第1回キャラ文芸大賞
選考概要
初開催にして483作もの応募数となった今回は、キャラ文芸の中でも人気の高い神様やあやかしの登場する小説をはじめとして、日常のちょっとした事件を解決する謎解きもの、職業を題材としたものなど、クオリティの高い作品が集まった。
多数の応募の中から、編集部内で大賞候補作としたのは、「ぺんぺん草の花の数」「うさぎのきもち」「猫神主人のばけねこカフェ」「あやかし蔵の管理人」「探偵と助手の日常」「貧困フリーター女子、小さいおじさん(福の神)拾いました」「ようこそアヤカシ相談所へ」「夢見堂」「見習いコンコの縁結び」「さすがさんと春色の研究」「秘密の神田堂 ~本の付喪神、直します~」「宇賀神骨董店~翡翠の受難」「東京谷中 ネコとほねつぎ屋さんとカルテット」の13作品。
これらの候補作品の中で、選考員の評価を多く集めたのは「ぺんぺん草の花の数」「あやかし蔵の管理人」「猫神主人のばけねこカフェ」「ようこそアヤカシ相談所へ」の4作品。大賞には一歩及ばなかったものの、いずれも甲乙つけがたく、非常に優れた作品であったため、新たに優秀賞という枠を設けて「あやかし蔵の管理人」「猫神主人のばけねこカフェ」「ようこそアヤカシ相談所へ」の3作を選出し、すでに読者賞に決定していた「ぺんぺん草の花の数」は、通常の読者賞の賞金にプラスして評価することとした。
「ぺんぺん草の花の数」は、パラレルワールドの日本を舞台に、ひょんなことから職を失った青年が不思議な事件に巻き込まれていく作品。謎の美女や個性溢れる8匹の猫たちが魅力的で、読者を引きつける巧みな描写と主人公の心地よい語り口からは、筆力の高さがうかがえた。
「あやかし蔵の管理人」は、居候先であやかしの世界と繋がっている蔵を見つけた少年と、そこで出会った妖怪たちのほのぼのとした日常を描いた物語。愛らしく個性的な妖怪や、主人公の過去を紐解きつつテンポよく進むストーリーが魅力的で、この先の展開が楽しみな一作だった。
「猫神主人のばけねこカフェ」は、あやかし、カフェ、猫と、キャラ文芸のジャンルで人気の高い三つの要素を非常にうまくまとめ上げた作品。拾った猫が実は「ばけねこ」で、彼等を従業員として猫カフェを開くというユニークな設定と、ストーリー構成の巧みさが高く評価された。
「ようこそアヤカシ相談所へ」は、とある「相談所」で働き始めることになった女性が、幽霊絡みの様々なトラブルに巻き込まれていくというストーリー。個性的な相談所の所長や従業員が印象的で、一つ一つのエピソードに各キャラクターの過去話を絡めていく構成が見事だった。
なお、当社の定める「ライト文芸」にふさわしい作品は、最終選考では小説の完成度とは別に、今回の開催趣旨に鑑みて評価が低くなることとなった。
なし
ぺんぺん草の花の数
あやかし蔵の管理人
各キャラクターたちが魅力的で、特に子鬼や河童などのあやかしたちがとても可愛らしく、次はどんな妖怪が出てくるのかと、わくわくしながら読み進められる作品でした。また、妖怪たちや世界観の説明が分かりやすく、軽快な語り口もあいまって、作品世界にどんどん引き込まれていきました。
猫神主人のばけねこカフェ
キャラ文芸で人気の高いモチーフが、個性豊かなキャラクター達によってうまくまとめ上げられた作品でした。また、猫神の力を取り戻すために猫カフェを開く、という導入はとてもユニークで、猫鬼が引き起こした事件や、それを解決するにあたってのストーリー構成も非常に巧みでした。
ようこそアヤカシ相談所へ
個性的な幽霊達の集う相談所が魅力的に描かれた作品でした。コミカルなシーンとシリアスなシーンのバランスも絶妙で、あっという間に世界観に引き込まれます。相談所に持ち込まれる『事件』の謎を追いながら、キャラクター達の過去が明らかになっていく構成は巧みで、完成度の高さが感じられました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。のどかな日常の描写と、少しずつ明らかになる非日常の世界がそれぞれ高い文章力でバランスよく描かれ、とても魅力的な作品に仕上がっていると思います。また、主人公やひいこさんのみならず、八匹の猫達も非常に味があって、読者も楽しく読めたのではないでしょうか。