな
903 ニュースを語る名無しさん 202X/09/03(日)18:48:35.02
これやな
配信してるぞ
“兄妹心中配信 亀貝ダンジョン”
https://www.alphapolis.co.jp/novel/99324959/316815291
第一章
「えー、今地下八階を探索しています。もう戻れないよ。みんな、見てるー?」
紗哩の言葉には誰も返事をよこさない。
:同時接続数 0人
誰も見てねー!!!
「……お兄ちゃん、これ配信する意味ある?」
「ないかもしれんけど、誰かが突然来て投げ銭してくれるかもしれないだろ! 一応続けとけ」
「虚空に向かって誰もいない配信続けてる兄妹ってちょっと悲しすぎる……」
:同時接続数 1人
お。
誰か来たぞ。
〈まだやってた。生きてたのか〉
「昼間来てくれてた人かな、まだやってるよー」
紗哩が答える。
〈そこ、亀貝ダンジョンなんだよな?〉
「うん、そうだよー。今地下八階に到達したとこ」
〈まじか〉
まあそろそろ余力も少なくなってきたし、地下十五階にいるというダイヤモンドドラゴンと出会う前に死んじゃいそうだけどなー。
「今のうちに言っとくね、お兄ちゃん、あたしお兄ちゃんの妹に生まれてきてよかった……」
うるうるとした瞳で俺を見つめる妹。
「俺はお前が妹として生まれてきて……まあ、なんだ、うん、そうだなあ……どうだろうなあ……」
「なにそれひどい」
「一億二千万円」
「すびばぜんでじだー!」
頭を下げる紗哩、揺れるサイドテール、俺はその妹の頭をポンポンしてやって言った。
「ま、しょうがないか、お前と過ごした十九年間は楽しかったしな」
:同時接続数 8人
お、急に増えたな。
〈まじで亀貝ダンジョンか〉
〈こいつら、あの亀貝ダンジョン地下八階に潜ってるの?〉
〈え、お前ら何級?〉
「いやー実は二人ともまだA級なんだよな」
「そうでっす! あたしもお兄ちゃんもA級! あ、違うよお兄ちゃん! お兄ちゃんはこのあいだC級にランクダウンさせられたじゃーん!」
「それお前のせいだからな」
「ごめん」
〈え、じゃあA級とC級でSSS級ダンジョン探索? 死ぬじゃん〉
「そうでっす! あたしたち、兄妹で心中しちゃいまっす! 概要欄にあるとおりだけど、借金が一億二千万円できちゃって……」
〈みっしーを助けられる?〉
〈助けに行ったわけじゃないの?〉
〈もしかしたらみっしーの件知らないのか?〉
ん?
なんの話してるんだ、こいつら。
:同時接続数 128人
おいおいおい!
なんだまた突然増えたぞ?
見ているあいだにもどんどん増える。
:同時接続数 389人
〈ここか、亀貝ダンジョン配信〉
〈みっしーを助けたげて!〉
〈みっしーがそこにいるんだよ!〉
???
よくわからん。
みっしーって、あの有名な針山美詩歌のことか?
:同時接続数 1288人
「え、なになになになに!?」
突然の同接数爆あがりに、俺たちはパニックになる。
「なんだ、俺たちの心中そんなに炎上してんのか?」
〈お前らの命なんか知るか、それよりみっしーだ〉
【¥50000】〈助けてあげて! 生きてるかもわかんないの! 急いでください!〉
「おわっ!!」
上限赤サポが来たぞ!?
上限どころか赤サポ自体が生まれて初めてだ。
一万円以上の投げ銭をするとコメントが赤い文字で表示されるのだ。
:同時接続数 24888人
ああ? 秒単位で桁が増えていくんだが!?
「ちょっと待ってくれ、誰か状況を説明してくれ」
【¥50000】〈こちらPOLOLIVE公式アカウントです。お願いがございます………………〉
〈きたー!!〉
〈本物のPOLOLIVE公式アカウントだこれ〉
〈POLOLIVE公式なんて初めて見た〉
【¥34340】〈みっしーをどうかどうかお願いします!〉
〈ほんとほんとほんとお願いお願い!〉
★
ピロリロリーン。
【緊急ニュース速報】
人気配信者の針山美詩歌さん(18)が行方不明になっている事故で、亀貝ダンジョン内の同じ階層にほかの探索者がいることが判明。所属事務所は針山美詩歌さんの安否確認の要請を行った模様。
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気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
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