第4回青春小説大賞
選考概要
編集部内で最終的に大賞候補作としたのは「Bグループの少年」「ショコラと現実じゃない場所 」「One Way」「桜色の明日」「瓶詰の恋 -前編-」「静かの海」「ベルビュー荘のべらぼうに愉快な奴ら」の7作品。最終選考ではどの作品もそれぞれに魅力があるが、『青春小説』の大賞にふさわしい作品という観点から考えると、いずれも各々の理由により、やや物足りなさが感じられるという編集部内の総意となった。その後の議論の末、候補作の中で作品の完成度がもっとも高く、また独特の雰囲気を纏う「ショコラと現実じゃない場所」。思春期の成長がたしかなストーリー構成と文章力で描かれた「桜色の明日」。上記二作を総合的に優れた作品として特別賞に選出することになった。
なし
ショコラと現実じゃない場所
学校生活に馴染めず、空想の世界に浸る少女の姿が色鮮やかに描かれた、独特のファンタジックな雰囲気を纏う、大変魅力的な作品だと感じました。千円札の隅にメッセージを書き添えるというアイデアも非常に良かったと思います。また安定した文章力、構成力によって、一体誰が「ショコラ」であるのか、最後までわくわくしながら読み進めることができました。
中学生である智哉の心の変化がストーリーを通し丁寧に綴られた、非常に構成力の高い作品だと思います。また、 兄の婚約者である小春との出会いをきっかけに、そこから少しずつ変化していく智哉の様子、とくに自分の兄弟に対する接し方やこれまでそっけなかった恋人への態度の変化がリアルに描かれ、 そういった心の機微の描写という面でも、大変質の高い小説であると感じました。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。決して目立ちたがらない主人公・亮が、実はヒーロー的な能力を隠し持っているというギャップのある設定がとても魅力的でした。斜に構えながらもどこか抜けている亮と、純情で一途な恵梨花。この組み合わせが読者の好評に繋がったと思います。明を筆頭に笑いを誘う男子生徒たちがアクセントとなりテンポ良く読める点も、多くの読者を引きつけたのではないでしょうか。書籍化ができないか著者とともに可能性を検討したいと思います。