第17回恋愛小説大賞
選考概要
全2,624作品が集まった第17回恋愛小説大賞。その中から一次選考を通過したのは41作品(奨励賞受賞作品参照)。
その後、編集部内で最終選考において大賞候補としたのは、「婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。」「身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される」「ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~」「【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!」「【完結】獣欲な副社長はドライな秘書を捕まえたい。」の5作品。
これらの候補作の中で、前世の夫からのロマンチックな溺愛を描き読者からの人気を集めた「婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。」が編集部内でも支持を集め、読者賞及び大賞のW受賞に決定。また、虐げられた主人公が婚家で甘く愛される「ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~」を優秀賞に選出し、次いで評価の高かった「【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!」を特別賞に選出した。さらに「【完結】獣欲な副社長はドライな秘書を捕まえたい。」をエタニティ賞、「【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される」をノーチェ賞とする結果となった。
また一次選考通過作品のうち、授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。」は、記憶を持って転生した令嬢が長命である前世の夫と再び結ばれる、という個性的な設定の物語。時を超えて愛し合うことを選んだ二人の恋模様と、それを妨げる謎めいた展開にぐいぐい引き込まれ、また、妹のキャラクターなど脇を固めるキャラもとても魅力的だった。
「ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~」は、婚約破棄された令嬢が美貌の伯爵に見初められる溺愛ストーリー。最愛の夫のためにダイエットを頑張る姿が健気で、丁寧な筆致ともマッチしていた。
「【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!」は、破綻した夫婦関係が、夫の記憶喪失を機に少しずつ変化していく話。導入の設定の上手さには目を引くものがあり、誰も悪役にならない、さわやかな読後感にもオリジナリティが感じられた。
「【完結】獣欲な副社長はドライな秘書を捕まえたい。」は、副社長と秘書の身体からはじまるラブストーリー。駆け引きの中で二人の関係が進展していく様子とTLらしい性描写シーンが高く評価された。
「【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される」は、美しいヒロインと『氷血公爵』の、利害一致婚から始まるラブロマンス。自分を犠牲にしても異母妹と愛犬を守ろうとするヒロインが健気で惹きつけられた。
ここであげた候補作のほかにも、出版の可能性を感じる作品が数多くあった。編集部で検討し、個別にオファー、あるいは出版化への挑戦を打診していきたい 。
今年はオリジナリティあふれる完成度の高い作品が多く、今後に期待を抱かせる結果となった。一方、選考を行う中で、胸を締め付けるような王道の恋愛小説が少なかったという声も上がった。この点は、告知の工夫も含めて次回以降の課題としたい。
婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。
不利な世界に負けず頑張る主人公メリーナが、とにかく可愛らしい作品でした。彼女を愛するときのヒーローのデレデレした姿と、周囲をけん制するときのきりっとした姿のギャップがとても素敵です。テンポよく読み進められ、筆力の高さを感じました。
【本編完結】旦那様、離婚してくださいませ!
離縁を切り出そうとした夫が記憶喪失になってしまって……という、インパクトのある出だしが光る作品でした。明るく前向きな性格の主人公は、読んでいて思わず応援したくなる魅力に溢れていました。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
妖精姫と呼ばれる美貌を持つ主人公が、自ら女嫌いの公爵に買われるという冒頭から物語に引き込まれました。利害の一致から始まる二人の関係が、家族へと変化していく過程が丁寧に描かれていました。
【完結】獣欲な副社長はドライな秘書を捕まえたい。
ヒロインとヒーローの身体からはじまった関係が、恋愛関係に発展していく様子がとても巧みに描かれていました。臨場感たっぷりな性描写シーン、テンポよく展開するストーリーが魅力的な作品でした。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
前世の記憶を持って生まれ変わった主人公と、長い時を生きる精霊の甘やかな恋に惹き込まれました。互いがかつて愛した人を求めて惹かれ合い、待ち望んだ逢瀬を重ねていく様子はとてもロマンチックです。一筋縄にはいかない二人の恋愛模様がもどかしくも、先の展開が待ち遠しく感じられました。