第11回恋愛小説大賞
選考概要
編集部内で最終的に大賞候補作としたのは「偽りの花嫁は貴公子の腕の中に落ちる(身代わりの花嫁)」「王妃様は真実の愛を探す」「私と彼のお見合い事情」「独占欲全開の幼馴染は、エリート御曹司。」「前世を思い出したのは“ざまぁ”された後でした」「鐘の鳴る古都で」「【改稿版】運命の改変、承ります~呪われた英雄の花嫁探し~」の7作品。その後の検討の結果、編集部内の評価が最も高かった「【改稿版】運命の改変、承ります~呪われた英雄の花嫁探し~」を大賞に選出することとし、「鐘の鳴る古都で」を恋愛文芸賞、「私と彼のお見合い事情」をエタニティ賞に選出することとした。
「【改稿版】運命の改変、承ります~呪われた英雄の花嫁探し~」は、不死の呪いをかけられた勇者を助けるべく、魔女が彼と共に転生を繰り返しながら花嫁を探す作品。重いテーマを扱いつつも、表現や魔女の内面等が軽妙なタッチで描かれており、恋愛ファンタジーとして最後まで飽きさせない展開だった。転生し続けるうちに変わっていく互いへの想いの描写も見事で、その構成力も高く評価し、大賞とした。
「鐘の鳴る古都で」は、会社を辞めてウィーンに向かった女性と、そこで出会った男性との恋愛を描いた作品。音楽や美術、周囲の情景が巧みに描かれており、その中で進む二人の恋愛が確かな筆力で描かれていたことから、恋愛文芸賞とした。
「私と彼のお見合い事情」は、双子の妹の代わりにお見合いすることになった女性と、御曹司とのラブストーリー。冒頭のキャッチーな展開に加え、キャラクター同士のやりとりもテンポがよく、まさにエタニティブックスというレーベルにふさわしいエンタメ性を評価して、エタニティ賞とした。
また、受賞には至らなかったが、その他の作品も各々に違った魅力があった。
「偽りの花嫁は貴公子の腕の中に落ちる(身代わりの花嫁)」は、女性騎士が、従姉妹の身代わりとして伯爵家に嫁ぐ物語。望まぬ状況だったにもかかわらず、現状を改善し周囲に認められていく女性騎士の活躍にはかなりの爽快感があった。
「王妃様は真実の愛を探す」は、嫁いでから長い間放置されていた王妃が、身分を隠して市井で働く恋愛ファンタジー。逞しく生きる王妃だけでなく、サブキャラクターの個性も光っており、それらのやりとりに面白さを感じた。
「前世を思い出したのは“ざまぁ”された後でした」は、婚約破棄された後に、公爵令嬢が日本人である前世を思い出すことから始まる物語。WEBで人気の設定をふんだんに盛り込みつつも、読者を飽きさせないエピソードと勢いのある展開が秀逸だった。
「独占欲全開の幼馴染は、エリート御曹司。」は、すべてを兼ねそろえた御曹司と、その幼なじみである冴えないOLの恋物語。御曹司の激しい執着心が至るところで描かれており、溺愛される満足感を味わえる要素が詰まっていた。
ここであげた候補作のほかにも、出版の可能性を感じる作品がいくつかあった。編集部で検討し、個別にオファーや打診をしていきたいと思う。
また、「第11回恋愛小説大賞」では“エタニティ賞”と“恋愛文芸賞”を設け、該当作品の応募を期待したが、引き続きオフィスラブ等を扱った現代小説や、文芸風の落ち着いた恋愛小説を取りそろえていきたい。
【改稿版】 運命の改変、承ります ~呪われた英雄の花嫁探し~
偽りの花嫁は貴公子の腕の中に落ちる(身代わりの花嫁)
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。不本意ながらも身代わりとして嫁がされた主人公ですが、女騎士ならではの思考・価値観によって、トラブルを解決していく様は清々しく、爽快感があります。彼女がどのように運命を切り開いていくのか、ラストまで目が離せない作品だと感じました。出版化の可能性について是非検討していきたいと思います。
私と彼のお見合い事情
「身代わりでお見合い」という設定が非常にキャッチーで、双子の妹の代わりにお見合いに向かうヒロインの躊躇いと尻込みする様子がうまく描かれていました。その後のヒーローとのやりとり、そして家族や幼なじみとのやりとりにも勢いがあり、全体を通してテンポよく読み進められます。今後、二人の関係がどう進展していくのか楽しみです。
鐘の鳴る古都で
落ち着きのある雰囲気の中で、時に熱く、時に穏やかに紡がれる二人の恋愛が丁寧に描かれていました。二人の気持ちの変化だけでなく、音楽や芸術品、周囲の情景描写も秀逸で、筆力の高さがうかがえます。最初から最後まで大人の恋愛をじっくり味わうことができ、まさに恋愛文芸と言える作品でありました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
設定がよく練られていて、非常に面白い作品でした。重い設定やストーリー展開にもかかわらず、軽妙な筆致で描かれていることもあり、ぐいぐいと物語の世界に引き込まれていきます。二人がどういったラストを迎えるのか気になり、最後まで一気に読み進めてしまった読者も多いのではないでしょうか。出版化の可能性について是非検討していきたいと思います。