第10回恋愛小説大賞
選考概要
編集部内で最終的に大賞候補作としたのは「王太子様の子を産むためには」「皇太子の愛妾は城を出る」「本気の悪役令嬢!」「天使と悪魔の契約結婚」「お隣は貴公子」「日替わりランチ、二つ」「彼はもう恋をしない」の7作品。その後の検討の結果、編集部内の評価が最も高かった「本気の悪役令嬢!」を大賞に選出することとなった。
「本気の悪役令嬢!」は、乙女ゲーム世界に転生した女性が、ゲームヒロインを引き立てるべく悪役に徹するものの、逆に周囲の人々を惹きつけてしまう物語。勢いのある文体でテンポよく書かれており、恋愛ファンタジーとして読み応えのある作品だった。主人公を含めた登場人物たちが皆個性豊かに描かれていて、ストーリーを追うごとに引き込まれる。商業性も高く、それらの点を総合的に評価して大賞とした。
また、受賞には至らなかったが、その他の作品も各々に違った魅力があった。
「王太子様の子を産むためには」は、とある出来事から王太子の子を身ごもってしまったメイドが主人公の物語。体の関係から始まったものの、そこから惹かれ合っていく二人の恋模様に、ぐっと惹きつけられた。
「皇太子の愛妾は城を出る」は、皇太子に愛されていないと感じた愛妾が、城を抜け出すところから始まる物語。インパクトのある出だしに続き、ヒロインの思わぬチートが明らかになるなど、人気があるのも頷ける作品だった。
「天使と悪魔の契約結婚」は、婚約者に裏切られた子爵令嬢が、美貌の公爵から契約結婚を持ちかけられるという物語。設定、キャラクターともに王道ではあるものの、ストーリー展開にメリハリがあってクオリティが高かった。
「お隣は貴公子」は、中身がゆるふわなイケメンと、その隣人である男前なOLのラブコメディ。設定やキャラクターがユニークで、ヒーローの隠れた執着愛や、彼に群がる女性をヒロインがやり込める爽快さなど、引きのある要素が詰まっていた。
「日替わりランチ、二つ」は、定食屋で働く地味な女性と、大企業で働く男性の大人なラブストーリー。不倫を描いた作品でありながら、重苦しさや嫌味がなく、先の展開が気になって一気に読んでしまう面白さがあった。
「彼はもう恋をしない」は、恋愛コラムニストの主人公と、悲しい過去を持つ男子高生が織りなす恋物語。作品に漂う少し乾いた空気感が心地よく、二人が心惹かれていく様子が静謐なタッチで描かれていた。
またここであげた候補作のほかに、出版の可能性を感じる作品もいくつかあり、編集部で検討し、個別にオファーや打診をしていきたいと思う。
「第10回恋愛小説大賞」では例年以上に、ファンタジー世界を舞台とした作品が多く集まった。一方、文芸タッチの恋愛物語や、オフィスラブ等を扱った現代小説が少なく、次回はそういった作品も増えることに期待したい。
本気の悪役令嬢!
王太子様の子を産むためには
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。強引な一夜から思わぬ恋が始まっていくという展開はとても引きがあり、ヒロインとヒーローが惹かれ合っていく様子もロマンチックに描かれています。二人が結ばれるためには障害もあり、この先それをどう乗り越えていくのか、非常に気になる作品です。出版化の可能性について是非検討していきたいと思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
悪役に徹しようとするものの、逆に人々を惹きつけてしまうという設定が面白く、冒頭からぐいぐい引き込まれる作品でした。また、どのキャラクターも個性的で魅力に溢れており、ついつい応援したくなってしまいます。彼らと関わる中で変化していくヒロインの心情を、ドキドキしながら楽しませていただきました。出版化の可能性について是非検討していきたいと思います。