第7回漫画大賞
選考概要
編集部内での議論の末、最終候補作としたのは「バックステージその時」「役行者顛末秘蔵記」「始まりの合図」「夜の歌」「Hand Drawings『わたしの星のソムリエさま』」「Destiny Traveler」「kyoushi町田」の7作品。選考の結果、編集部内で特に支持の高かった「バックステージその時」を大賞に選出することとした。
「バックステージその時」は、三つ子が過去にタイムリープして確執のある父親と邂逅するストーリーで、親子関係、タイムリープ、出生の秘密、夢、など様々な要素が入り組んだ物語を秀でた画面構成と演出で見事に描いた、圧倒的な技術力・表現力が高く評価された。
またその他の6作品も各々にオリジナリティに富んだ魅力があるものだった。
「役行者顛末秘蔵記」は、キャラクターの性格付けの明確さと伏線を随所に設置することで、飽きずに読めるところが高く評価された。ただ歴史を踏まえた作品のためか、時代背景を説明する文字が多く、また似たコマ割が続くので展開が遅く単調に感じられ残念だった。セリフをスリム化しコマ割の数を減らすことで見せ場が明確になり伏線が生きてくるように思えた。
「始まりの合図」は、絵柄が可愛く主人公の心情もうまく表現している王道の少女漫画だった。しかし王道であるがゆえに、どこかで読んだことのある内容に見えてしまうので人間関係に独自の展開を入れると、さらによい作品になると思われた。
「夜の歌」は、ファンタジー世界を美しく、細やかに描いていて独特の世界観があり、コマ割、構図も洗練された完成度の高い作品だった。ただ、キャラクターの動きが淡白で印象が薄いので、動きのあるシーンを増やすことでより強い印象を与えられるだろうと思う。
「Hand Drawings『わたしの星のソムリエさま』」は、人物や背景、コマ割などトータルの作画技術の高さを評価された。しかし、内容が多方向へ向かい印象が薄くなっていたので、見せる内容を絞ることで、より強い印象を与えることができただろう。
「Destiny Traveler」は、キャラクターの喜怒哀楽がしっかり描かれており、話もギャグとシリアスのバランスが良い作品だった。セリフが多いので背景の描き込みを増やし、状況を絵で見せることで文字量を減らすとさらに読みやすい作品になったと思われた。
「kyoushi町田」は、不条理系4コマの妙をいかんなく発揮し、絵柄の拙さを超設定・超展開で読み進ませる独特のパワーがあり、編集部の評価が対極に分かれた作品だった。主人公以外の作画向上を目指すと、さらに多くの人を魅了する可能性を秘めていると思えた。
総じて、どの作品も今後の更新が楽しみな作品であった。
バックステージその時
宿らせ恋劇
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。異世界ファンタジー作品の中でも、本の中に入り込み「本のシナリオを演じる」「折り紙で折ったモノが本物になる」などオリジナリティある設定とキャラクター同士の掛け合いの面白さが、多くの読者の好評を得る結果に繋がったのでしょう。今後は、ネームの多さと絵のバランスやパースの改善を行うことで、より多くの読者の心をつかんでいただきたいと思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
様々な要素が入り組んだストーリー展開を絵の緻密さ、線の力強さ、構図のメリハリなど、計算された画面構成で違和感なく読ませる力は秀逸でした。キャラクターの感情表現も巧みで、物語に深みを付与しており、読み応えのある作品となっていました。若干、物語のためにキャラクターを配置している傾向があるので、キャラクター自身の魅力を描き込むことでさらなる飛躍を目指していただきたいと思います。