上 下
1 / 32
1巻

1-1

しおりを挟む



   プロローグ


 バルト様の婚約者であり、わたしの三つ年上のリゼッタお姉様が死んだのは、三年前のことだった。
 その年の冬は、風邪が大流行して、たくさんの人が亡くなった。リゼッタお姉様も風邪をこじらせて死んでしまったのだ。わたしの周りでも、他に幾人も風邪で亡くなったと聞いている。
 そのくらい、その年の風邪はタチの悪いものだった。
 今でも、あの時のことは夢で見る。
 高熱に浮かされ食欲もなく、水を口に注いでも入れたそばから頬を流れ落ちるのだ。わたしは濡らした綿めんのハンカチを幾度もリゼッタお姉様の唇に押し当てた。
 薬は品薄で高値がついたため高位貴族が独占し、下々の者にはなかなか手に入らない。お父様も必死で探したが、買えなかった。
 苦しむお姉様をただ見ているだけのやるせなさ……、悔しさ、そして後悔。
 自分の無力さを痛感した。
 婚約者であるリゼッタお姉様を亡くしたバルト様の哀しみは計り知れない。
 わたしは彼をなぐさめた。でも、その思いは彼には届かない。
 バルト様はお姉様を心から愛していたのだ。
 今でも、お姉様にすがくようにして泣いていたバルト様の姿を思い出す。
 お姉様の名前を何度も叫んでいた。わたしなど存在していないかのように。
 そして、お姉様が亡くなってすぐに、わたしがバルト様と結婚することに決まった。お姉様との婚約には貴族ならではの政略的な意図があったのだ。
 バルト様のお父君も同じく風邪で亡くなっていたので、彼が伯爵位を早急に継ぐ必要があったという理由もある。
 我がアマンド子爵家からアルスターニ伯爵家への援助。その見返りとしての、伯爵領の特産品の優先取引。それが必要だったのだ。
 わたしは小さい頃からバルト様が好きだった。
 でも、バルト様はお姉様の婚約者。だから、気持ちを封じ込めていたのだ。
 お姉様が亡くなって、わたしがバルト様の妻になることは正直嬉しかった。
 表情には出せなくても、嬉しかった。少しずつでもわたしを見てくれることを期待した。
 でも――
 バルト様にとっては、わたしはただの妹的存在だった。
 妻にしたいのはお姉様ただ一人。わたしは恋愛対象にもならない。
 ……みじめだった。


 夏が来る前、わたしの誕生日の前日に、わたしたちは結婚契約書を交わした。
 あの頃は大流行した風邪で人口が減った影響で、結婚を急ぐ者が多かったのだ。次世代を残そうとする生存本能が強くなっていたともいえる。
 国をあげて推奨されていたし、王太子殿下のご成婚も後押しになった。
 もっともわたしたちの場合は、王太子殿下のご成婚に重ならないようにお姉様の死をいたむ期間もろくに取らずに早めたのだ。
 王太子殿下の右腕的存在であるバルト様は、立場を固めておきたかったのだろう。だから、もともと予定していたお姉様の結婚式の日にわたしはとついだが、式はあげなかった。バルト様の執務室で契約書にサインをする事務的な作業で終わる。
 あこがれていたウェディングドレスはあきらめた。
 サイズが変わらないとはいえ、お姉様のために用意されたドレスに袖を通すわけにはいかない。
 それでも、サインをした時は嬉しかった。
 だが――

「これは明日、出してくる。サリーナ、これから君はこの家の……わたしの妻になるが、形式だけのものだ。余計なことはしなくていい。わたしの、わたしの妻はリゼッタだけだ。すまない……」

 バルト様の言葉に、冷水を浴びせられたような気分になる。
 そうか……そうなのか。
 当然だ――
 その場で涙を流さなかっただけ、自分を褒めたい。

「わかりました」

 微笑ほほえんで物わかりのいいふりをした。
 バルト様を困らせたくなかったから。
 言うだけ言うと、バルト様は机の上の書類に目を落とす。わたしを見ることは一切なかった。
 そうしてわたしは静かに部屋を出た。
 かお馴染なじみでもある執事のハンスさんに哀れみの視線で見られる。

「ハンスさん、これからはよろしくね」
「ハンスとお呼びください。奥様」
「サリーナよ。はお姉様なの、ハンス
「……」
「大丈夫よ。大丈夫……」
「……サリーナ様」

 彼がハンカチを差し出す。その時初めて、涙がこぼれているのに気づいたのだった。


 それからのわたしは、用意された専用の執務室で領地から送られてくる書類に目を通す毎日を送っている。
 旦那様は次の日から王宮に仕事に行ってしまった。
 王太子殿下の右腕として業務にはげみ、次に屋敷に帰ってきたのは三週間後だ。そして、帰宅の翌日にはまた王宮に戻った。
 旦那様のサインが必要な書類だけは、ハンスさんに頼んで王宮に持っていってもらう。
 彼の声を聞いたのはいつだったか。
 結婚当初は、帰ってきた旦那様に声をかけていた。留守中にあったことを語る。けれど、返事一つ返ってきたことはない。
 思い描いていた生活とは違う。夢見ていた幸せとは違う。
 初めはどんなに無視されようと、旦那様の顔を見ると恋心を思い出し、淡い望みを抱いていた。どんなにつらくても、いずれ時間が解決してくれると期待して。
 でも旦那様は変わらない。
 滅多に帰ってこないとはいえ、わたしは笑いかけるのが次第につらくなり、声をかけることすら躊躇ためらうようになる。
 あれほど旦那様を慕っていた気持ちは、次第に心からこぼれ落ちていった。
 暗い水の底にいるかのように息が詰まり、自分の感情がわからなくなっていく。
 そんな想いを忘れるように、わたしは仕事にはげんだ。
 手始めに領地を改革する。
 旦那様は王宮に行ったままだったので、ハンスさんと共に力を尽くした。
 エフタール地方から始まったからエフタール風邪と言われるようになったあの風邪による死者は、領地でも大勢出た。そのせいで働き手が減ってしまったので、わたしはまず税率を下げた。特産品であったはちみつ作りもとどこおるようになっていたのだ。
 気候に左右される不安定な農業やはちみつ作りの代わりになる産業を探ったが、簡単に見つかるはずがない。慣れない仕事に疲れながら、何度も領地に足を運んだ。
 そんな中、わたしは偶然にも奇跡的な出会いを果たす。
 領地に薬草の研究をしに来ていた、レフリーという青年と知り合ったのだ。
 彼はエフタール風邪に効くかもしれない薬の研究をしていると言った。それに使われる薬草が、この領地にしか生えていないらしいのだ。
 彼からその話を聞いて、わたしはその場で出資を決めた。研究施設の提供も。
 今思うと、よく即決したものだ。金銭だけ巻き上げられ、逃げられていたかもしれないのに。
 ただ、彼のしん眼差まなざしは本物だと感じた。
 いくらかかるかわからない研究。でも、これが成功し、今後、エフタール風邪による死者を減らせるのであれば、価値がある。
 その薬草作りが領地の発展に繋がった。
 わたしは領地の人たちと協力して薬草栽培を進めた。
 薬草の性質を損なわないように生態を知ることから始める。
 当然、形だけの妻であるわたしが旦那様の許可もなく伯爵家の資産を使うわけにはいかないので、自分の個人資産での援助だ。
 資金に限りが出たため、わたしは新たな事業を立ち上げる。
 そうやって個人的な資産を増やした。
 必然的にやらなければならないことが多くなる。王宮から帰ってもわたしを空気のように扱う旦那様にむなしさを覚える暇もないくらい忙しい毎日だ。
 一人寂しく寝室で泣くより、疲れ果てすぐに寝入る日々を選んだともいう。
 狭い個室でわたしは布団を被って眠る毎日を過ごした。
 薬の研究に出資してから、三年。
 何一つ変わらない生活。
 この三年で、旦那様が屋敷に帰ってきた日は多くない。お姉様の誕生日と亡くなった日だけは必ず屋敷に戻ってきて、お姉様の部屋に一日中こもっているが。
 変わったのは、レフリーの作る薬がもうすぐ完成することと、そのために必要な薬草作りが順調なことだ。
 はちみつ作りも持ち直した。
 産業という面ではまだだが、特産品の復活というのは嬉しい。村人たちが協力してくれたおかげだ。
 税率を以前と同じものに戻すこともでき、安定した収入を得られるようになっていた。



   第一章


 朝日が昇り、部屋が明るく色づいてくる。わたしはまだ眠りを欲している身体をベッドから無理やり引き離し、薄いカーテンを開けた。
 窓を開けると、さわやかな風が部屋に入る。
 その風を感じながら、小さな洋服ダンスを開けた。使われたことのない夜会用の華やかなドレスが一着、幅をとっている。
 ハンスさんに言われ、妻として旦那様と夜会に行くために作られたものだが、着る機会を失っていた。

「君が出席する必要はない」

 そう旦那様に言われたため、どうしようもなかったのだ。
 夫婦同伴の会であろうと、わたしが顔を出すことはない。旦那様は仕事で王太子殿下のそばに控えるのだから、わたしはいなくていいのだ。
 旦那様自身が個人的な夜会に出席することはないので、そういう意味でもパートナーは必要ないようだった。
 それを知ったのが作ってしまった後だったため、ドレスは行き場を失っている。
 わたしはいつもの白いブラウスとボルドー色のスカートを身につけた。
 それ以外に、ちょっとしたお茶会用の服を二着持っているが、どちらも落ち着いた色のありふれたデザインのものだ。年齢からすれば、地味な部類かもしれない。
 だが、わたしには明るい色は似合わないのだ。このこぢんまりとした生活では、それで充分だった。


 今日も自分に与えられた仕事場へ行く。
 わたしは食事をこの部屋でとっていた。朝も昼も、もちろん夕食も。
 この三年間、一度たりとも旦那様と食事を共にしたことはない。
 結婚当初は、ハンスさんからすすめられて広い食堂を使っていたが、屋敷に帰ってきた旦那様はわたしが一緒だと知ると決まって自分の部屋で食べる。だから、一人だけの寂しい食事に意味がなくなり、食堂を使うのをやめたのだ。旦那様が屋敷にいようがいまいが、わたしは食堂に立ち入らない。
 屋敷の人たちと交流を深めようとしていたのもやめている。
『妻』としての業務は、侍女頭に全て任せた。
 旦那様の『日常』を壊さないことを優先したのだ。
 わたしは同居人。それだけの存在。その立場を通さなくてはいけないのだと気づいた。
 自分は旦那様のどこが好きだったのだろう……?
 そんな思いが頭をよぎり、首を振る。
 今、そんなことを考えている暇はない。
 積み上げられた書類を読み込み、判子を押していった。
 昼から旦那様のお母様に会う予定になっている。書類に目を通していなければ、また文句を言われるだろう。
 彼女は「バルトがいないのであれば、妻であるあなたが領地の仕事をするのは当たり前でしょう」と、結婚をした翌日にわざわざ言いに来たくらいだ。
 できない妻ではいけない。

「リゼッタならできて当然のこともできないの? 役立たずね」

 そう言うに違いない。冷ややかな目でわたしを見るだろう。
 わたしはリゼッタお姉様しか見ないあの人たちが怖いのだ。
 誰もわたしを見てくれない。
 だから、出来損ないと思われたくなかった。ダメな妻だと、これ以上思われたくない。 

「サリーナ様、大丈夫です。慌てなくても順調にできています。いつも通りでかまいません」

 ハンスさんがわたしの前にお茶を置いた。

「肩の力を抜いてください」  

 紅茶の優しい香りがこうをくすぐる。
 わたしは息を大きくついた。震える手でカップを持つ。茶色の液体に波紋が広がるのをじっと見つめた。


 そして、香りと共に喉に流し込む。

「……ありがとう。美味おいしいわ」
「何よりです」

 少しだけ落ち着いた。
 大丈夫。大丈夫だ。
 わたしは再び、書類と格闘を始めた。


 お義母様はお義父様が亡くなってから、王都にある別宅とご生家とを行ったり来たりしていた。つまり遊んで暮らしている。
 そして月に一度、わたしに嫌味を言いにやってくるのだ。

「――相変わらず、しみったれた顔ね」

 ……開口一番がそれなのか。
 自分がお姉様より地味なのはわかっている。いろせた金の髪に鈍い青い目。着るものだって地味だ。お姉様や家族と同じような輝く金の髪も、澄み渡る青空みたいな色の目も持ち合わせていない。わたしはお祖母様に似ているらしかった。

「お久しぶりです。お義母様」
「あなたにお母様と呼ばれたくありません。なぜ、リゼッタが亡くなってしまったのかしら」

 お義母様がはぁっとおおにため息をつく。
 誰もが死んだお姉様をこうしてなげいた。

「申し訳ございません。ミヨルダー夫人」

 結婚当初から幾度も繰り返されている会話。
 お義母様はわたしにミヨルダー夫人と言わせたいだけなのだ。
『あなたをこの家の者とは認めていない』と暗に言っている。それなら、初めからミヨルダー夫人と呼びたいのだが、そう呼ぶと「何様のつもり? 私を義母とは呼べないと言ってるの? 生意気ね。まぁ、私が娘と思いたいのはリゼッタだけですけどね」と言ってくるのだ。
 始めは悲しく悔しかったが、三年も経てばどうでもよくなる。積もるのは罪悪感だけ。
 どうしてわたしは生きているのか? なぜ、ここにいるのがお姉様ではないのか?
 みにくい思いを心の中に隠し、作り笑いをしながらお義母様に手ずからお茶を振る舞った。

「この紅茶の気分じゃないわ。リゼッタなら、今日私が飲みたい紅茶をわかってくれたのに」

 お義母様は手もつけず眉を八の字にし、いかにも残念そうに言う。名演技としか思えない。
 その横で侍女がお茶をなおした。
 お義母様はことあるごとにお姉様とわたしを比べる。
 彼女だけではない。皆、そうだ。
 お父様もお母様も。お兄様も、妹さえも、「お姉様、お姉様」と言う。死んでしまったお姉様の姿を見る。
 そして、決まってわたしを「出来損ない」と言うのだ。
 昔、お姉様とバルト様は「サリーナはサリーナらしくしていてかまわないよ」と言ってくれたが、もうそんなことを言う人はいない。

「申し訳ありません」 
「先ほどからそればかりね。他の言葉は知らないの?」
「申し訳ありません」

 他の言い訳をしようものなら、「あなたは謝ることも知らないの!!」と言うだけなのに。

「まあ、いいわ。バルトは?」
「旦那様は王宮の仕事が忙しいようです」
「そう。いつになれば孫の顔が見られるのかしら?」

 いつ? 夫婦の関係もないのに、子供ができるわけがないでしょうに。

「三年経ったわ。あなたのせいかしら? 子供が産めないなら出ていってもらわなければいけないわね」
「……」
「あなたたちと同じ頃に結婚した者たちは、のきみ子供を持っているものよ。王太子殿下夫妻など、二人目のご誕生が数ヶ月後だというのに」

 お義母様はわたしをにらんだ。わたしが何も言い返せないのをいいことに話を続ける。

「不仲説も出回ってるわよ。アルスターニ伯爵家の恥だわ。あぁ、リゼッタがあの子と結婚していたら、おしどり夫婦だったでしょうに。孫だってすぐに抱けていたはず。なんであなたが死ななかったのかしら」

 それは……、わたしが聞きたい。お姉様が生きていれば良かったのだ。
 もう、お義母様――ミヨルダー夫人の前で笑えない。
 わたしは夫人を見送ることさえできず、椅子に座ったまま動けなかった。


   ◆ ◆ ◆


 王都に借りた薬を作るための研究所で、わたしはレフリーたちが忙しく動いているのをじっと見ていた。
 三年の間に研究員が十人に増えた。作業員は六人いる。
 研究員は仲間意識が強く、みんな仲が良い。研究好きの集まりのため、共同生活をしていても浮いた話はなかった。

「サリー。お肌プルンプルン美容液がやっと完成したわよ」

 研究員のマリーンがビーカーになみなみと入ったショッキングピンクの液体を見せに来た。
 わたしはサリーという名の併設の商会を作り、ここで開発した女性用の化粧品や美容品を売り出している。
 レフリーの研究の一部を商品化したのだ。きっかけはノートの片隅に書かれていた、他愛のないメモ。それが女性にとって大いに価値のあるものだと気づいたことだった。
 そこから様々な品の改良を重ねている。
 マリーンが持っているのもその試作品だろうが、色がいただけない。ショッキングピンクは流石さすがに目が痛くなる。

「マリー。色が派手すぎじゃない?」
「そう? わたしの髪とおんなじだよ」

 彼女は残念そうに首をかしげた。
 うん。マリーンと同じ色。彼女なら似合うけど……

「可愛いのはわかるけど、使うのにはちょっと、勇気がいるかな?」
「そう? 可愛いのに?」
「色を薄められないの?」
「できない。効果が落ちちゃうよ」
「何かいいアイディアないかしら?」
「じゃあさぁ、パックは? 顔の形に紙を切ってさ、この液つけてペタッて貼るの!?」
「パックか……。それならいいかも。だったら花の匂いとかつけられる? ラベンダーとかの?」
「匂い? うーん、やってみる」
「お願い」
「サリー、ちょっとだけ笑顔が戻ったね。あなたが暗いと、みんな暗くなるよ」

 ここ最近のわたしはみんなに気を遣わせていたようだ。

「ありがとう。笑顔でいるわね」
「うん。サリーは笑ってるほうがいいよ」

 マリーンは楽しそうにスキップしながら自分の席に戻っていく。ビーカーの中身がチャポッチャポッと揺れ動くのを見て、わたしはドキドキした。
 一通り研究室を見終わると、ある部屋に入る。わたし専用の部屋である。
 そこで秘書をしてくれているエリアナが待っていた。

「サリーナ。お帰りなさいませ」
「エリアナ、いつもありがとう」

 机の上には書類が山と積まれている。彼女が仕分けてくれているから、仕事がしやすい。
 わたしは椅子に座り机に向かった。
 商会の売上に在庫状況。お客様の反応や苦情、要望。今後発売する予定商品の材料発注とその費用。売り出すための根回し。
 そして、の研究に対する追加費用。
 読むべき書類がなくなることはない。

「……サリーナ」
「何?」

 控えめなエリアナの声に顔を上げる。言いにくそうにしている彼女を見て、またか、と思った。

「あの人たち?」

 エリアナがコクリと小さくうなずく。
 金食い虫たちが来たのだ。

「恩を返せと……」
「そう。いつも通りにしてちょうだい」
「ですが……」
「いいから……」
「……はい」

 それだけ言うと、わたしは書類に視線を戻した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※長くなりそうなので、長編に変えました。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。